HEV勝利と騒ぐ日本メディアの中で、早くも「BEV専用プラットフォームは危機」という上から目線な記事を見かけました。これは本当でしょうか。独自の分析内容を説明します。
VWは普通にロードマップを進めているだけ
日本では、VW(フォルクスワーゲン製)の内燃エンジン車が普通に買えます。
これは、内燃エンジン生産インフラが、現在も稼働していることを示しています。
世界市場毎、CO2規制の強弱状況、ニーズに応じて、二枚舌を使い分ける自動車メーカーです。
中国製BEVは、世界で売れませんが、欧州内燃車は以前として人気があるのです。
全振りで、全BEV生産にシフトしている、などと考える方は誰もいないでしょう。
日本メディアの一部では偏ったHEV勝利の論調が見られますが、正しくありません。
欧州メーカーの方が、BEVでもシェアを取りつつ、「真のマルチソリューションの見本」を日本メーカーよりも、いち早く実施しているだけです。
当然、BEV出遅れと叩かれない欧米や中国メーカーは、全世界における「BEVシェアをリード」しています。
VWはBEV化に出遅れていない
VWディーゼルゲート事件をキッカケとしてBEV化を進めたという、お馴染みの日本メディアの記事があります。
しかし、欧州でもメルセデスやBMWでは、2010年頃にはパワーアシスト型HEVを発売しています。
2015年頃から、BEVやPHEVの市販化にも漕ぎ着け、2020年になる頃には、日本車のBEVやPHEVを凌駕するラインナップに到達してしまいました。この時点で、BEV専用プラットフォームの開発も完了しています。
BEVの生産体制が、欧州メーカーの中でも早い段階で整ったという事です。
早い段階でテスラが先行し、バッテリー搭載の観点でBEV専用プラットフォームを早期に開発すべきとの結論になるのは当然の流れと言えます。
そして、その流れを日本メーカーよりも早く実施し、すでに市販に漕ぎ着けているのです。
VWや欧州全体では、今もICEも継続生産
だからといって、ICEを求めるユーザーもおり、48VのMHEV化を推進しつつ、叩かれたディーゼルも依然として生産しており、日本でも普通に買えます。
よって、VWを含む欧州車がICEの生産を止めていないことは、日本市場での売れ行きを見れば一目瞭然です。
BEV専用プラットフォームの状況
VWのMEBプラットフォーム
引用:モーターファン
MEBを適用したBEVの第1号はID.3で、2019年にヨーロッパでデビュー。2020年にID.4が登場し(国内導入は2022年)、2021年にID.4をベースにクーペスタイルにしたID.5、同年に中国市場向けのID.6、2022年に多目的EVバンのID. BUZZが登場している。VWは2023年から2026年までの4年間に、さらにBEVを10モデル導入すると発表している。
2019年に登場している事自体、十分早いでしょう。VWで10モデル使い回しとなれば、数十万台規模になると考えられ、十分ペイできると考えるのが普通でしょうか。
そもそも、マツダラージプラットフォームの販売台数をすでに超えてるよね?という例え話でいかがでしょうか。
日本メーカーの状況
EV専用プラットフォームの開発では、VWのMEBが先行しており、2019年末にはMEBをベースとする第1号モデルID.3を生産開始予定である。日系の自動車メーカー(OEM)では、2019年に入りトヨタがe-TNGA、ホンダがHonda e向けの専用プラットフォームを発表した。
レクサスRZやbZ4x、ホンダeが登場しましたが、全く元取れてない状況ですよね。
HEVで勝利宣言する前に、これらのBEV専用プラットフォームで欧州勢を凌駕することが先じゃないでしょうか。
BEVプラットフォームは無駄になるのか
欧州、中国でのBEV化推進の潮流に沿って、BEV専用プラットフォーム化を開発することは当然の流れと言えます。
販売台数で元を取れていないかどうかは、日本メディアが心配することではありません。
実際、欧州老舗メーカーは、BEVでもシェアを取りつつ、黒字決算となっています。
当然、先行したBEVプラットフォームの初期投資コストを含めた決算となります。
BEVプラットフォームの先行開発が有利
ギガプレスでも先行しているテスラ社は、そのコストを既に回収済でしょう。
世界の老舗自動車メーカーにおいて、2010年代後半から、電動化の開発投資として、各社で数兆円単位の投資を行うとするニュースが見られます。
欧州メーカーの決算状況にも差が見られますが、少なくとも先行投資によるBEV生産インフラが整いつつある段階です。
BEVが予定通りの売れないからBEV生産が無駄なのか
作れば作るほど「赤字」となるなら、欧州メーカーが黒字決算ではないでしょう。
すでに2種類の体制構築済
- ICE・BEV併用プラットフォーム
- BEV専用プラットフォーム
BEV出遅れでないメーカーは、勝利のビジネスを実施済
- 規制の緩すぎる日本向けには内燃ディーゼルを集中投入
- CO2垂れ流しの市場向けには内燃エンジン車。
- 規制の厳しい地域には、BEV専用車を投入
BEV専用プラットフォームは危機なのか:まとめ
すでに、莫大な先行投資は、回収フェーズに入りつつあるBEV先行の老舗メーカー。
当然、今もICEを継続生産していて、二枚舌を使い分けられる「真のマルチソリューションを先行実施」
一方、いまさら感のEV出遅れ日本。BEV完全移行は取りやめという決定ニュースが出てない段階で、HEV勝利宣言は早計でしょう。
「HEV一極集中、口だけのマルチソリューション、EV出遅れ開発」
- ギガプレスのマネを追いかけ
- 全固体でゲームチェンジ
- 350万台のBEV生産との計画
「BEV専用プラットフォームは危機」って、日本側が心配するところじゃないです。と世界から言われてそうな「まとめ」となります。