なぜトヨタは水素から撤退しないのか|FCEVが敗北しても続行される理由

査定君
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EVが事実上勝利した現在でも、なぜトヨタは水素(FCEV)を続けるのか。普及しなかった理由、大型車転用の限界、クラウンFCEVの意味、社内構造と撤退できない現実を整理する。

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EVが勝ち、水素が負けた後の世界で、なぜトヨタだけが立ち止まらないのか

2020年代半ば、もはや自動車業界の大勢は決している。
少なくとも「乗用車の電動化」という文脈において、EVは勝ち、水素燃料電池車(FCEV)は敗者になった。

それでも、トヨタは水素をやめない。
MIRAIは生き残り、クラウンFCEVまで投入され、BMWとの協業も続いている。
「静かに片付けている最中」という説明が語られる一方で、現実には“続行感”が消えていない。

この記事では、水素がなぜ普及しなかったのかを改めて整理したうえで、
それでも撤退できない理由、そして本当の意味で「終わる瞬間」はいつ訪れるのかを冷静に見ていく。

自動車用水素は、なぜここまで普及しなかったのか

乗用車FCEVが抱えたのは、技術ではなく構造の問題

水素自動車が失敗した理由を「技術が未熟だったから」と片付けるのは簡単だが、それは本質ではない。
燃料電池そのものは、研究室レベルでも実車レベルでも、すでに成立していた。

問題は、車両・インフラ・運用コストの三点が、最後まで噛み合わなかったことにある。
どれか一つが欠けても成立しないのがFCEVであり、その全てを同時に成立させる必要があった。

水素ステーション網が成立しない本当の理由

水素ステーションは「数が少ないから不便」なのではない。
本質は、利用台数が増えない限り黒字化せず、黒字化しない限り増設されないという循環構造にある。

EV充電設備のように、既存インフラの延長で整備できるものではなく、水素は最初から専用設備と専用運用を求める。(スタンド建設コストは、五億とも)

EVと比較して決定的に不利だったコストと利便性

充電時間という一点では水素に分があるとされたが、
日常利用で見れば「自宅で何も考えずに充電できるEV」との差は埋まらなかった。

結果として、ユーザーが選ぶ理由は最後まで限定的だった。

大型車・商用車・産業用途に水素は転用できるのか

トラック・バスで語られる「水素ならでは論」の正体

乗用車が厳しくなると、水素は必ず「大型車向き」という話に移行する。
航続距離、補給時間、電池重量――理屈としては理解できる。

しかし、それは「EVより相対的にマシ」という話であって、水素が積極的に選ばれる理由とは別問題だ。

用途・地域限定インフラは本当に採算ラインに乗るのか

港湾、工業団地、特定路線バスなど、用途と地域を限定した水素インフラは確かに成立しやすい。
ただし、それは常に補助金とセットで語られる。

「税金垂れ流しではない」と言い切るために必要な条件

民間単独で回るモデルが示されない限り、「将来への投資」という言葉は免罪符に近い。
少なくとも現時点で、明確な採算モデルが示された例は多くない。

唯一現実的とされる「供給側ロジック」が成立しない理由

水素供給網は成立しても、車載タンクが成立しない

供給側から見ると、水素製造・輸送・貯蔵はスケールメリットを期待できる。
しかし、最終地点である車載タンクだけは別世界だ。

高圧水素タンクが量産に向かない構造的理由

700気圧対応タンクは、素材・製造・検査の全てが特殊で、
EV用バッテリーのような量産曲線に乗りにくい。

非採算ラインが将来も変わらないと考えられる根拠

ここが最大の問題だ。
ブレイクスルーが起きたとしても、価格が劇的に下がる未来は描きにくい。

トヨタは水素が勝てないと分かっていて続けているのか

「静かに片付けている最中」という説明の欺瞞

静かに終わらせるのであれば、クラウンFCEVは存在しない。
少なくとも「終わらせる途中」という行動には見えない。

BMWとの協業は撤退準備か、それとも延命か

BMW側は環境アピール色が強い一方、トヨタは依然として主導権を握ろうとしている。
温度差は明確だ。

欧米が水素を捨てた後でも、日本だけが降りられない事情

エネルギー政策、産業保護、過去の投資。
日本はあまりにも深く関わりすぎた。

クラウンFCEVは延命か、ワンチャン狙いか

MIRAIプラットフォーム流用は合理か、後戻り不能の証拠か

第二世代MIRAIの構造自体は新しく、流用は合理的ではある。
だが「なぜクラウンなのか」という疑問は残る。

クラウンというブランドを使った意味

失敗を薄めるためではなく、
「もしかしたら」という希望を託したようにも見える。

「裸の王様施策」だった可能性

批判を許さない空気の中で、誰も止められなかった。
そう見えてしまう点が問題だ。

なぜ「負けた」と言えないのか――トヨタ社内の現実

水素を言い出した旧経営陣が去らない限り終われない理由

撤退は、技術の否定ではなく「判断の否定」になる。
それを許せない人が残っている限り、終わらない。

現社長は意思決定者なのか、それとも象徴なのか

少なくとも、水素に関しては強い転換の意思は見えない。

政府と企業が同時に降りられない共依存構造

どちらかが降りれば、もう一方も説明責任を問われる。
それが現状だ。

新規FCEVは本当に「もう出ない」のか

技術的ブレイクスルーを待つ“お花畑シナリオ”

完全に否定はできない。
だからこそ、続いてしまう。

ホンダのリースFCEVが示した最後の可能性

量産ではなく、限定運用。
これが現実的な落としどころかもしれない。

次が出るとしたら、それは成功の兆しか、延命の証明か

多くの場合、後者として受け取られるだろう。

EVとFCEVの現実比較

項目 EV FCEV
インフラ 既存電力網を流用 専用設備が必要
車両コスト 低下傾向 高止まり
量産性 高い 低い
政治依存度 比較的低い 非常に高い

よくある質問

水素燃料電池車は完全に失敗だったのですか?

  • 技術的失敗ではないが、市場では敗北した。
  • 現在、航続距離、車両価格面でもBEVに対しての優位性は、全く無い。
  • 燃料補充時間の短さだけが、BEVに対しての唯一の優位点ですが、それも水素スタンドの圧倒的な少なさから、移動時間も含めて、全てマイナス要因に。
  • 水素価格の高騰でBEVに対してコストメリットがゼロに。

なぜトヨタだけが水素を続けているのですか?

やめる理由より、やめられない理由が大きい。

大型車用途でも水素は厳しいのですか?

  • 相対的にマシなだけで、決定打にはなっていない。
  • 大型車搭載用の水素タンクの価格の高さで、他のコストメリットをすべて帳消しにする破壊力。

今後、一般向けFCEVはもう出ませんか?

出る可能性はあるが、成功とは別問題だ。

まとめ:水素は技術で負けたのではない、降り時を失っただけだ

水素は間違いではなかった。
だが、正解でもなかった。

本当の終わりは、技術でも市場でもなく、リーダーが変わる瞬間に訪れる。
それまでは、この「続いてしまう違和感」が消えることはない。