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トヨタ「90スープラ」生産終了の理由

査定君
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トヨタが誇るスープラは、日本のスポーツカー文化を象徴するモデルです。2019年に復活したA90スープラは、BMWとの共同開発により誕生し、直列6気筒エンジンとFRレイアウトという伝統を受け継ぎました。しかし、2026/4をもって生産終了となります。本記事では「スープラ生産終了の理由」「A90スープラの販売実績」「市場の反応」「代替車」「今後の展望」までを整理します。

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スープラ生産終了の概要

トヨタは2025年、現行のGRスープラ(A90/A91型)の生産終了を正式に発表しました。これは単なるモデル交代ではなく、BMWとの共同開発契約の満了、および環境規制の強化によるコスト上昇など、複合的な要因によるものです。

現代的なデザインと伝統的なFR構造を融合したA90スープラは、トヨタのスポーツブランド「GR」の象徴的な存在でした。

最終モデル「ファイナルエディション」は限定生産とされ、これまでのスープラファンに向けた記念的存在として登場しました。

トヨタとBMWの共同設計ではなく、基本BMW Z4

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A90スープラの生産台数と売れ行き

スープラA90は2019年に発売され、オーストリア・マグナシュタイア社の工場で生産されていました。BMW Z4と同じ生産ラインで組み立てられたA90スープラは、品質とパフォーマンスを高次元で両立させたグローバルモデルとして評価されました。

その後、2021年の6速MTモデル追加により販売が一時的に回復したものの、近年はスポーツカー市場全体の縮小やSUV人気の高まりにより、販売は減少傾向にありました。

2リッター直4ターボと3リッター直6ターボのラインナップ

  • 2リッターでも十分な速さで価格も手ごろ
  • 3リッターのハイパワーは圧倒的
  • 2シーターの割り切りがネック

世界での販売台数推移

年間の世界販売台数はおおむね7,000~9,000台規模で、主力市場は北米と日本です。特に北米では、初年度に約2,800台を販売するなど、復活効果で好調なスタートを切りました。
しかし、主力の北米で販売が落ち込んだようです。これが生産終了の理由と考えるのが妥当でしょう。スポーツカーのモデルサイクルは長く、これが理由ではありません。

日本での販売台数推移

  • 2019年:880台
  • 2020年:2,650台
  • 2021年:1,000台前後(推定)
  • 2022年:690台(コロナの影響で大幅に減少)
  • 2023年:1,490台(盛り返す)
  • 2024年:約1,500台
  • 2025年:~1,200台(予想)
  • 2026年4月:生産終了

フェアレディZとの比較

一貫したデザインコンセプトのフェアレディZは、どの世代でも「Z」であると判断できます。
一方、モデル毎にコンセプトを変えるスープラは、オマージュ感に欠け、従来ユーザーへのアピールが少ない点がデメリットでしょうか。
メディアでは、「トヨタ共同開発」の文字が躍るものの、中身まんまBMWのスープラも魅力低下の要因です。

市場の声とユーザー評価

スープラオーナーや自動車評論家の間では、A90スープラは総じて高評価を得ています。特に、直列6気筒ターボエンジンの滑らかさ、剛性感の高いボディ、そして安定したハンドリング性能が称賛されました。

内装はBMW由来の高級感にあふれており、スポーティさと上質感を兼ね備えています。一方で「トヨタ車らしさが希薄」「価格に対して実用性が低い」といった意見も散見されました。

また、トヨタファンの一部からは「純国産ではないことへの複雑な感情」もあったとされます。とはいえ、走りそのものの完成度は極めて高く、国際的には「トヨタが再び本格スポーツを作った」として評価されました。

左ウインカーなど、中身はBMWのまんま

日本車として売るなら、わざわざ「右ウインカーレバー」に位置を変えて販売していましたが、BMW Z4ベースのA90スープラは、「左ウインカーレバー」のままであるなど、割り切った仕様となっています。

生産終了に至った主な理由

1. 市場構造の変化とSUVシフト

世界的にSUVやクロスオーバー車が主流となり、2ドアクーペ市場は縮小しています。高性能スポーツモデルは販売ボリュームを確保しづらく、採算性が課題となりました。

2. BMWとの共同開発契約の満了

スープラはBMW Z4と共同開発されましたが、契約期間の終了により、次世代プラットフォームへの供給継続が困難に。これが技術的・契約的に大きな要因となりました。

BMW製の直6エンジンとトヨタのチューニング技術が融合し、A90スープラは独自のキャラクターを確立しました。

3. 環境・安全規制への対応コスト

ヨーロッパや日本の排出ガス規制、衝突安全基準は年々厳格化しており、小規模な生産台数では開発・適合コストを吸収できませんでした。電動化の流れの中で、内燃スポーツカーの延命は難しくなっています。

4. 価格・収益性の問題

A90スープラは高性能ゆえに価格帯が上昇し、500万円~700万円という設定になりました。競合車種(ポルシェ718ケイマン、日産Zなど)との競争も激化し、コストバランスの面で厳しい判断を迫られました。

5. ブランド戦略としての区切り

スープラはトヨタスポーツの象徴であり続けましたが、GRブランドとして新時代のスポーツカーを開発する方針が強まり、あえて「一区切り」を設けたともいえます。ファイナルエディションはその象徴的存在です。

6. Z4というベース車両の選定を誤った

グランドツーリングカーとしてセリカXX、70、80として発展したスープラです。
BMWは、Z3というロードスターベースで、Z4に進化した形態とは全く異なるものです。
スープラのベース車両選定を誤り、従来のコンセプトを変化させ過ぎたようです。

7. 外観デザインのアクが強すぎた

フロント、リヤ共に大胆なラインで構成されており、街中での存在感は高いのですが、デザインの造形が大胆すぎた感も強いでしょう。
この点では、従来スープラのオマージュという形の方が良かったのではないでしょうか。

8. 内装がZ4よりも劣る液晶サイズであった

日本車といえば、ハイテク装備では一枚上手であるべきですが、センターモニター、ドライバーメータの液晶サイズが、本家Z4よりも小さいという、当時のチープなトヨタ製内装の悪い面を継承してしまいました。
中身は、ほぼBMWなのに、トヨタの悪い面だけを引き継ぐという、「コスパが悪い日本車」だったのです。

代替候補車両と今後の展望

トヨタGR86/スバルBRZ

軽快なFRレイアウトを継承するモデルとして人気。価格も手頃で、スープラと同様に純粋な走りを楽しめる車です。

スープラに憧れたドライバーが次に選ぶ車として、同じトヨタ内ということもあり、検討候補に挙がるかもしれません。しかし、車格が異なるだけに86に流れる例は少ないでしょう。

日産フェアレディZ

3.0L V6ツインターボを搭載し、スープラと競合するライバル車的な存在。日本製FRスポーツとして復活したZです。ライバル車だけにZに流れるケースは少ないでしょう。

ホンダプレリュード

価格帯としては、競合するものの、格下の性能と装備であるため、候補外とすべきクルマです。

BMW Z4

スープラの兄弟車であり、オープンエアを楽しめるラグジュアリー志向のモデルです。高級感を重視する層に向いています。中身は一緒でもあり、輸入車に抵抗なければ、これが一番無難な選択でしょう。

BMW 2シリーズクーペ

後席も使えるFR駆動のクーペモデルは、走りと使い勝手を両立できるでしょう。パワーユニットは、スープラと共通であり、輸入車に抵抗なければ、これも無難な選択でしょう。

ポルシェ718ケイマン

ドライバー中心の設計哲学と高い完成度を誇るケイマンも、スープラユーザーの移行先として人気。ミッドシップの運動性能の高さは随一です。ただし、価格帯が大きく異なるため、予算次第というところでしょう。

まとめ(総括)

トヨタスープラの生産終了は、単なる販売不振ではなく、時代の変化に対するトヨタの戦略的判断です。A90スープラは短い期間ながらも、自動車文化の中で大きな存在感を示しました。

トヨタは今後もGRブランドの名のもとに、新たなスポーツモデルを開発するとみられます。電動化が進む中でも、「走る喜び」を追求する姿勢は変わらないでしょう。

スープラという名は、再び新たな形で戻ってくる可能性を秘めています。その日まで、A90スープラは“現代に蘇った伝説”として語り継がれていくでしょう。