マツダ、新型4気筒エンジン「SKYACTIV-Z」2027年中市場投入へ ラムダワン燃焼を使い広いレンジでスーパーリーンバーン燃焼を実現とされる技術が、オワコン(失敗)の予感満載です。その理由を解説します。
SKYACTIV-Zとは
2025年3月期第2四半期決算のプレゼンテーション資料から、以下を引用します。
- SKYACTIV-GやXの後継である「新型4気筒エンジンSKYACTIV-Zエンジン」を開発中
- このSKYACTIV-Zエンジンは、理論燃焼であるラムダワン燃焼を使い、低回転から高回転まで広いレンジでスーパーリーンバーン燃焼を実現することで高い熱効率を実現し、優れた環境性能と走行性能を提供
- 将来は直列6気筒エンジンにも、この新型エンジンの燃焼技術を移植して環境性能を高めていく
- エンジンは選択と集中を行い、種類数全体は段階を追って集約を進め、大幅な効率化を図る計画
- 2027年中に市場投入を目指す
誰もが脳裏をよぎる「失敗」の文字
ラージモデルのSUVを出し切り、SKYACTIV-Xの改善も見込めず、MX-30のEVおよびREレンジエクステンダーも大失敗に終わり、新製品ネタが尽きた状況です。
新技術は無いのかと、探し回った結果、「SKYACTIV-Zエンジン」「理論燃焼のラムダワン燃焼」が起死回生をアピールする苦肉のキーワードなのでしょう。
しかし、CO2規制強化の波、SKYACTIV-Xの大失敗例から、この技術がすでにオワコン化しており、ユーザーが求める姿には程遠く、「技術陣の独りよがり」であることが、過去の経験則から感じ取れるのではないでしょうか。
ターボ嫌い、ハイブリッド嫌いの亡霊が彷徨う
- マツダは、2リッター以下のダウンサイジングターボ車を発売出来ませんでした。
- マツダは、2リッター以下のハイブリッド車を継続販売しませんでした。(アクセラのみ)
すでにNAエンジン(Skyactiv-G)での燃焼効率を追い求める時代は、とっくに終わり、ハイブリッドやダウンサイジングターボにより、扱いやすいパワートルク、小さい排気量による燃費や経済性を求める時代なのです。
スカイアクティブXは失敗に終った
マツダ車人気は、鼓動デザインのエクステリアとインテリアで、持っていたようなものです。
マツダ製NAエンジン+6ATという、ライバル車に対して、全く魅力のカケラも無い、まるで15年前にタイムスリップしたかのような、パワートレインの状態が今もなお続いています。このラインナップにより、かなりの販売セールスの機会を失ったことは言うまでもないでしょう。
そして、その集大成ともなる、「スカイアクティブX」という負の遺産、黒歴史は、マツダを取り巻く業界全体が学習したのではないでしょうか。
ラムダワン燃焼とは
理論空燃比
空燃比は燃料と空気の比率のことで、空気中の酸素とガソリンが過不足なく燃焼する空気と燃料の比率は空気14.7gに対してガソリン1gです。
この14.7:1の空燃比をストイキオメトリー(理論空燃比。略してストイキ)と呼びます。
別名:理論空燃比の14.7対1のことをラムダ1(ラムダワン)と呼びます。
- 理論空燃比:空気14.7に対して燃料1の時が燃焼効率が良い
- 14.7の値より下回る領域:リッチ(燃料が濃い、空燃比が小さい)
- 14.7の値より上回る領域:リーン(燃料が薄い、空燃比が大きい)
ラムダワン燃焼の範囲
理論空燃比14.7:1とされるラムダワン(λ1)の範囲は、エンジン回転数の全域における限定的、部分的な範囲を指します。
エンジン熱効率
エンジンの熱効率という観点では、理想空燃比がベストな燃焼ではなく、燃料が薄い(ガソリン消費量の削減)状態であるリーンバーンエンジンの方が環境に優しいとされます。
それを広範囲に実現し、エンジン熱効率の改善に繋げるのがスーパーリーンバーンとなります。
Skyactive-Zが目指す姿
- よって、「ラムダワン」と「スーパーリーンバーン」は、相反する意味となります。
拡大解釈し過ぎた用語の使い方となり、ユーザーの混乱を招くでしょう。 - 「スーパーリーンバーン燃焼」が目的であれば、後述のラムダツーと変わりません。
- さらに、スーパーリーンバーンの研究開発は、昔から世界の全メーカーが何らかの仕組みを取り入れ、一部限定的な実用化を実施しており、目新しさのカケラもありません。
- スーパーリーンは、毎度おなじみ、煤(すす)の蓄積を招き、山盛りの付加装置・装置トラブル、リコール多発、放置プレイが懸念されます。
- 「X黒歴史」のように「SPCCI的な机上マジック」な本末転倒の結果になることが懸念されます。
日産の取り組み(ラムダツー)
あえて、e-Powerを例に挙げますが、全メーカーで何らかの仕組みや事例が存在します。
シリーズハイブリッドのレシプロ発電エンジンとして、熟成が進んでおり、静粛性の面でも高評価を得ています。(このタイミングでのZに今さら感が漂います)
- 日産が熱効率50%を実現するガソリン・エンジンは、空気過剰率をλ>2
- 過不足なく燃焼するのに必要な空気量の2倍より多い空気を燃料を薄める(希釈する)
- この技術は、e-Power用の発電専用エンジンとして、パワーレンジが限定
- CO2削減の効果は、モーター駆動によるシリーズハイブリッドによるものです。
日産e-Power専用の発電エンジンとして、ラムダワン(λ=1)、ラムダツー(λ>2)をロードマップを発表済の状況において、マツダのラムダワン施策が霞んでしまうのは気のせいでしょうか?
CO2規制強化の時代、内燃をやってる場合じゃない
世界のCO2規制強化は国内メディアが一切報道しない
CAFE規制、ZEV規制、NEV規制など、CO2規制強化によるHEV包囲網として、存命期間となる2030年まであと僅かしか残されてません。
トヨタ・ホンダの最新パラレルハイブリッドでさえ、2030年の規制強化をクリアできなくなるカウントダウンも始まっています。
そのような時間軸において、2027年の市場投入はオワコン確定なのです。
2030年以降は、PHEVしか存命できず、内燃エンジンの効率化など数値的総合力として、もはや、どうでも良くなるのです。
ラムダワン単体では、CO2規制強化に全く対応できません
日産e-Powerだけでなく、他社リーンバーンエンジンなど、従来から多数が市販化しており、現時点では影武者的な存在でしかなく、セールス面での技術的なアピールが弱いことが理解できるでしょう。
ユーザーが求めているのは、ドライバビリティ・静音・燃費性能を兼ね備えた電動化による総合スペックなのです。
以下のマツダ・ロードマップが悲しく感じます(マツダ資料より引用)
3rdステップがゴールでしょうか?。本来のゴールは、電動化とセットの環境性能、CO2排出スペックが問われます。もはや、内燃エンジン単体の効率など、どうでも良いのです。
欧州のCO2規制(2021年)の対応として、スカイG/D/X単体で、惨敗した結果を身もって体験したはずです。そして、CO2規制のペナルティ対策として、ヤリスのOEMをマツダ2で販売しています。
国内でもXは失敗に終わり、Dは未だに煤だらけです。その延長線上の3rd StepがZとすれば、未来はオワコン確定です。
メディアの宣伝が過熱
技術陣の受け売りとは思いますが、X黒歴史を振り返れば、素人でも無謀な内容であることが分かります。逆にXで懲りていないのでしょうか?。あの退任劇は、X起因でなく、X大成功というシナリオが、Zに昇華したということなのでしょう。
ベストカー:2024.11.11
「欧州ユーロ7や米国LEV4・Tier4などの厳しい環境規制に適合できるこのエンジンを2027年中の市場投入を目指して進めていく」
日経クロステック:2024.11.11
SKYACTIV-Zは、欧州委員会(EC)の新環境規制「Euro 7(ユーロ7)」や、米国環境保護庁(EPA)の新規制案といった排ガス規制に対応する。いずれも2020年代後半に発効する見通しだ。
マツダSKYACTIV-Z、「相反する燃焼技術」をどう両立させるのか? 2027年登場に向けて大胆予測する
そこで、SKYACTIV-Zでは、2モードで燃料と空気の割合をラムダワンに保ちながら、さらに多くのEGRを導入して燃料量を減らし、スーパーリーンバーンを実現することが考えられる。また、3モードでは従来のリーンバーンを進化させ、スーパーリーンバーンにすることで、さらに燃費改善を図ることができる。
このアプローチにより、SKYACTIV-Xで培った技術を進化させ、ラムダワン燃焼とスーパーリーンバーンの両立が可能になるだろう。
素人的解釈で難易度を解説すると
- 内燃エンジン単体でのユーロ7の達成など、無謀
- トヨタ製ストロングハイブリッドによる合わせ技により、なんとか達成可能
- Xで培った技術とか。Split1.1で進化が止まってるのですが。4500rpmという最大トルク発生回転数がドッカンターボX&低速トルクスカスカX
という難易度は、素人でも推察可能ではないでしょうか。
Skyactiv-Zの使い道
GやXの進化系として、Zの使い道はゼロ
Skyactiv-G・X同様に、2027年という時期感では、純内燃エンジンでは全く使い物にならず、GやXの焼き直し版では意味がありません。
すでにGやXの商品力は、微塵も無いからが、その理由です。
PHEVエンジンも、宝の持ち腐れ
基本的にPHEVは、自宅充電のBEVでの利用がメインです。長距離のみエンジン始動という使い方です。X同様、高コスト化が避けられない「SPCCIマジック山盛り」のZを積む意味が有りません。
また、現CX-60PHEVは、RAV4-PHEVに比べて高価であり商品力に欠けるためです。
結局、e-Powerの二番煎じが関の山
時期的には、発電専用エンジンに特化した方が、燃焼効率を効率化させやすく、もはやe-Powerの二番煎じの案です。また、HEVベースのPHEVは、トヨタ製を使う方が効率が良いためです。
ラムダワン燃焼のSKYACTIV-Zにオワコンフラグ:まとめ
ロータリー発電機(8C)におけるラムダワンの性能向上
新型のロータリー発電機(8C)におけるラムダワンの性能向上などの成果もありますが、ロータリーエンジンによる劇悪な燃費性能により、ラムダワンの成果自体を亡き者にしてしまうような、圧倒的な破壊力なのです。ロータリー発電機の評価もさることながら、MX-30 R-EVの絶不調、販売低迷の事実が証明しています。
もはや、モーターショーに出品された「アイコニックSP」市販化など、完全な夢物語とするような低迷っぷりなのです。
過去の過剰宣伝を学習した業界とユーザー
名前だけで中身が伴わない「X黒歴史」は業界全体だけでなく、一般ユーザーも学習済です。よって「過去のX経験」から、メディア側の過剰宣伝は、評論家自身の評判を落とし、炎上に繋がる事が避けられないため、当たり障りないコメント記事に留める事が予想されます。
SKYACTIV-GのZ化など、誰も望まない姿
15年前に逆戻りしたかのような、NAエンジン(スカイアクティブG)です。ターボ嫌い、ハイブリッド嫌いの施策により、未だに延命している事自体、マツダにとって厳しい状況です。
煤が溜まるディーゼルは避けたいが、「デザイン優先・経済性・パワー」で選ぶと、未だにCX-5 2.2D一択となってしまう状況なのです。
もはや、Skyactiv-Xを筆頭とした「Skyactiv全体を負の遺産認定・総括」し、近年のマツダをけん引したのはデザインだけだったという総括が、マツダを未来に繋げる最善の策です。
HCCIの目標達成未達からのSPCCI的な、X机上マジック・大技炸裂により、業界もユーザーも見切りました。このような黒歴史の上塗りを誰も望んでいません。
スカイアクティブG/D/Xなど、ユーザーは誰も望んでおらず、欲しいのはマツダ鼓動デザインとトヨタ製THSによるモデル強化が最善の策であり、ユーザーの望む姿なのです。
末尾Zを使いきり、SKYACTIV黒歴史のフィナーレを飾る
まさに、相応しいシナリオでしょうか。ダウンサイジングターボ嫌い・ハイブリッド嫌いの伝統を消し去り、新マツダとして、新たな復活を希望します。