R33 GT-Rは「駄作」「失敗作」「不人気」の噂は本当でしょうか。
R32、R34と比較して、本当に失敗なのか、その実態を解説します。
R33「失敗理由3つ」ってどうよ
日産スカイラインGT-R(R33)の評判は良くないようです。
ネットで、余りにも意味不明な理由が「3つ」書かれていたので反論します。(サイトは探してね)
1:デブになった
シルビアS14同様、必ず言われる意見ですが「見た目でデブ」という表現は正しいでしょう。
ただし、現在の車を見れば、衝突安全性を考慮して、重厚長大・ボリューミーなクルマばかり。
あらゆる性能向上の結果を見れば、たった10センチの拡大に騒ぐ意味がありません。
R33は豪華なセダンでもありません。R32よりもチープになった部分もあります。
日産の営業的にベースセダンの大型化が命題であり、その延長線としてのクーペですから、セダンに引っ張られて、クーペが大型化したに過ぎません。
当時は、スカイラインを名乗り、セダンとクーペは、運命共同体だったのです。
GT-Rユーザーが、ボディの大型化を望んだ結果では一切ありません。
写真は、トミカミニカー(PREMIUM/日産スカイラインGTR 1/62)
意味不明な評価とは
- C33ローレルとシャーシ共有、ホイールベース延長、ボディ剛性低下?。それ逆じゃね。
- 取って付けた、リアウィング?。個人の好みじゃね
- ハンドリングが面白くない?。R32と比べてドアンダー減ったけど。
漫画評価の影響が一人歩き
- 頭文字D:下げ・低評価(狭い峠道主体)
高橋啓介の「R33なんざ豚のエサ」というセリフは、R33に対するマイナスイメージを誘発 - 湾岸ミッドナイト:上げ・高評価(高速道主体)
2:運転がつまらない
- 前後重量バランス(F:R)
- R32:59.4:40.6
- R33:57.5:42.5
- R34:55.0:45.0
今の視点で見れば、R32は、FR車にも関わらず超フロントヘビー4WDであり、大アンダーステア大会だったのです。
R33はハンドリング面でも大幅に改善されました。筑波ラップだけ見ても、実ポテンシャルの性能向上は言うまでもなく、ボディの大型化やホイールベースの延長など、イメージから語っているに過ぎません。
R33はホイールベースの拡大だけでなく、タイヤ直径もワンサイズアップしており、操安性の向上、前後重量バランスの適正化など、レーサーから見てもメリットでしかありません。
3:リミッターが多すぎた
280ps規制は、R33に始まった訳ではありませんし、R33チューンドカーが、当時絶滅した訳でもありませんが、この指摘は何でしょうか?
- R32のECUは、8ビット
- R33のECUは、16ビット
エンジンの信頼性も性能も、当然向上しています。
当時もR33リミッター解除、パワーアップパーツは、潤沢にあり、ポン付けパーツもありました。
むしろ、R35の純正タイヤ以外は、ディーラー保証外など、に比べれば非常に緩い時代だったのです。
ニュルブルクリンクのラップタイム
グランツーリスモを筆頭にゲームで慣れ親しんだ方も多い、ヘビーなコースです。
全長20.832kmのサーキットが「ニュルブルクリンク北コース」です。
- R32スカイライン:8分24秒
- R33スカイライン:7分59秒887
- R34 Z-tune:7分54秒
「マイナス21秒のロマン」
というキャッチフレーズを掲げた2代目スカイラインGT-R(R33)です。
R32から、21秒短縮という驚異的なタイム短縮となっています。
次期モデルのカリカリチューニング版R34 Z-tuneとの差は、僅かです。
NISMO R34GT-R Z-tune
NISMOより、R34型GT-Rの最終形態ともいえる、2.8L化されたRB26DETTを搭載するNISMO R34GT-R Z-tuneが20台限定1774万5,000円で発売されました。
R35のニュルブルクリンク・タイム
筑波のラップタイム
- R32スカイライン:1分09秒98 「1989年 R32 スカイラインGT-R発売 実力テスト」
- R33スカイライン:1分03秒58 「CARトップ2007年2月号」
- R34スカイライン:1分02秒143 「CARトップ2007年2月号」R33より、1.4秒短縮の記載
- R35(08):1分2秒119
- R35(09):1分1秒34
- R35ブラックエディション:1分00秒72
- R35ピュアエディションforトラックバック:1分01秒81
- R35GT-Rニスモ(MY14):1分00秒97
- R35GT-Rニスモ(MY17):1分01秒24
- R35GT-Rニスモ(MY18):1分00秒229
※R35タイムはWikipediaより引用
R33広報車のチューニング発覚事件
1995年のカー・ビデオマガジンで、レーシングドライバーの土屋圭市氏が恒例の筑波アタックに参戦した。土屋氏の個人R33 V-Specと日産広報車R33との対決では、土屋氏が惨敗した結果となったようです。
- 市販モデルよりも低い車高
- キャンバー角の変更
- ブーストアップ。
- スペシャルチューンが発覚
この結果からのネットの声
- そもそも、サーキットやテストのタイムって怪しくね?
- 広報車のリアル。当たり前でしょ。なにを今さら。
販売台数推移
年式を問わず、登場から末期まで、コンスタントに売れたR32。
この流れから言えることは、R32デザインは、完成系であったと言えます。
年式 | R32 GT-R販売台数 |
---|---|
1989 | 4555 |
1990 | 8426 |
1991 | 7081 |
1992 | 7961 |
1993 | 6204 |
1994 | 7645 |
単年度として、R32-R33-R34の中でトップセールスの販売台数を記録。
以降は、ユーザーに行き渡った結果、販売は下降線。
この販売推移の傾向は、デザイン失敗モデルに有りがちな流れです。
年式 | R33 GT-R販売台数 |
---|---|
1995 | 8446 |
1996 | 4093 |
1997 | 2708 |
1998 | 1175 |
すでに、GT-Rというよりもスポーツカー人気自体が低迷。サイズダウンが販売回復に繋がらず。
シルビアS15同様、「大型化は悪」という虚像に踊らされた結果となった。
年式 | R34 GT-R販売台数 |
---|---|
1999 | 5536 |
2000 | 1859 |
2001 | 2197 |
2002 | 1775 |
2003 | 2 |
R32スペック
初期モデルは、エアバッグも付かない時代です。安全性も言わずもがなです。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高4545×1755×1340mm
- ホイールベース:2615mm
- 車重:1430kg
- エンジン:RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 2,568cc
- 馬力・トルク:280ps/6800rpm、36.0kgm/4400rpm
- タイヤサイズ:225/50R16
R33スペック
今となっては、目くじらを立てるほど、大きなサイズでもない。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高4675×1780×1360mm
- ホイールベース:2720mm
- 車両重量:1530kg
- エンジン:RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 2,568cc
- 馬力・トルク:280ps/6800rpm、37.5kgm/4400rpm
- タイヤサイズ:245/45ZR17
R34スペック
R33で叩かれたせいで、むしろ大型化すべき売れ筋セダンすら、サイズダウンする有り様。
- ニュルパッケージ
- ボディサイズ:全長×全幅×全高4600×1785×1360mm
- ホイールベース:2665mm
- 車重:1580kg
- エンジン:RB26DETT型 (直6・4バルブ DOHC・ツインターボ) 2,568cc
- 馬力・トルク:280ps/6800rpm、40.0kgm/4400rpm
- タイヤサイズ:245/40ZR18
R33は駄作、失敗作でない理由
タイヤがワンサイズ上がった
- R32タイヤ幅(直径):225mm(631mm)
- R32タイヤ幅(直径):245mm(652mm)
R32に比べて、R33は、タイヤ幅や外径が大型化し、明らかにグリップパワーや操安性にプラスに作用します。
R34とは扁平率が異なるのみで、タイヤ幅と直径は同一。
ホイールベースが105mm延長
ニュルのタイムを見れば、操安性に寄与していることは言うまでもないでしょう。
ボディの大型化で「ざんざん叩かれているR34」ですが、ニュルブルクリンクや筑波のタイムを見る限り、タイム向上に寄与していることがわかります。
ホイールベースは、R35の2780mmと比べれば、6センチも短く、ネガティブに捉える意味はありません。
絶対性能は大幅に向上
基本的な性能は、R32対して大幅に向上していることは、サーキットのタイムからも判断できます。
R33の大型化や重量増100kgがマイナス要因になっておらず、最高速もゼロヨンも数値的には向上してます。
- R32:最高速248.0km/h、ゼロヨン12秒98
- R33:最高速262.0km/h、ゼロヨン12秒55
- ※ベストカー誌:矢田部テスト
レース戦績を残せず
R32でタイトルを総なめにした結果、レースレギュレーションから締め出されたため、R33では主だった戦績を残せていません。
ただし、これを理由として、R34の実販売台数に影響していません。
ネットでは、この部分へのネガティブな指摘がありますが、単なるイメージ上の話でしょう。
内装がチープ
R32比でシートの質感が落ちたとする指摘があります。
ただし、これを理由として、R34の実販売台数に影響していません。
ネットでは、この部分へのネガティブな指摘がありますが、単なるイメージ上の話でしょう。
試作車デザインがイマイチだった
1993年の第30回東京モーターショーに展示されたR33試作車の評判がイマイチで、大幅変更したとのネット記事があります。
グリルとリヤウイングの小変更に留まっており、ライト形状がイマイチな点は改良されませんでした。ただし、これを理由として、R34の実販売台数に影響していません。
ネットでは、この部分への指摘がありますが、単なるイメージ上の話でしょう。
R32ユーザーのアンチ意見としての整理
R31からR32となり、せっかくホイールベースを短縮化し、奇跡の復活を遂げたR32です。
それに対して、ロングホイールベース化したR33は非難の対象になったことは容易に想像されます。しかし、蓋を開ければ、性能面では全て凌駕しており、販売面でも上回ってしまったことから、単なるR32ユーザーによるアンチ意見として一蹴できるでしょう。
R33とR34のデザイン的失敗の理由
R32デザイン
当時のZ32とは対極的な、力強いデザインのR32
当時のZ32フェアレディZと対極的な厳ついマスクは、デザインも完成系。
ライトとウインカーのデザインも絶妙です。
- 直線的なライト形状、インパクトのあるウインカーが目印
- 力強いBピラーやバンパーは、完成の域
R33デザイン
丸みを帯びた大失敗日産デザインとなるS14シルビアの先行型R33
丸みを帯びたタレ目ライトに、なぜかミスマッチの取って付けた感の丸ウインカー
- 丸みを帯びたライト(シルビアS14と同様の失敗デザイン)
- ライト内部の形状もシャープさに欠ける
- ウインカーをバンパーに移動も敗因
R34デザイン
ライト、ウインカーという、車の顔とも言えるデザインの消化不良のR34。
当時、経済誌にすら「ガンダム」と形容されたデザインは、万人向けとは言えず、デザインの失敗感が足を引っ張ったR34と言えます。
- ガンダム感満載のデザイン未成熟なバンパーエアダクトが随所に。
- つり目にしたのに丸みを帯びたライト(シャープさに欠けるイマイチデザイン)
- なぜ、このウインカーの位置と形状なのか。取って付けたチープデザイン
R33スカイラインが失敗でない理由のまとめ
失敗イメージを植え付けた「イニシャルD」。
また、S14シルビア同様に「峠車は小さいサイズが正義理論」を展開する旧モデルオーナーのヒガミ意見が一人歩きしたという説が要因と思います。
- ニュル、筑波、最高速、ゼロヨンともに、全てR32を凌駕しているR33
- 実際、机上スペックや実性能差ではR34に近い性能
- 大型化や重量増を騒わがれたものの、実際には初年度トップセールスを記録
- ただ、試作車でも指摘されたデザイン面は、根本的に直っておらず、S14シルビア同様、当時の日産イマイチデザインを受けついてしまったのが敗因。(この点は失敗)
- 大型化、重量増というメディアが作り上げた負のR33イメージだけが先行し、小型化したのに売れないというS15シルビアと同様の流れになったR34。
- 実際のR33完成度は非常に高いという結論です。
- R33デザインが気に入れば、「買い」というまとめになります。
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