スバルのアイデンティティである水平対向エンジンにトヨタ製THS2のハイブリッドシステムを組み込むという話です。これは、スバルの内燃エンジン延命に繋がる救世主なのでしょうか。その実態を解説します。
スバルユーザーは燃費を求めているのか
水平対向エンジン、4WD、アイサイト、デザインなど、スバルのブランドイメージを支えるものに「燃費の良さ」「ハイブリッド」という文字は登場しません。
レヴォーグが売れないのは高燃費のハイブリッド車が無いから、という自動車評論家の発言がありました。しかし、スバル本来ユーザーにとって、燃費性能など優先順位は低いでしょう。
(燃費が良いことに越したことはないですが)
水平対向エンジンは燃焼効率が悪い
水平対向エンジンは、低重心や振動面など、走りの面でのメリットは多いものの、燃焼効率の面ではデメリットが目立つものです。そのデメリットがブランドイメージを棄損するレベルでないことを改めて認識する必要があるでしょう。
市販化完了、その場凌ぎの延命効果はあり
2.5Lのストロングハイブリッドとして登場しました。
国内外向けの上級モデル・グレードとしての訴求力はあります。
今まで買いたくても買えなかった潜在的なスバルニーズの拡大に寄与することでしょう。
今後のCO2規制強化に対するスバルの答え
トヨタbZ4XのBEV姉妹車である、「スバル・ソルテラ」のフル電気自動車が登場しています。
BEVについては、トヨタ製プラットフォームを用いて、スバルブランドとしての兄弟車が登場することになります。
近年の円安効果や北米では内燃エンジンが好調なこともあり、スバル決算として電動化への遅れはトヨタほど目立っていません。
これにより、電動車販売目標(2030年)として掲げる「バッテリーEV (以下BEV)のみで50%」のスタートは切れていることになります。
すでにCAFE規制は超えられていない
トヨタのようなハイブリッド車を持たないスバルにとって、すでに欧州のCAFE規制をクリアしておらず、クレジットのペナルティが発生しています。
2027年以降、CO2の規制強化が計画されており、その時点でトヨタ車の中で最も燃費の良いヤリスでさえ、ハイブリッド車としてクリアできるか難しい、という非常に厳しい値となっています。
トヨタ製THS2の採用がスバルを救うのか
水平対向エンジンとTHS2の組み合わせにより、燃費向上として劇的に寄与するものの、ZEV/CAFE規制以降の基準をクリアできるとは思えません。
特に北米市場でもCAFE規制と同等以上のZEV規制強化が計画されています。
バイデン政権からトランプ政権により、BEV化の進展速度が遅くなる可能性はあるものの、内燃エンジンの規制強化策については、そのまま履行される可能性が高いのです。
既存技術のニコイチではスバルを救えない
このZEV規制強化策を見る限り、スバル水平対向エンジンとTHS2を組み合わせた燃費性能は、ZEV規制に対して延命効果は微々たるものなのです。
欧州CAFE規制市場は、捨てるつもりなのか、ソルテラとの併売で稼いだクレジットで細々と内燃車を売るのか、今後のビジョンは見えません。
CAFE/ZEV規制値をクリアできないが
欧州車の48Vマイルドハイブリッド車よりも、高燃費が期待できるとなれば、多少は内燃エンジンの延命に繋がる可能性は高いでしょう。
CNFが救世主となるのか
カーボンニュートラル燃料は、水素同様、全く意味が無い机上の話です。
水平対向エンジンとPHEVモーターが理想系
- 水平対向エンジンと駆動系は従来通り
- モーターは後輪駆動
スバルファンの期待を裏切らず、CAFE規制としての燃費性能を稼ぐだけの目的としてのPHEVがスバルの向かう理想形なのです。
面白味のないミラーサイクルエンジンがスバルユーザーの求める形ではないでしょう。
スバル水平対向エンジンにTHS2は救世主となるのか:まとめ
THS2は水平対向エンジンの延命に繋がるものの、ユーザーにとって魅力はあるのでしょうか。
世界の規制強化(2027/2030/2035)の実態を見れば、近年の好決算は「風前の灯」であり、あと何年持続出来るのか、難しい未来予想図なのです。
しかし、世界のCO2規制強化策でハイブリッド車が締め出されるまでは、若干の時間は残されています。その僅かな期間のみ、スバル社の売上アップに寄与するという「まとめ」になります。
結果、トヨタと一蓮托生であるがゆえに、日本車勝利、ハイブリッド車勝利の国内メディアの世論に流されていくのでしょう。