2023年時点でレンジエクステンダーは市場から淘汰されています。当初はロータリーレンジエクステンダーが発売される噂でしたが、PHEV車のREエンジンによるシリーズハイブリッド車(R-EV)として登場しました。このメリットデメリットを解説します。
マツダがロータリーEV車を発売
2023年1月13日、「MX-30 R-EV」が、ベルギーのモーターショーに登場しました。
MX-30 e-SKYACTIV R-EV
ただでさえ、売れていないMX-30EVに対して、ロータリーエンジンを発電機に用いても売れるメリットが全く無さそうです。「ロータリーファンに行き渡って終わり」とならないことを望みます。
- 日本仕様は、航続距離:107km(純BEV走行)
- 欧州WLTPモード:85km(純BEV走行)
- 全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1595mm
- ホイールベース:2655mm
- トレッド前/後:1565mm/1565mm
- 最小回転半径:5.3m
- 乗車定員:5名
- 車両重量:1780㎏(乾燥重量)
- 発電用エンジン形式:8C-PH型
- 発電用エンジン排気量:水冷1ローター・830cc×1
- 発電用エンジン最高出力:53kW(72PS)/4500rpm
- 発電用エンジン最大トルク:112Nm(11.4㎏・m)/4500rpm
- 燃料タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・50L
- モーター形式:MV型(交流同期電動機)
- モーター最高出力:125kW(170PS)/9000rpm
- モーター最大トルク:260Nm(26.5㎏・m)/0-4481rpm
- WLTCモードハイブリッド燃費:15.4km/L
- WLTCモード充電電力使用時走行距離:107km
- WLTCモードEV走行換算距離:107km
- サスペンション前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式
- ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
- タイヤサイズ:215/55R18
- たった、17.8kWhのリチウムイオンバッテリー(MX-30EVは、35.5kWh)
- 最高時速:140km/h(リミッター)
- マツダ、発電用ロータリーエンジンを搭載する「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を欧州で初公開 特別仕様車「エディションR」も登場
R-EVの燃費は「13.2km/L」
- イギリス仕様のWLTPモード燃費は、13.2km/L(総合値)です。
- 日本仕様のWLTCモード燃費は、15.4km/L
- ユーザー実燃費は、10.3km/L(報告ベース)
よって、R-EV(ロータリー発電中)の実燃費は、シリーズハイブリッドのe-Power(レシプロエンジン)よりも圧倒的に劣る数値です。
ロータリーエンジン(R-EV)の燃焼効率とは
日産e-powerは、第二世代に進化し、1.2L直列3気筒エンジンを発電専用にチューニング。WLTC燃費は、28.4km/Lです。
一方、マツダのR-EVに搭載された830ccロータリーエンジンは、回転数を最大4500rpmに抑え、発電用途に特化され、燃焼効率が優れた回転制御により、燃費が改善されたとの記事が溢れています。
しかし、ガソリン換算1.2リッターの燃費としては驚くほど劇悪の13.2km/Lです。
ロータリーエンジンといえば燃費の悪いという自動車業界的な一般常識は、発電専用エンジン化されても、全く改善されていない事実を物語っています。
レンジエクステンダーではなく、シリーズハイブリッドの機能と性能
- エンジンは、レシプロ換算で1.2~1.6L相当のパワーを絞り出す、ロータリーエンジン
- エンジンフィールやサウンドを期待している方がいるようですが、全く別物
- 日産e-Power同様にエンジンは発電専用用途となるシリーズハイブリッド
- 2013年にデミオEV試作車に搭載された純粋なレンジエクステンダーでなく、「通常走行も耐えうるシリーズハイブリッド」として、140km/hの最高速度を出せるエンジンパワーによる発電量を確保
- MX-30EVのバッテリー容量35.5kw/hから、約半分の17.8kw/hへ削減しコストカット
その分をロータリーエンジンを積むことで車両価格を相殺させる戦略か - 発電用専用エンジンは、エンジン回転数を一定に保てるため燃費効率は良くなるが、所詮はロータリーエンジンの最悪燃費が足を引っ張る13.2km/Lの燃費
- たった72PSの発電エンジンと1780キロの車両重量で、日産ノートe-powerよりも確実の劣る動力性能、高負荷時に発電力が足りない可能性もあり
- 元々、フロントに広大なエンジン搭載スペースを備えたMX-30にとって、コンパクトなロータリーエンジンのメリットは、全く生かせていない。
- よって、メリットは、ロータリーエンジンの静粛性のみ、です。
MX-30はフロントエンジン
MX-30のベース車両の排気量2.0Lのガソリンエンジンの代わりに、R-EVエンジンを搭載しますので、せっかくのコンパクトなロータリーエンジンもメリットを全く生かせていません。
エンジンスペースに余裕のあるMX-30は、デミオEVと異なり、フロントに搭載します。エンジンスペースに余裕があり、エンジン小型化のメリットは全くありません。
830ccの大型ローターで燃費が悪化
PHEVの性格上、バッテリーが切れたら、その後は、ロータリーエンジンでの発電パワーに頼った走行になります。ロータリーエンジンの非効率さは燃費が悪いのです。
- フロントのエンジンスペースに積むならロータリーの小型メリットは全くない
- むしろ、燃費の悪いロータリーにメリットは全くない
- 50Lも積む燃料タンクの大きさが燃費の悪さを証明
- 新REユニットは、13Bエンジンのマイナス15キロ(たったこれだけ)
R-EVとBEVの重量差とは
バッテリー容量は約半分ですが、重量は逆にふえてしまうという本末転倒な結果です。
ロータリーエンジンのメリット(コンパクト、軽量)が吹き飛び、バッテリーとモーターだけのシンプルなBEVの方が軽いという、呆れる結果となっています。
フロントヘビーな重量バランスは、BEVより悪化していることは言うまでもありません。
MX-30 | バッテリー 容量 |
バッテリー 重量 |
車両重量 | 車両 総重量 |
---|---|---|---|---|
EV | 35.5kWh | 310kg | 1650kg | 1881kg |
R-EV | 17.8kWh | 188.2kg | 1780kg | 2251kg |
レンジエクステンダーEVの概要
R-EVは、レンジエクステンダーではない
今回のマツダR-EVは、レンジエクステンダーではありません。
本来のレンジエクステンダーの意味を解説します。
電気自動車(EV)の航続距離延長を目的に搭載される、小型発電機からなるシステムです。 バッテリーによるモーター駆動をベースとしたEV車(BEV)において、エンジン駆動により、発電機を回して電気を取得し、バッテリー充電を行い、モーターを駆動させます。
バッテリーの電力が無くなる前にエンジンを駆動して、航続距離を延長させる仕組みです。
評論家のレンジエクステンダーという記述は誤り
もし、MX-30 R-EVについて、レンジエクステンダー搭載という記事を見たら、誤りです。
PHEV用のエンジンです。航続距離を延長させる(レンジエクステンダー)だけでなく、電欠後の通常走行発電を行うものです。
となれば、ロータリーのメリットは限られ、燃費面のデメリットが目立ちます。
あくまで電欠時の緊急用途がレンジエクステンダー
- レンジエクステンダーの用途は、あくまで電欠防止のための緊急用途です。
- 日産e-Powerのように、通常走行用の発電力はありません。
- 緊急用途のため、あくまで次のEVスタンドにたどり着くまでの緊急用途です。
- 航続距離を延長するような紛らわしい記述が多いのですが、夢のエンジンではありません。
- 高速道路や坂道でパワー不足になるほどの最低限の発電量しか持ち合わせていません。
バッテリーの電気が無くなった場合のみ駆動
レンジエクステンダーの目的は、バッテリーで駆動するEV車が電欠になるのを避けるために、あくまで緊急的にエンジンを駆動して発電機を回し、バッテリー充電により、近隣の充電スタンドまで緊急的に移動させる役割です。
プラグインハイブリッドカー(PHEV)の一種や、日産e-Powerと一緒であるかのような誤ったサイトが多く見られますが、全くの誤りです。
また、航続距離が2倍になるような、夢の仕組みと認識されている方も多いのですが、発電力は最低限に留まり、このエンジンだけで200kmも走るのは拷問と言えます。
通常のPHEVは、エンジン駆動とモーター駆動の切り替えが可能であり、根本的に仕組みが異なります。
航続距離を延長させる目的(最低限の馬力)
通常の電気自動車はバッテリーを主として動きます。レンジエクステンダーは、電欠時のみ稼働しますので、いわば余計な重量物100kg超も常時積んていることになります。マメにバッテリー充電を行う方であれば、レンジエクステンダーは一切稼働しない可能性もあります。エンジン出力も平地をやっと移動するだけの馬力に留めています。稼働頻度が少ないのに100kgの重量物を積んでいるため、燃費にも悪影響をもたらします。
日産eパワーのシリーズハイブリッドとは異なる
エンジンで発電し、モーター駆動のシリーズハイブリッド方式とシステムは同じです。
しかし、日産eパワーは通常の高速走行も可能な十分な発電を行います。
高速走行や急坂にも耐えられるエンジン発電力を備え、ガソリンタンク容量も十分な量を備えています。
一方、レンジエクステンダー搭載車は、EVバッテリーの電気が少なくなった後、あくまで緊急用途としてエンジンが発電するイメージです。
よって、発電パワーは、一般のシリーズハイブリッド(e-Power)とレンジエクステンダーでは、用途や出力が根本的に異なります。
R-EVがレンジエクステンダーという記事を見かけたら、それは誤り
- 本来のレンジエクステンダーは、ZEV規制にて定義されています。
- レンジエクステンダーの定義は「航続距離が電気自動車としての航続距離以下であること」
- よって、航続距離全体をバッテリー走行がメインのBEV車が電欠時、緊急補助的に発電を行うエンジンを指します。
- R-EVをレンジエクステンダーとする記事を見かけたら、それは完全な誤りです。
- 広義では、「電欠後の航続距離を延長するのだから、それはレンジエクステンダーだ」と解釈する記事も完全な誤りです。
- R-EVは、プラグインハイブリッドのカテゴリーです。
レンジエクステンダーのデメリット
ガソリンエンジン、ロータリーエンジン共通のデメリットを記載します。
公式なレンジエクステンダーの定義に合致する、純BEV車に搭載されたレンジエクステンダー採用車は、BMW i3のみです。(2013-2022)後継モデルの発売無し
- 基本バッテリーが無くなった場合のみエンジン駆動。それ以外は、重量物を運ぶジャマな存在
- 重量増として100キロ以上。そのため純粋な燃費面で悪化要因
- 最低限のエンジン出力。高速道や急坂でもエンジン出力不足=発電力不足でスピードが出ない
- 通常時、エンジン停止により、排熱をヒーターに利用できず、電気消耗はEVと同様
(エンジンを積んでいるメリットを生かせない) - エンジン未稼働状態が続けば、ガソリンの劣化が起こる。
- 純粋なEV車に比べて、メンテナンスコスト増
- よって、世界的にレンジエクステンダーよりも、バッテリー増量の流れ。
- CO2規制により、ガソリンタンク容量が限られ、航続距離も一定の範囲に限られる
(あくまで緊急用途) - エンジン搭載スペースで荷室減少。BMW i3は、バイクエンジンを流用しリヤ下部に搭載。
- レシプロエンジンとの比較で「燃費」「排ガス性能」「信頼性(耐久性)」に課題
ロータリーレンジエクステンダーの概要
ロータリーエンジン 発電機(試作車/2013年)
レンジエクステンダーのエンジンとして一般的にはレシプロエンジンを用いるところ、マツダとしてはロータリーエンジンを用いて、その駆動力でモーターを回して発電を行い、バッテリーを充電したり、電気自動車の駆動モーターへ電力を供給するものです。
従来のマツダRX7/8のようにロータリーエンジンの駆動力を路面に伝える仕組みではありません。
ロータリーレンジエクステンダーのスペック
マツダのロータリーエンジン(RE)を電気自動車の発電機に使う試作車は2013年に登場しましたが、試作車に終わりました。今回のR-EVとは全く別物になります。
REレンジエクステンダーのベース車両は「リース販売のデミオEV」です。75kW(102馬力)の駆動用モーターと、20kWhの駆動用リチウムイオン電池を搭載するスペックです。
このデミオEVに、発電装置も搭載して走行距離を伸ばしたものとして「マツダ REレンジエクステンダー」の試作車をリリースしています。搭載するエンジンは、マツダ得意の330ccのシングルロータリーエンジンを搭載し最高出力は22kW(約29.5馬力)です。
- マツダ・デミオEV REレンジエクステンダー
- 排気量:330cc
- ローター:シングルローター
- エンジン最高出力:約29.5ps(22kW)/4500rpm
ロータリー・レンジエクステンダーの重量とサイズ
レンジエクステンダーの目的は、電欠時の緊急用途に限定されます。よって、発電パワーは最低限に留まります。燃料タンクも規定上の最大値に留まります。
R-EVのような極悪燃費を見据えて、50Lなどという巨大タンクを積むことは規定上許されません。
日産ノートeパワーのように十分な発電力のエンジンは搭載していませんので、ロータリー発電による長距離走行は拷問に近いでしょう。あくまで、電欠時に次の充電スタンドまで、自走で辿り着くための緊急走行用の発電エンジンなのです。
100キロ超えでEV燃費悪化の本末転倒
REエンジン、発電機、燃料タンクの「3点セット」を合計して約100キロの重量となっています。
重量差としては、通常のエンジン(BMW i3)の120キロに対して、REは100キロという数値です。
確かに、軽さがメリットになりますが、REエンジンが劇的に軽いわけではない様です。
エンジン高は約300mmとなり、レシプロエンジンでは、450mm程度になるということです。
騒音は、ガソリンエンジンより5dB(A)低くなるそうで、この5dbが劇的に静かな数値と判断できるのか微妙なところです。
マツダMX-30EVのチープなスペック
たった航続距離200kmというチープなスペック発売のMX-30EV
ロータリーエンジンのデメリット
マツダ広報部に問い合わせたところ以下のような回答
【メリット】
- レシプロエンジンと比較して軽量、コンパクトにできる。
- 音が静かで振動も少ないため、モーター走行と相性がいい。
【デメリット】
レシプロエンジンとの比較で「燃費」「排ガス性能」「信頼性」に課題がある(ただし、発電用として使用することで、効率のいい回転域を中心に使えるため、大きく改善できる可能性大)
ロータリーエンジンのメリット
ローターの回転運動をそのまま伝達できるため、レシプロエンジンより振動や騒音が少なく、また構造もシンプルにできるため、小型で軽量という利点があります。 一見、レンジエクステンダー(発電機)に適していると思う事でしょう。しかし、ロータリー発電機が適しているとしたら、ここ数十年市販化されなかったのでしょうか?。MX-30でそのポテンシャルが開花することは無く、従来のロータリー同様、淘汰される可能性が高いでしょう。
ロータリーエンジン燃費のデメリット
レシプロエンジンの2倍の空気(燃料)を吸入しながら出力は1.5倍しか得られないため「燃料消費効率が3割悪い」という性質です。EV車という燃費効率を求める車とは、相反する性質であり、小型化メリットだからロータリーを採用するという理由になりません。
ロータリーエンジン耐久性のデメリット
ロータリーエンジンは燃焼室が移動しながら燃焼する構造のため、異物がサイドシールやアペックスシールとハウジングの間に挟まりやすいのです。結果、キズになってしまう危険性が極めて高いのです。結果、寿命が短いクルマだと5万km前後、平均でも8~9万kmで寿命を迎えてしまうことが多いようです。これがダメになると圧縮が下がり、パワーがダウンします。また、オイルの多量消費(燃焼)もあります。オイル管理は一般に走行していてもレシプロよりも早い交換サイクルになります。プラグも一般のレシプロより交換サイクルが早く、1万~2万km走行で交換した方がエンジンの調子が良いようです。
燃費、メンテナンス共に、EV車としてバッテリー寿命を下回る可能性が出てきます。数十万キロを走行するタクシーや営業として、REエンジンは全く向かないことが、REエンジンが市販車から消えた歴史から理解できると思います。
百花繚乱のBEV用、発電エンジン
本命はロータリーにあらず
アウディもロータリーの市販化中止
BMW i3やマツダREエクステンダーの登場と同時期の2013年にアウディも改良型のロータリーレンジエクステンダーの試作車「A1 eトロン」を登場させています。
発電用の排気量254ccのシングルローターエンジンは、2010年初代の燃費は、燃料タンクは12Lで200キロとなり、燃費は16.6キロとなり、マツダ製に劣ります。
2013年モデルでは、排気量を354ccへと拡大し、最大出力は20psから34psへ引き上げられた。パワーアップに伴い、燃費はさらに悪化しました。
その後の改良試作品モデルが消え去り、市販化の話題も無くなりました。燃費効率的にロータリーレンジエクステンダーの市販化はお蔵入りになったようです。
ロータリーエンジンでもレンジエクステンダーは一定回転でしか使用しないから、燃費が良いというような賛美記事も見かけますが、実態としては、パワー不足を排気量アップで補うアウディのエンジンを見れば実用的とは程遠い性能です。
ロータリーレンジエクステンダーの小型化メリットは無い
引用元:モーターファンweb
BMW i3のレンジエクステンダーが積む647ccの直列2気筒エンジンは、エンジンが始動すると音も振動も大きく、あたかも屋台の発電機エンジンのようで少々がっかりする。シリーズハイブリッドの日産ノートe-POWERも、フルに発電しなければ追いつかないような状況では、1.2L 3気筒エンジンは、けっして静か・スムーズとは言えない。
これがロータリーだったら、レンジエクステンダーEVで大きなアドバンテージがあるだろうと容易に想像できる。
ロータリーエンジンのメリットは静粛性だと言いたいようです。軽量化やコンパクトなエンジンもメリットになりますが、劣悪な燃費や耐久性に劣るロータリーは、問題が山積みだと言えます。レンジエクステンダーで負荷が小さくても市販エンジンとして淘汰されたものに復活の希望を抱くのはマツダファンだけかもしれません。EV車におけるモーター音に対して、レシプロもロータリーもエンジン音は雑音でしかないのです。
ロータリーレンジエクステンダーの弱点・死角
ロータリーは低回転時の効率が非常に悪く、燃費の悪化につながるが、発電用エンジンなら、車速に関係なく効率がよい回転数の範囲のみで使えばよいため、大きな弱点にはならない。
これは本当でしょうか。メリットは「軽量コンパクト」だけであり、絶対的な燃費ではレシプロエンジンの比ではありません。どうしてもマツダファンとして、なんとかしてロータリーを復活させたいとの思いが優先しているようです。
今後、数万数十万とレンジエクステンダーが搭載されるとすれば、従来のロータリーの欠点は完全に克服するぐらいの革新が必要でしょう。
REレンジエクステンダーは軽くない
- 車両重量差は120キロ
- レンジエクステンダー無し:1195kg
- レンジエクステンダー有り:1315kg
BMW i3のレンジエクステンダーは、すでに2013年から市販化されています。
バイクエンジンを流用し、いかに市販化スピードが高いのか、ご理解いただけるでしょう。現時点でもパワー・燃費でデミオレンジエクステンダーのスペックを上回っています。
ロータリー・レンジエクステンダーの燃費
マツダREレンジエクステンダーが9リッタータンクの燃料を使って走れる距離は、JC08モード走行で約180km。9リッタータンクで走れる距離が180kmと、ロータリーエンジンで発電している時のJC08モード燃費が「20km/L」となります。
BMW i3の方がパワーのあるエンジンですが、燃費も「24.7km/L」とi3の方が良いようです。
現時点で、新開発のREエクステンダーの方がパワーも燃費も劣り、「メリットは軽さとコンパクトさ」だけになります。
現時点で、バイクから流用したBMW i3のレシプロエンジンが燃費でもパワーでも上回っています。
2輪4輪のレシプロエンジンメーカーが専用の発電専用エンジンを開発すれば、小型軽量メリットもロータリーエンジンを上回ることは、時間の問題でしょう。
レンジエクステンダー問題と時代遅れ
BMW i3エクステンダーは欧州販売中止
2013年より、電気自動車のBMW i3は、電力不足時、発電用の専用エンジン(レンジエクステンダー)を搭載しています。レンジエクステンダーの先輩にあたる事例です。BMWモーターサイクル用の2気筒4バルブ647ccのガソリンエンジンユニットをリヤに搭載(燃料タンクは9リットル)。
270度クランクを持つ647cc水冷4ストローク並列2気筒エンジンで、ロータックス社との共同開発したものです。2輪用はアプリリアが製造していますが、BMW i3用は台湾のキムコ社が受託生産を行っているようです。
- エンジン最高出力:38ps(28kW)/5000rpm
- エンジン最大トルク:56Nm(5.7kgm)/4500rpm
- 燃費は24.7km/L
すでにEV市販モデルとして2013年から市場に投入され、EVとレンジエクステンダーを合わせた航続距離は500キロを超える性能のマイナーチェンジモデルも登場しています。
しかし、欧州では、EVバッテリーの大型化により、レンジエクステンダー搭載モデルのBMW i3レンジエクステンダー販売を中止しています。
EV創世記としてのBMW i3レンジエクステンダーは役割を終えました。他メーカーでは新レンジエクステンダーの投入は全て見送っている状況であり、REレンジエクステンダーは失敗することになりそうです。
レンジエクステンダーのデメリットは発電量の少なさ
米国では、BMW i3レンジエクステンダーでは、高速域や登坂時に思ったように走らないことが報告されており、訴訟になっています。これは、BMWのレンジエクステンダーエンジンのパワーが小さく、高負荷時の発電量や充電が足りていない事を示しています。日産のeパワー(シリーズハイブリッド)に比べ、エンジンパワーが根本的に足りていないことになります。
マツダREレンジエクステンダーは、30psとBMW i3よりも小さいパワーであり、坂道もまともに登らない状況が予想されます。レンジエクステンダーには緊急時のみ稼働するため、単純に排気量アップ(馬力増)は出来ません。
もともと燃費の悪いロータリーにとって排気量アップは致命的なのです。
ライバル車(BMW i3)に劣る燃費性能
JC08燃費条件、9Lタンクは同一
- REレンジエクステンダー3(330cc1ローター):20km/l
- BMW i3レンジエクステンダー(647cc2気筒):24.7km/l
BMW i3はロータックスのバイク用2気筒エンジンを流用したもので、発売時期は2010年です。バッテリーの高性能化により、航続距離がマイナーチェンジ毎に延長され、レンジエクステンダーは不要という市場認識となっています。もし、レンジエクステンダーが必要と市場が認めれば、自動車バイクエンジンメーカーが開発に注力します。レシプロエンジンとして、発電に特化した高性能コンパクトで低燃費のエンジンが登場するでしょう。
すでに市場から淘汰されたロータリーエンジンは、コンパクトさでメリットがあってもレシプロエンジンメーカーが注力すれば生き残れないのです。
トヨタがR-EV不採用の理由
2017年、トヨタとマツダの協業関係が明確化され、EVの共同開発として、TOYOTA、MAZDA、DENSOと新会社「EV C.A. Spirit 」を設立しました。
当時、マツダ賛美記事を得意とするジャーナリストは、早速、ロータリー復活であるかのような記事も見受けられます。
2020年「EV C.A. Spirit 」は解散
トヨタがマツダ製ロータリーエンジンを使うという夢物語的な記事も出てきましたが、2020年「EV C.A. Spirit 」は解散し、マツダ側の目論見は夢と消えました。
トヨタのRーEVは搭載車も無し
トヨタのショーモデルとして、e-Palette ConceptへREレンジエクステンダー搭載が公表されましたが、EV.C.A.Sprit解散に伴い、実車の登場も消えました。トヨタ陣営はEV共同開発としてマツダを外し、トヨタ単独でEV車を登場させています。航続距離400kmとRE(ロータリー)レンジエクステンダーは使わないEV車なのです。結果、マツダ製エンジンは使われないという事です。
2輪用2気筒エンジン製造のヤマハやスズキが最適
仮にトヨタ側がレンジエクステンダーを積むEV車を発売するとなれば、ヤマハのオートバイエンジンを流用する策の方が、より低コストで実用的かつ低燃費なエンジンを作れることでしょう。
レンジエクステンダーのエンジン搭載としてのネックは、エンジンの大きさや振動面です。BMW i3と同様にバイク用の2気筒レシプロのエンジンを流用し、ヤマハ製やスズキ製エンジンをトヨタ車に搭載するのが最適でしょう。トヨタ連合にはスズキも含まれ、2輪用エンジンの開発力を持ってすれば、軽量コンパクトで低騒音、高燃費のレシプロエンジンが登場することでしょう。
わざわざロータリーという市場から淘汰されたエンジンを採用する必要など無いのです。間違ってもトヨタは、ロータリーエンジンを搭載するような愚策を取ることは完全に無くなりました。
欧州CO2規制でトヨタヤリスTHSをマツダがOEM採用
2021年の欧州CO2規制強化に伴い、マツダの現行モデルでは、規制に対応できず、トヨタ・マツダのプール制によりマツダに係る罰金を軽減する対応を行っています。MX-30のEV販売も低迷し、レンジエクステンダーどころの騒ぎではなく、トヨタ製ハイブリッドをマツダ2の代わりに販売するような末期的なの状況なのです。EV市場でも淘汰された歴史のレンジエクステンダーをトヨタに供与するどころの状態ではありません。
トヨタがREレンジエクステンダー不採用のまとめ
レンジエクステンダーで先行するBMW i3は、EV車の航続距離延長により、欧州でのエクステンダー版の発売を止めました。これは、EV車単独で航続距離を延長していく事を示しています。
また、レンジエクステンダーは、30馬力程度と急坂や高速道路などの高負荷時の発電量を満たせていません。BMW i3ではユーザーからの不満から訴訟にも発展しています。あくまで緊急用途なのです。高速走行や登坂車線での速度維持のため、相応の発電力を確保するには、日産eパワーのように1.2リッター程度のエンジンが必要と理解できます。
- レンジエクステンダーはバッテリー電欠時、あくまで緊急用途に限られる。航続距離を延ばすものではない。そのために100kg超のエンジンを積むのは無駄
- 高負荷時の発電量が満たせず、圧倒的なパワー不足でノロノロ走行を強いられ危険。あくまで電欠停止を回避するためだけのもの
- レシプロエンジンに対して、燃焼効率で圧倒的に劣るロータリーは、たとえ定速回転でも燃焼効率がレシプロに勝る事はありません。
- レシプロエンジンメーカーが、本気で発電専用エンジンを開発した場合、ロータリー淘汰される運命なのは、今までの歴史が証明しています。
- トヨタからロータリーを使う公式見解は、マツダ提携時以降、全く無い状況。
マツダ製REレンジエクステンダーは、マツダにおけるRE復活として、起死回生の救世主エンジンと捉えることは大間違いです。トヨタはEV陣営から早々にマツダを除外しました。世界の潮流からも外れており、REレンジエクステンダーが早々に引退を迫られることが予想されます。
2022年に登場のPHVは別物
マツダが開発中の6気筒モデルなどのラージ商品群ではレシプロの直4エンジンとモーターを組み合わせたPHVの発売を予定しています。プラグインハイブリッド(PHV)は、エンジンとモーターで駆動します。ロータリーレンジエクステンダーの発電専用エンジンとは全く別物です。
レンジエクステンダー取り止め報道:2021/6/28
レンジエクステンダーは取り止め|日刊自動車新聞
マツダは、量産型電気自動車(EV)「MX―30」に2022年前半に設定する予定だったロータリーエンジンを発電機として使用するレンジエクステンダーを取り止める方針を明らかにした。
この正しい判断には驚きました。BMW i3REXの流れを見れば、3年遅い中止宣言でしょう。PHVはレシプロ直4と公式発表されており、駆動用ロータリーが追加搭載されることはありません。記事上、誤りと判断します。
アイコニックSPに見る将来性
マツダはアイコニックSPの市販化に向けて動き出した 毛籠社長の「ロータリーエンジン開発グループ立ち上げ」宣言を読み取る
ジャパンモビリティショーにおいては、注目を浴びた一台でした。これは、デザインに注目が集まっただけであり、ロータリー発電機の事ではないのです。
MX-30R-EVの重量増を見れば、アイコニックで、2ローター化したスポーツカーの重量スペックに幻滅することは言うまでも無いでしょう。
毎度おなじみ、マツダデザインの功績が、あたかもスカイアクティブエンジンの功績に擦り替えられた構図にそっくりの流れです。
R-EVのデメリットまとめ
レシプロよりも非効率なロータリーエンジンに出る幕はありません。
シリーズHVとしてe-powerも第二世代となり静粛性も向上し、R-EVとの比較でも、優位性はありません。トヨタ製PHEVとの比較においても、優位性は全くありません。
R-EVはレンジエクステンダーでない(50Lの大容量タンク)
基本的に家充電を行う、BEVとしての活用がメインとなります。
- レンジエクステンダーではありません。
- PHEVとしてのバッテリー容量であるため、100キロ程度で電欠となります。
- 航続距離全体では、発電エンジンの燃費性能が問われるのです。
- 50Lの大容量ガソリンタンクを搭載し、劣悪燃費は折り込み済
50Lの燃料タンクを積む性格上、PHEVとして長距離を走るシーンは、ロータリー発電エンジンによるモーター走行となります。この点で、e-powerなどのレシプロエンジンに対するメリットは全くありません。
静粛性をメリットとして掲げるならロータリーサウンドは聞こえず、メリットは全くありません。
シリーズハイブリッドとしての可能性無し
R-EVは、当初想定の電欠緊急時用途のレンジエクステンダーではなく、プラグインハイブリッドとして、通常走行を支える発電用ロータリーエンジンとなりました。シリーズハイブリッド型式は直接駆動とならないため、ロータリーの魅力をファンに届けることは出来ません。
燃費も悪く「ロータリーファンの期待を裏切るだけ」と予想されます。
この車に、REファンが求める魅力があるのか、存在意義がそのものが問われそうです。