
ワンソク動画ではシートベンチレーションが、あたかも高級車の標準装備のような説明の仕方ですが、この意見に異議を唱えたいと思います。
この装備は上級車として必須の装備なのか、不要な装備なのか、猛暑の過ごし方と合わせて解説します。
シートベンチレーションの効果とは
シートベンチレーションの主な機能
- 仕組み自体は、電動ファンがシート内に埋め込まれ、シート表皮・内部の換気を行い、蒸れや温度を調節するものです。
- 小型ファンがシート内に埋め込まれていると考えれば、画期的な機能でもハイテク機能でも、コストが掛かる機能でもありません。
- パワーシートやシートヒーターに比べて、今まで装備されなかったのが不思議なくらいでしょう。
- 高級車基準としても、実用面において、特に必要と感じられる装備では無かったのです。
- エアコンの空気を循環させるだけであり、室内が冷えてしまえば、シートの熱気や蒸れも解消されるのです。
実際の効果
例:外気温33度、室内40度、シート表皮45度にて、3パターンテスト
- エアコンOFF、ベンチレーションON:5分後にはシート表皮は42度。体感的に変わらず
- エアコン24度、風量強、ベンチレーションOFF:5分後にはシート表皮は30度まで下がる
- エアコン24度、風量強、ベンチレーションON:5分後にはシート表皮は26度まで下がる
シート表皮が、体温以下になれば、熱いとは感じられず、すでに汗をかくレベルではありません。
おわかりのように、ベンチレーションにより、エアコンの冷却空気を取り込み涼しく感じるよりも、エアコンからの直接冷風の方が涼しく感じる事が多いでしょう。
シート表面の温度や蒸れに対して、全く効果がないワケではありませんが、これを高級車基準のベンチマークにする装備ではないと考えます。
日本の危険な暑さ対策として有効ではない
直射日光により、シート表面が熱せられ、高温になったり、劣化したりという点で、シートベンチレーションは、なんの効果もありません。
- 日陰駐車やサンシェードで、室内が直射日光に当たらないことが重要
- それでも車内の温度は、軽く50度を超えています
- 乗車直後の熱風がシートを循環したところで何の意味もありません
- 乗車直後は窓を開ける、エアコンを強風にして室温を下げることが重要です
- 車内がエアコンで冷えてしまえば、シート表皮も冷たくなり、蒸れることはありません
- リビングルームのソファーにはシートベンチレーションが無いのと同じ理屈です
(快適なドライビング空間は、車内の温度管理が重要ということ)
シートベンチレーションのメリット
レザーシートが乗車時に熱い場合のみ効果
夏場のレザーシートでは、乗車時に表皮が熱いと感じるケースがあるでしょう。
直射日光浴びた高温のシートが、ただちに常温になることはなく、熱いと感じることは避けられません。
よって、エアコンで一定冷やした空気が、シート内に取り込まれるには時間がかかりますので、エアコンの効きに左右されると言えます。そして、一旦エアコンが効いしまえば、シートに密着する部分についても、汗が引いていきます。
エアコンが効くまでの一時的効果
エアコンが効いてくれば、温度設定を上げたり、風向きを変えたり、風量を下げる方が多いと思います。近年では、乗車後数分で寒くなるぐらい利きの良いエアコンもあり、やはりエアコン次第と言えます。
むしろ、エアコンが効いてしまえば、シート表皮の温度も下り、シート密着面だけ汗をかく事も蒸れる事も無く、シートベンチレーションも不要なのです。
シートヒーターとのハイブリッド効果
シートの電熱線による直接保温の効果が高く、ハイブリッド機能としての温風効果は、体感的にも限られる。そのため、真夏の空気循環・送風効果をとしてのメリットが高い。
スポーツ運転で汗をかくとか
炎天下、激しいドライビングを伴うシーンでは、エアコンもガンガンに効かせることとなり、ベンチレーションは、送風・循環機能でしかない点を考えれば、効果は限定されます。
エアコン > シートベンチレーション
所詮、エアコンの温度設定・風量・風向き設定に左右されるのです。
シートベンチレーションのデメリット
ファンの音がうるさい
メーカーにもよりますが、ファンの回る音が「うるさい」「安っぽい」など、安価なハンディファンのような爆音ファンを装備するメーカー・モデルもまだまだ多いようです。
乗車時の一時的な利用として我慢するのであれば許容できますが、常時ONの場合は、デメリットとして捉える方が多いようです。
常時をお腹や背中を冷やす事の弊害
常時、シートベンチレーションで送風・冷却することは、「腰痛持ち」や「腹部や背中の保温の観点」でも好ましくないでしょう。むしろ、長時間の渋滞走行では、「トイレが近くなるデメリット」も発生します。
ベンチレーションからの異臭
当然、シートの表皮やパンチングの穴から汗や汚れ、雨や飲料が染み込んだ場合など、雑菌が繁殖して、異臭がファンの風に乗って臭ってくる事例もあるようです。ここは、以外と盲点な方が多いと思いますが、特に中古車購入時、異臭有無の確認が必須となります。
高級メーカー、上級モデルでも装備状況は限定される
- 前席のみ
- 後席のみ
- 装備していない
- オプション装備
など、2020年以降の高級車でも装備状況は限定されていなかった事をふまえると、それは「ベンチレーション未装備を嘆く」ようなワンソク動画的な発想で無かったと判断できます。
シートヒーターほど必須ではない
軽自動車や小型乗用車でも見かける装備がシートヒーターです。
寒い日、冷え性の方は欠かせない装備
一方、冬場の厳寒期では、ヒーターで車内を温めても体感的に暖まった感じるのに時間がかかります。体の芯が冷えており、トイレも近くなることから、シートヒーターは欠かせない装備と考えられます。
電熱線埋め込みと小型ファン(パンチングシート)の埋め込みは、パワーシートほど大がかりな装備ではないと判断できます。
シートベンチレーションは必須なのか:まとめ
一部国産車での装着率が高まっている影響からか、「シートベンチレーションが無いと連呼する動画」の影響により、他のネット論調も「シートベンチレーションは上級装備的&必須論」が高まっているようです。しかし、それに違和感を覚える方も多いようです。
むしろ、その装備よりもエアコン予約機能で室内を事前に冷やす方が効果大です。
当記事の結論としては、シートベンチレーション装備が無駄ではないが、賛美するほど神装備ではない、優先度は高くない、とする「まとめ」になります。
シートベンチレーションは不要な理由
- 吸気ファンと排気ファンに温度センサーがシートに埋め込まれただけの安価な機能
- コスト面でパワーシート程のコストアップではない
- 今まで高級車に装備されなかったのは、効果が無いから
- シート内のファン騒音が耳に近いところにあるため、うるさく感じるモデルもある
- エアコンの室温に左右され、室温が下がればベンチレーションなど不要
- 日常のシーンでエアコンが効いている環境下、シートだけが蒸れることはない
- 内部を掃除する手段がなく、ホコリが詰まり、ファン機能が低下する
- エアコンフィルターのように掃除できないため、悪臭がするケースがある
高級車としてあるべき装備は、ベンチレーションよりもコレ
乗車前の空調管理が重要
真夏では、車内50度超え、シートやハンドルは70度超えとなり、シートベンチレーションなど、何の意味もありません。
- 乗車前のエアコン自動起動により、予め適温を保つ機能です。
直接シートが冷えてしまえば、ベンチレーションなど、使いません。 - 肝心なのはエアコンの温度管理であり、その空気を循環させるだけのシートベンチレーション効果は微々たるものであり、絶賛するほどの高級装備ではないのです。
- それよりも、高級車としてあるべき定番装備を備えていない車の方が問題なのです。
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