テスラはなぜモデルS/Xをやめ、Optimusに賭けたのか|重量57kgの構造とは

査定君
査定君

テスラがフリーモント工場におけるモデルSおよびモデルXの生産を終了し、その製造能力をヒューマノイドロボット「Optimus」へ振り向ける。
この決断は単なる車種整理ではなく、テスラという企業の軸足が「自動車メーカー」から「物理AI企業」へ移ったことを象徴する出来事だ。まずモデルS/Xからの転換に至った背景を整理し、その流れの中でOptimusという製品がどのような思想で設計されているのかを解説する。
後半では、しばしば話題になるOptimusの重量「125lbs(約57kg)」が本当に妥当なのかを、世代別推移と構造・材料・重量内訳から掘り下げていく。

スポンサーリンク

評論家のテスラ下げに違和感

評論家の論調は以下の通り

  • Optimusの重量を125lbs(約57kg)は、嘘では。
  • e-Bikeを例えるが、目的が異なる機器を同列に語るナンセンス感が凄い
  • 毎度おなじみ、国産上げ、テスラ下げのオチ

初代モデルからのスペック推移は、ググれる情報だが、このレベルの記事を大手紙が掲載して良いのか?という内容に違和感を感じ、本記事を書いたのが経緯である。

モデルS/X生産終了は「失敗」ではなく役割の終わり

モデルSとモデルXは、テスラの歴史において特別な存在だ。
モデルSは高性能EVが内燃機関車を性能面で上回れることを示し、モデルXはEVでも大型・高級SUVが成立することを証明した。

しかし2020年代半ばに入ると、販売の主役は完全にモデル3とモデルYへ移行した。
価格帯、需要の厚み、生産効率のすべてでS/Xは脇役となり、フリーモント工場の貴重な製造キャパシティを占有し続ける理由は薄れていった。

項目 モデルS/X モデル3/Y
価格帯 高価格帯 中価格帯
販売ボリューム 限定的 主力
プラットフォーム世代 初期設計ベース 新世代・効率重視
工場稼働効率 低下傾向 高水準

テスラにとって、S/Xを延命させることは過去への執着に近かった。
そこで選ばれたのが、「自動車の次」を象徴するOptimusへの全面転換だった。

なぜフリーモント工場でOptimusなのか

フリーモント工場は、テスラにとって単なる製造拠点ではない。
高度に自動化されたライン、EV用サプライチェーン、AI・制御技術を熟知した人材が集積する、いわばテスラの実験場だ。

Optimusは「ロボット専用工場」で突然生まれる製品ではない。
EVで培ったモーター、インバーター、バッテリー、量産ノウハウを横断的に使い回せる点で、フリーモントは最適解だった。

EV技術 Optimusへの転用
駆動モーター 関節用アクチュエータ
インバーター モーター制御回路
バッテリー ロボット用電源パック
FSD用AI 視覚認識・動作計画

つまり、モデルS/Xの終了は「縮小」ではなく、技術資産を次の成長領域に移すための再配置だった。

Optimusの重量125lbs(約57kg)は本当に妥当なのか

Optimusの重量として示されている125lbs(約57kg)は、人型ロボットとしてはかなり軽い部類に入る。だが、これは単なる軽量化競争の結果ではない。

人間の生活空間で働くロボットにとって、体重は安全性、エネルギー効率、可動性のすべてに直結する。
60kg前後という数値は、人間社会に適応するための現実的な落としどころだ。

比較対象 重量
Optimus 約57kg
成人男性(平均) 65〜70kg
成人女性(平均) 50〜55kg

これより重ければ転倒時のリスクが増え、これより軽ければバッテリー容量や出力に制約が出る。
57kgという数値は、人間の環境で働くロボットとして極めてバランスがいい。

Optimusの世代別重量推移

Optimusは登場以来、明確に軽量化の道を歩んできた。
これは設計思想の成熟と、量産を前提にした構造最適化が進んだ結果だ。

世代 重量 特徴
初期プロトタイプ(Gen1) 約70kg超 実証優先、構造に余裕
Gen2 約57kg 軽量化と実用性の両立
Gen3(量産想定) 約57kg 構造固定・量産最適化

注目すべきは、Gen2からGen3で重量がほぼ変わっていない点だ。
これは「軽くする余地がない」のではなく、「この重量が最適」と判断された可能性を示している。

Optimusの重量を構成する要素と内訳

57kgという重量は、いくつかの主要要素に分解できる。
テスラは詳細な内訳を公開していないが、一般的なヒューマノイドロボットの設計から十分に推定できる。

構成要素 重量目安 主な内容
骨格・フレーム 15〜20kg アルミ・マグネシウム合金
アクチュエータ 12〜16kg モーター+減速機
バッテリー 8〜12kg リチウムイオン電池
センサー・AI 2〜4kg カメラ・演算装置
配線・外装ほか 2〜3kg 樹脂・複合材

特に骨格とアクチュエータで全体の半分以上を占める点は、人型ロボットの宿命とも言える。
ここを軽くしすぎると剛性と寿命が犠牲になる。

材料と素材から見る「57kg」という現実解

Optimusに使われていると見られる材料は、EVや航空機に近い思想で選ばれている。

  • アルミ・マグネシウム合金:軽さと強度の両立
  • 高機能樹脂:外装や一部ギア部品
  • リチウムイオン電池:重量と容量の妥協点

これらの材料を前提にすると、成人一人分の体格を持つロボットが50kg台後半に収まるのは、むしろ自然な結果だ。

よくある質問

Optimusはもっと軽くできないのか?

理論上は可能だが、稼働時間、耐久性、可搬重量を犠牲にすることになる。
現実の労働を担うなら、57kg前後が妥協点になる。

モデルS/Xを残したままOptimus生産はできなかったのか?

工場のキャパシティと投資効率を考えると難しい。
中途半端に両立させるより、明確に舵を切った方が合理的だった。

ホンダのASIMOは、どうなったのか?

  • 表舞台から引退: 2022年3月31日をもって、ショーを終了しました。
  • 開発は終了: ホンダは新型ASIMOの開発を取りやめ、一つの節目を迎えました。
  • 技術は継承: ASIMOで培った技術は、アバター(分身)ロボットや、介護・リハビリ用の歩行訓練機器、電動芝刈り機、自立バランスバイクなど、実用的な分野に受け継がれています。
  • 最新の展開: 2025年1月、ホンダは次世代EVのソフトウェア技術(OS)に「アシモ」の名称を冠し、技術的な頭脳として復活を発表。

まとめ

モデルS/XからOptimusへの転換は、テスラの「次の10年」を決める決断だった。
EVで築いた技術と製造基盤を、人型ロボットという全く新しい市場へ投入するための布石でもある。

Optimusの重量125lbs(約57kg)は、偶然の数字ではない。
人間社会で働くために必要な安全性、効率、耐久性をすり合わせた結果として導かれた、極めて現実的な設計値だ。

テスラがフリーモント工場で何を作るかが変わったのではない。
「何者であろうとしているか」が、はっきりと変わったのである。