
中国市場で日本の自動車メーカーの占有率(シェア)が低迷し、中国撤退となるのか。それは、米中対立を見据えた日本車メーカーの既定路線なのでしょうか。
中国市場におけるEV出遅れに見る日本車の今後を解説します。
日本の自動車メーカーの中国進出開始(1995)
進出当時の人件比の安さと成長市場の魅力
1990年代末に中国進出した時点では、人件費の安さから世界の工場としての役割でした。
距離的にも近い点や政府の後押しなどもあり、他国に比べて、中国リスクが顕在化していない時期でした。
- 当時、発展途上国として人件費の安さ
- 10億人市場としての魅力
- 販売台数の伸び
中国のハイリスクが顕在化(2010)
強烈なビジネスリスクを痛感
中国のカントリーリスク、ビジネスリスクなど、中国に進出前、進出後の想定リスクが具体化した時期にあたります。
2010年代の離島問題により、日本製品排斥、日本車不買運動、レアアース禁輸など、鮮明な記憶として残っているでしょう。
- 産業スパイリスク
- ビジネス慣行リスク
- 不利な資本比率
米中対立が顕在化(2018)
2018年に貿易摩擦から始まった米中経済対立
中国のカントリーリスクの高まりにより、米国では政権交代に関係なく、中国との貿易削減を強力に進めています。米国から見て、重要な技術やサプライチェーンを支配するなど、米国の経済安全保障に脅威を与える存在になったことです。
中国に対抗するために、同盟国やパートナーと協力しながら、貿易・投資などを規制することを通じて先端技術の中国への流出を止め、中国包囲網によりこれ以上の覇権を抑止することを目的としています。
米国は中国との貿易縮小や撤退による一時的な経済的利益減少より、長期的な国策としてのメリットを優先している点がポイントです。
- 経済、金融面のリスク
- 半導体、IT分野の先進技術、軍事技術リスク
中国依存度が高い日本の中途半端な立場
日米の同盟国として、中国依存度を減らす米国の施策に追従すべきですが、中国市場の依存度を高めてしまったゆえに、融通の効かない、非常に中途半端な日本企業の体制が見て取れます。
2018年時点では、まだ急成長の中国市場に魅力を感じていた時期です。どちらを取るかという経営判断で中国を取った企業が多かったことでしょう。
実際、現時点では重篤な問題が発生していない企業も多いと思われます。
それは今時点で、中国依存を高めてしまったドイツ自動車メーカーも同様であり、その失策を痛感していることでしょう。
中国市場のシェア低下が目立つ(2023)
日本の自動車産業は中国に勝てない
電動化重視は2010年代初頭に始まっていた
コロナや半導体不足による自動車生産の影響が軽減され、自動車生産が回復してきました。
しかし、中国市場は、電気自動車の補助金優遇施策を推進します。
日本の自動車メーカーは、この急進ぶりを見て見ぬふりだった状況です。
日産リーフが世界のトップシェアだった2010年代前半、中盤以降、中国や欧米に抜かれてしまう日本です。
2010年代から着実に積み上げた成果が出ただけのBYD
- バッテリー資源、製造技術、工場を持つ中国のコスト支配力
- 中国電気自動車メーカー「BYD」の急成長
- 国を挙げての電動化優遇策の推進
VWのEV化施策を後目にVWシェアを奪っただけの日本メーカー
コロナや部品供給で生産供給を減らしたVWからのシェア奪取していますが、VWはEV車シェアでランキング入りを果たしており、EV車開発も強力に推進していたことがポイントです。
- 中国のカントリーリスクや米国動向の影響など、全く考慮していない中国販売施策
- むしろ、中国シェアの伸びはハイブリッド車に追い風、EV出遅れに拍車が掛かる
- その間、電動化やバッテリー技術を着々と進める中国メーカーや世界の動向よりもHEVとFCV
日本の自動車産業は中国に勝てないのか
中国における過剰生産は、現地中国車の価格を押し下げます。ブランド力の新興メーカーは特にEV車は、価格をガンガン下げ、もともとコストダウンの進んだBYDやテスラも追従し、EVブランドでは圧倒的な結果となります。
中国内の過剰生産は、かえって日本メーカーの市場を奪う結果となるのです。すでに負け戦が確定していた市場で勝つことは無理なのです。
日本車の中国販売に急ブレーキで「撤退」を迫られる
崩壊する中国新車販売市場において、巻き返しも可能と考えている日本メーカーは、いないのでは?と思わせる危機感を感じます。
特に、日産・ホンダは「2023年8月に約3割減」の衝撃が走りました。地政学リスク以前に、中国EV車ゲームチェンジの流れが訪れてしまったと言えます。
三菱自動車の中国市場撤退
- 三菱自動車は、中国南部で2012年から現地メーカーとの合弁で、主にガソリン車の生産実施。
- 中国メーカーとの合弁事業を解消し、中国市場から撤退を正式決定
- 中国での現地生産を終了し、新車在庫が解消次第、中国での自動車生産と販売から撤退。
EV出遅れで、中国市場での衰退は当たり前
中国製自動車は「安かろう悪かろう」であり、日本車の下請けレベルと軽視していた日本自動車メーカー経営陣です。
2010年代から電動化施策として、太陽光パネル、バッテリーなど資源、技術、工場など世界の工場として、席巻していきます。
ITや家電製品も韓国製品と同等以上のコスパとなってしまいました。
2018年の米中対立として、米国の警告は、手遅れだった感もあるのです。
HEV世界一の妄信

HEVとFCVという名の全方位戦略

中国リスクを考慮した市場撤退が正論なのか
- 問題の本質:現在の中国シェア低迷は、日本車のEV出遅れが問題
- チャイナリスク:米中対立の構図、ビジネスルール無視の中国から撤退は妥当
チャイナリスクは、中国に工場を作った時点で手遅れですが、そのリスクを上回る十分な利益(生産開始から20年越え)を得ているのです。
HEVが中国製PHEVやBEVに対して、価格競争力を失いつつある状況で厳しい戦いを強いられるでしょう。中国におけるBEV/PHEVシェアで、日本車がランキング上位に入れておらず、欧米に劣っている点が問題なのです。
中国BEV/PHEV市場でシェアを取れてもいない段階で、カントリーリスク、チャイナリスクだから撤退するのは正しい理論で、BEV出遅れの問題点を語らないメディアが間違いです。
中国でも価格競争力があるテスラ
BYDと並び、BEVで最先端のテスラは、コスト下げ圧力に対しても、まだ余力があります。

中国依存の日本の自動車メーカーが低迷からの今後:まとめ
米中対立は、米国側の警告でもあり、2018年時点で決断すべき分岐点であったといえます。
それは世界最大の市場を捨てるわけではなく、テスラやGMなどのようにサプライチェーンの依存リスクを軽減し、中国市場でビジネスを展開することは可能でしょう。
日本メーカーにように丸ごと依存が問題なのです。
中国市場を捨てる戦略ではない
日本の自動車メーカーは、中国依存が高く、米中対立リスクの警告を無視していたことは明白です。次年度の経営計画として中国のシェア拡大が計画として盛り込まれているのです。
その際に中国専用として、電動化推進策すら考慮に入れた気配すら感じられません。
日本メーカー製のEV車もいくつか市場投入されていますが、存在感を示せていません。価格、装備のどれを取っても現地中国製に勝てていないのです。
中国市場の電動化重視施策は予めわかっていた事ですが、このシェア減少を当たり前の結果と言えます。
中国市場でのEV出遅れ、撤退出遅れのダブルパンチが襲う
中国市場では、内燃エンジン車の暴落、叩き売り、販売低迷が続いています。ハイブリッド車も例外ではありません。
エンジン車としてもPHEV車のBYD製に上位を絞められ、日本車としての得意分野は見る影もない有り様です。
中国販売シェアの低下は、現地生産規模を上回るスピードで加速しています。
米中リスクを考慮し、自ら中国市場でシェアを減らしたなどという事はありません。
中国市場の依存度を下げるのが急務
いまさら、内燃エンジン製造工程を他国に移転する意味もなく、EV出遅れの移行期をどのように乗り切るかが問われています。
電動化に有利な資源、技術、生産工程を中国に握られつつ、中国市場シェア縮小により、撤退も時間の問題でしょう。
これは、米中対立による計画的なロードマップによる販売減少策でなく、望まないシェア縮小なのです。
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