2024年下期に日産の体制変更が発表されました。
「大きな心配は無い」とする擁護記事とそれを批判するメディアに分かれる様子。その真相と実態を解説します。
前年度比マイナス10%の中国市場
1月-10月の期間における2023、24年の年間販売台数
- 2023年:534,554台
- 2024年:489,215台(-8.5%)
- 日産ブランドのみ(インフィニティを除く)
中国市場は、中国製BEVの圧倒的な伸びと報道されています。
そこで、日産が全滅しているかと蓋を開けてみれば、年間を通してみると「-8.5%」ですから、完全に駄目な数字でもないと判断されます。
日本メーカー全滅とも叫ばれる中で、日産の数字だけが突出して、足を引っ張っているとは言えない感がありますね。
引用:https://www.nissan-global.com/JP/IR/PERFORMANCE/ASSETS/2024/PDF/Nissan_Sales_202410.pdf
中国市場のモデル別内訳
日本とは異なり、セダンが圧倒的に強い中国市場
- シルフィ
- キャッシュカイ
- アルティマ
- エクストレイル
- ティーダ
- パスファインダー
- キックス
という販売台数順位となっており、某評論家が叩くエクストレイルの低迷が全体数字として、それほど影響を与えていない感があります。
特に中国市場では、キックス>キャッシュカイ>エクストレイル>パスファインダーとSUVラインナップが豊富です。
販売順位からもエクストレイルでなくキャッシュカイが主力モデルになります。
日産はエクストレイルが稼ぎ頭なのか
一部評論家は、全世界ではローグ(エクストレイル)が主役のような記述がありましたが、完全な誤りと言えます。
- 日本:ノート、セレナ、エクストレイル
- 中国:シルフィ、キャッシュカイ、アルティマ
- 米国:ローグ(エクストレイル)、セントラ、アルティマ
- 欧州:キャッシュカイ、ジューク、エクストレイル
上記は、ベスト1/2/3位を記載したものですが、エクストレイルが主力ではありません。
なお、欧州市場のキャッシュカイ、エクストレイルは、アウトバーンの高速走行も耐えうるe-Powerです。
静かなe-Powerの3気筒エンジンを嫌う必要があるのか
中国市場では、3気筒エンジンを嫌う層が多いのか
見栄を重視する中国市場では、6気筒、8気筒のエンジンが好まれます。中国市場における経済拡大、上級車、高級車志向の高まりも要因となっています。
しかし、現在ではダウンサイジングターボ化により、高級車でも4気筒が主流となっており、以前はガサツとされた4気筒はOK、3気筒はNGとするのも、無理があるでしょう。
2020年から2022年では、中国誌でも3気筒エンジンの振動を嫌う論調がありましたが、BEV主体の中国市場においては、内燃エンジン車全体が古臭く感じさせるような論調になっているかもしれません。
日本でもダウンサイジングターボ拡大時に4気筒否定派が存在した
- 現在の日本でも、ターボは極悪燃費、4気筒はチープなエンジンとする派が存在する
- 6気筒、V8が高級車に相応しいエンジン
いまでこそ、Eセグメント、Fセグメントのアッパーセダン、SUVに4気筒ターボが当たり前のように搭載されています。この実態すら知らず、古い価値観を正義とするメディアも未だに存在するようです。
最新e-Powerの3気筒が最大のネガなのか?
実車を試乗すれば、BEV走行がメインであり、発電エンジンは脇役に過ぎず、極力存在感を無くした設定であり、気筒数をデメリットとして挙げる意味はありません。
仮にメディアや他メーカーのネガティブ宣伝程度で、低迷するほどのエンジン騒音・エンジン振動の品質でないことは、自動車評論家が一番熟知している点なのですが。
中国市場で起きていること
2024年上半期の中国新車販売台数
- トヨタ自動車:前年同期比10.8%減の78万5,000台
- 本田技研工業:前年同期比21.5%減の41万6,000台
- 日産自動車:前年同期比5.4%減の33万9,000台
- 引用:japannews.yomiuri.co.jp
ここから、読み取れることは、ホンダがヤバイのですが、ハイブリッドが強いトヨタも売れていない事を表しています。
この結果からは、日産の低迷要因として、「e-Powerや3気筒」が致命傷でも何でもない。言いかえれば、日本メディアによる、e-Power嫌い派のか偏った論調であると言えます。
欧州市場で起きていること
2024年上半期の欧州地域(EU)新車販売台数(引用:ACEA)
Manufacturer / Brand | 1-6/2024 | 1-6/2023 | % 23/24 |
Toyota Group | 522,585 | 450,122 | 16.1 |
Honda | 41,294 | 28,635 | 44.2 |
Nissan | 176,450 | 149,289 | 18.2 |
健闘しているように見えますが、実態として、THS2/e:HEV/e-Powerが売れても意味は無く、2025年以降の規制強化に対応するPHEV/BEVの市場シェアが肝心です。
この点では、日本メーカーは全く精彩に欠けており、このままではシェアを維持できない可能性が高いでしょう。
米国市場で起きていること
2024年上半期の米国 新車販売台数(2023年上期比較)
1位. Toyota |
1,019,429 |
16%増 |
4位. Honda |
626,266 |
12%増 |
5位. Nissan |
461,433 |
3%増 |
米国市場の上半期ランキングですが、3メーカー共に好調の結果となっています。
2024年時点で、電動化比率が低く、出遅れと叩かれる日産ですが、この増加率を見る限り、米国市場ではハイブリッド車だけが売れていることを示していないようです。
日本のメディアや決算報告が語るような「電動化比率が低いから」とする理由が、どうでも良いことを明示しています。
マツダやスバルも同様に、米国ではそれなりに好調数字を維持しており、ハイブリッド車を持たない日本メーカーの結果を見る限り、米国では電動化の優先順位は低いと言えます。
日産経営に「大きな心配は無い」のか、今後の動向
HEV勝利とするメディア論調は誤り
- EV全振りとは建前であり、対外的な電動化推進のアピールが重要
- BEVにおいて、日本メーカーが、世界から出遅れていることに変わりない
- e-Power導入出遅れが、北米や中国で致命的に足を引っ張っていない
今後に向けてやるべきこと
- 世界市場の規制強化に合わせた電動化比率への適応が求められる
- 世界シェアとして、日産の販売数字が落ち込みを見せていることは事実
- 少なくとも生産規模の縮小は避けられない
- 直近で「大きな心配は無い」が、ユーザーニーズに応じた適切な市場投入が出来ていない点は、有識者の指摘の通りでもあります。
- 新体制で適切な運営が出来ず、大きなミスが重なると今後の日産があぶない、という「まとめ」になります。