昨今のBM社(ビックモーター)の件を受けて、自動車保険を確認したところ損保ジャパンでした。他損保への乗り換えを行うべきでしょうか?。切り替えを行うならどこの保険会社が良いのか、解説します。
ビックモーター問題の概要
ビッグモーター社側の事件内容、問題を整理しました。
保険金不正請求の問題
ビッグモーターで車両修理に掛かった費用を損害保険会社に請求する際、車両修理費を不正に請求していたというものです。内部告発により疑惑が明らかになりました。具体的な事例は下記の通りです。
- 未実施の修理や部品交換を実施したと偽る
- 故意に顧客のクルマに傷を付ける(ゴルフボール事件)
- 中古部品を新品として付け替える
- 修理明細の改ざん
- 嘘の保険金請求、水増し
- タイヤ保証詐欺:タイヤに故意に損傷を与える
- 金融庁が保険代理店登録を取り消しへ(2023/11)
中古車販売における不正の問題
- オイル交換詐欺:格安オイル交換の謳い文句で客を呼びよせ、必要のない修理を勧める
- 整備不備:未修理、未整備の状態で中古車を販売、点検や車検の不備
- 自動車買取:契約時の価格から、何らかの理由を付けて値切って買い取る
社員、従業員向けのパワーハラスメント
- 深夜、休日を問わず、LINEアプリ上での叱責や応対を要求
- 発言や暴力などのパワハラ
- 職権乱用な降格人事や退職勧告
- 自爆での車両購入や自己負担を強いる対応
- 役員の突発来店チェックに備え、日常業務を無視した応対や清掃対応を強いる
街路樹の伐採
- 無断で、街路樹や植木への枯葉剤散布
- 無断で、街路樹や植木の伐採
- 伐採後、無断でコンクリート穴埋め
損保ジャパン社問題の概要
事件の経緯
ビッグモーター側の内部通報(2021年秋)
損保の業界団体に「上長の指示で過剰な自動車の修理をし、その費用を保険会社に請求している」という旨の内部通報あり。
損保ジャパン側の内部告発
「BM社案件は特殊な運用で処理」とする内部資料と証言の内部告発があったようです。
実際、保険金査定業務は、事案を受けた各都道府県の担当者が行うのが原則です。しかし、BM社案件については、かなり前から一括して東京本社が処理し、本社のBM社専任担当者が査定をしていたことが明らかになっています。
大手損保3社での不正請求の調査を実施
内部通報を受けて、ビッグモーターと取引のある損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は2022年2月以降、修理費の請求書類を各社それぞれ数百件抽出してサンプル調査を実施しました。結果、全国に33ある整備工場のうち25の工場で、水増し請求が疑われる案件が合計80件超見つかりました。
早期の幕引きを図った損保ジャパン
2022年7月下旬には、3社ともにストップしていたビッグモーターへの事故車の修理紹介を、損保ジャパンだけが再開しました。
ビックモーター社の不正に関する徹底調査を怠り、一部工場の再発防止策だけで幕引きを図ったことが問題視されました。
2023年9月、この経営判断ミスにより、トップ責任を取り、辞任の発表に至りました。
出向社員の多さ、BM社との繋がりの深さ
不正の温床となった、保険会社と代理店、修理工場の密接な関係。
- 2011年以降、計37人の社員を板金部門や営業部門に出向させました。執行役員を務めた出向者も含まれます。
- 2015年の時点でビッグモーターの株式の7%を保有する大株主
- 2019年、社内にビッグモーターに対応するチームを設けて、修理する車の損害査定を簡略化
損保と大手中古車販売店の隠密関係
自動車保険の販売シェアは、損害保険会社の半数を超える利益です。
- 自動車賠償責任保険(自賠責)を多く取り扱う、大手自動車販売店(損害保険販売代理店を兼営)の販売力に頼る傾向が強くなりました。
- その結果、自動車事故が発生した場合、保険販売に強い修理工場へ優先的に事故車を回すケースが発生しました。(もたれ合いの関係)
- 修理内容や過大請求(水増し請求)に疑義があっても販売力が強いので、目をつぶる構図です。
- 保険会社側は、保険金の不正請求を目をつぶってでも、自動車保険の「販売力」に頼ること(販売側の言いなり)になっていた可能性が高いです。
自動車修理と不正な保険金請求
日本の損害保険の仕組みとして、保険代理店と修理工場が同一企業体であるため、不正の温床になりやすい傾向です。
損害調査によるチェックなどで保険請求事故の妥当性を判断していますが、基本的に性善説に立っているため、一定の不正請求が発生しているでしょう。
- 事故車の画像診断などの効率化が裏目に出ているケース
- 少額な保険請求事故は、簡単な事務処理で済ませているケース
- 保険代理店と修理工場がグルになっている悪質なケース
- BM社のようにチェックシステムのガバナンスが効いていないケース
不正な保険金請求の状況が明らかに
BM社の問題だけでなく、自動車修理業界全体において、ありがちな事実である可能性も高いです。
複数の省庁や損保会社により、再調査が進めるほど、不正件数が増大しており、ある程度の全容が解明すれば、保険会社や中古車販売会社へのペナルティが発動するでしょう。
- 保険事業を統括していた担当役員が2023年9月初旬に亡くなっていた(ネクステージ)
- ビッグモーター、保険金請求の3割超で不正か…損保ジャパンなど4社は過払い分の返金求める方針(2023/9/30)
不正な保険金請求による影響
保険料アップの影響
- 保険金の不正請求が多発すると、損害発生率が高くなる。
- 保険金を支払う金額全体が大きくなる。
- 保険料収入と保険金支出の関係が崩れる
その結果、高い損害発生率により保険料率がアップし、保険料の引き上げなどにも繋がります。
ただし、これは机上の話であり、BM社の不正請求件数と保険金額総額が、保険料算出の料率に影響を与える額ではないと予想します。
等級アップの影響
不正修理などにより、高額な修理代が請求されれば、自費修理でなく車両保険を使うケースも多いでしょう。その結果、保険加入者の等級ダウン(翌年度から保険料アップ)にも繋がります。
契約者側の自衛策とは?
Q1:修理業者に対する自衛策とは?
Anser1:BM社のようにゴルフボールでキズを付けるような悪質極まりない行為に対して、頼みにするのが保険契約者による「自衛策」となります。
- 契約者に修理工場へ入庫する前に修理箇所を確認しておく
- 車全体の動画を撮影しておく。
- 写真を撮影しておく。
「レンタカーを借りる際のように契約者自身に車体の傷を確認」し、確認結果を写真や動画として記録するのが効果的です。
他損保へ切り替え、乗り換えを行うべきか? まとめ
性善説に立てば、正しい修理による正当な保険金請求を行っている工場、販売店が絶対的多数でしょう。
しかし、前述の内容をふまえれば、修理工場や販売店の不正は氷山の一角である可能性も高いです。これは、業界全体の闇ともいえる部分です。
結果、保険会社とは一蓮托生であるため、損保ジャパン社のみの事象と判断するのは危険です。
今回の不正発覚により、保険会社や自動車修理、販売の業界全体が正しい方向に進みます。
よって、今回を契機に他の大手損保に切り替える、乗り換える意味もないでしょう。
インターネット型の自動車保険への切り替えが有効
ネット通販型自動車保険は、保険代理店を経由せず、ユーザーへの直接販売となります。
性悪説に立つ外資系など、不正請求に対する感覚が、日本の保険会社とは異なります。
また、代理店を経由しないため、BM社のように数の力による保険会社への圧力もありません。
実際の事故発生時のサービスが明らかに劣るケースもありませんので、代理店経由の保険購入にメリットを感じたケースが無いのであれば、ネット通販型自動車保険に切り替えることをお勧めします。
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