
リン酸鉄リチウムイオン(LFP)と三元系リチウム(NMC)の比較一覧、メリット・デメリット、一部評論家が絶賛するLFPが勝ち馬なのか、今後の動向も解説します。
LFP電池とは
リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)とは、正極材がリチウム(Li)、鉄(Fe)、リン(P)から構成されるリチウムイオン二次電池です。
自然界に比較的豊富に存在し、安価で安定性の高いリン酸鉄(LiFePO4)が材料です。
2010年以降、比較的最近になって、高密度化が進み、ポータブル電源や自動車などに利用されています。
三元系電池とは
近年のスマホなどには、リチウムイオン電池が搭載され、従来のニッカド電池は姿を消しました。
1990年以降、ポータブル機器、自転車、自動車など幅広い用途に使用されています。
電池の正極材に「ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)」の三つの材料を使用し、「三元系(NMC)」と呼ばれます。
リン酸鉄リチウムと三元系リチウムの比較表
- メリット:青字表記
- デメリット:赤字表記
バッテリーの種類 | リン酸鉄リチウム LFP |
三元系リチウム NMC |
---|---|---|
正極材 | リン、鉄、リチウム | ニッケル、マンガン、コバルト |
希少金属 | 安価、入手が容易 | レアメタル、特定地域のみ産出 |
コスト | 安い | 高い |
負極材 | 黒鉛 | 黒鉛 |
最低放電温度 | -20度 | -10度 |
熱分解の温度 | 700度 | 200度 |
耐久性(高温・低温) | 強い | 弱い |
充電回数MAX | 4,000回 | 約800回 |
寿命 | 長い | LFPに比べ短い |
自己放電(月間) | 1% | 5% |
重量 | 重い | 軽い |
バッテリーの大きさ | 大きい | 小さい |
エネルギー密度 | 低い | 高い |
販売価格 | 安い | 高い |
バッテリー寿命と交換時期
メーカー保証としては、以下の内容が多い
- 「8年または16万km(どちらか早い方が適用)」
- 「バッテリー容量(SOH) 70%以上」
寿命が延びるケースとは
- 急速充電は、ほぼ使わない
- 充電は、ほぼ家庭用充電(普通充電)で実施
- 毎日30キロ程度の利用で、毎日100%充電は無駄(半分減ったら充電で良い)
- V2Hなどの充電と放電を利用していない
- 5%未満の充電、100%の満充電で長期間放置していない
耐用年数、距離を超過した中古車とは
- 新車から6年超過でも、バッテリー容量の劣化が5%未満
- 走行距離が6万キロ超過でも、バッテリー容量の劣化が5%未満
おすすめのEV中古車
一定の年数、距離を超過したEVでもバッテリーの劣化が少ない車は「アタリの車両」です。
- 前オーナーが、バッテリーに優しい使い方をしていた
- 劣化の少ない固体
- 使い方次第では、今後の劣化速度を抑え、長寿命が期待できる可能性
バッテリーの延命策
ネット上のLFP神話は本当か、実態一覧
バッテリーの種類 | リン酸鉄リチウム LFP |
三元系リチウム NMC |
---|---|---|
急速充電での劣化 | 劣化に強いとされるが 普通に劣化 |
LFPよりも劣化が早い |
100%満充電は推奨か | 90%以下推奨 | 90%以下推奨 |
気温35度以上 | 耐性あり | 悪影響あり(劣化) |
気温0度以下 | 悪影響あり(性能低下) | 悪影響あり(性能低下) |
テスラは100%充電推奨ですが、その利用形態では劣化します。
LFPは夢のバッテリーではなく、通常充電でも普通に劣化
普通充電は、急速充電に比べて、バッテリーに優しい充電方法です。
しかし、毎日、30キロ程度の通勤走行なのに、夜間100%充電を実施するのは無駄であり、バッテリーの劣化を速めます。半分程度の残容量になったら、充電するサイクルで良いでしょう。
電気代の節約 < バッテリーの寿命延長
夜間充電だけを利用した電気代節約よりも、充電の手間を軽減した方が、長い目でコスト削減に繋がるでしょう。
LFPが今後のトレンドなのか
コスト面でのメリットのみ
エネルギー密度が低いという点を克復し、安価なLFP資源を用い、大量生産が確立したBYDやCATL社がリードする形で、自動車向けの生産が拡大しています。
テスラ、トヨタがLFP採用側として参入
従来、三元系を搭載していましたが、昨今はLFPに切り替える流れが進んでいます。
地産地消、コスト・性能の勝者が生き残る
- 欧州車は、まだまだ三元系の採用メーカーが多いものの、テスラやBYDの採用で技術的な課題も性能面での進化が著しいLFP電池の採用が進んでいます
- 北米でもテスラのLFP工場が2025年に稼働を開始
全固体電池の出番は当分先
三元系電池で100kwhオーバーが登場しており、コスト低下が進みつつある
全固体の大容量、短時間急速充電の性能は、BEVとして目指す性能であるが、現時点のニーズ・コストに見合っていないため、コストが下がらない限り、ゲームチェンジャーになることは当分無いでしょう。

LFPと三元系のメリット・デメリット比較一覧:まとめ
LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーと三元系バッテリーの主な違い
- LFPは、安全性と寿命に優れる
- 比較的入手しやすい資源で、コストが安い
- エネルギー密度が低く航続距離が短い
- 低温性能も三元系に劣る。
- 三元系は、LFPよりエネルギー密度が高く高性能
- コバルトなどのレアメタルを使用するため高価で環境負荷が大きい
- 熱暴走のリスクや寿命の短さがデメリット
三元系バッテリーが向いている用途
高いエネルギー密度による長航続距離が求められるミドル・アッパークラスの電気自動車など。
LMFP(リン酸鉄マンガン)バッテリーは、LFPの利点を活かしつつエネルギー密度を向上させた次世代バッテリーとして、三元系との性能差を縮めつつある「まとめ」とします。