世界で9000人削減の日産の低迷原因は北米市場で売れないことが理由です。メディアでは、諸説流れていますが、本当の理由を解説します。
円安効果の判断誤りと問題先送り
偶然の棚ボタ的な円安効果
ここ数年の莫大な日産の利益は、円安効果だったと言えます。まさに110円台から160円の円安となり、空前の為替利益をもたらしました。
しかし、2024年に入ってから円高に大きく振れても「1ドルを155円のレート」で試算しているなど、あまりにも円高リスクを考えていない数字です。
日本メーカー為替レート
為替差益の利益を重視しているがゆえに、リスクヘッジ出来ていないようです。(2024/8)
- トヨタ:145円
- ホンダ:140円
- 日産自:155円
- マツダ:150円
やはり、為替による利益は、棚ボタ的な季節ものと捉えるべきだったのでしょう。
販売台数推移(全世界)
- 2021年度:382万0543台
- 2022年度:330万5000台(14.7%減)
- 2023年度:344万台(4.1%増)
- 2024年度上半期:153万2501台(7.8%減)
円安利益で問題の本質を先送りした
- 2022年から続いた超円安の加速効果、莫大な円安利益
- コロナからの一時的な販売回復、在庫解消効果
上記2点の相乗効果、外的要因の利益押上げ効果が、棚ボタ的利益に繋がりました。
結果的に、経営計画を麻痺させてしまった可能性が高いでしょう。
楽観的な計画見込みという大失敗
数年後の販売低迷が、現場では予測されていた可能性が非常に高いでしょう。
しかし、2023年度の円安、コロナ後の回復が、あたかも経営が上手くいっている感を演出してしまったのです。
そして楽観的な円安、販売台数上昇的な計画に繋がったのでしょうか。
中国市場は早々に撤退もあり
フル電動車では全く歯が立ちません。e-Powerも手遅れだとすれば、中国市場の予算達成は難しく、早期の撤退も視野にいれるべきでしょう。
北米はハイブリッド絶対主義ではない
マツダの主力は未だにCX-5
ディーゼル嫌いの北米においては、ガソリンメインです。それもNAエンジンと6ATが主体というのが、スモールとラージのモデルラインナップです。
CX-50でトヨタ製ハイブリッドを搭載したものの、販売実績として、全体をリードするレベルではないのです。
マツダの場合、魅力的な内燃エンジンは無く、鼓動デザインが全てであると言えます。
スバルの人気SUVにハイブリッド無し
クロストレック、フォレスター、アウトバックにストロングハイブリッド搭載車は一台もありません。スバルの場合も、ハイブリッドが牽引しておらず、それは車としての出来の良さが全てであると言えます。(今後のトヨタ製HEVを除き)
ハイブリッドが無いから低迷説は誤り
北米ではハイブリッド車の支持が高くなっているものの、スバルやマツダを見れば必須ではありません。日産も純内燃エンジンモデルでの展開をしており、HV必要説は誤りです。
ただし、日産車の商品力が落ちたことが北米販売低下に結びついたため、その点がスバルやマツダと異なる点です。
e-Powerを投入していれば、販売数を維持できたのかは難しいところでしょう。
最新e-Powerは高速域もOK、直結推奨の評論家とか
e-Powerのエンジンは発電に特化したシリーズハイブリッドです。トヨタ・ホンダのパラレルハイブリッドは、エンジンを駆動にも利用(直結)するものです。
高速域燃費は、発電専用エンジンのe-Powerは不利だと言い切る評論家の発言が誤りである理由を下記に解説します。
引用:ベストカー
国内WLTC(高速道路)平均56.7km/h、最高速度97.4km/h
高速域はエンジン直結モードになるe:HEVのフィットと同等レベルを確保しているe-Powerです。
某評論家の発言とは全く異なることが分かります。よって、直結方式HEVが必須ではありません。
欧州では10万台突破のe-Power
欧州日産は2024年1月29日に、欧州市場でのe-POWER搭載車の販売が10万台を突破したことを発表した。
アウトバーンを含む欧州でe-Powerが販売を伸ばしている事実は、高速領域での不満が少ないこと明示しています。当然、欧州に比べれば速度域の低い北米で、高速領域で不足など発生しません。
そもそもe-Power用の発電専用エンジンであり、トヨタ製HEVなどの発電と駆動を兼用するエンジンよりも、エンジン効率の最適化が図れることは言うまでもありません。
某評論家の発言とは全く異なることが分かります。よって、直結方式HEVが必須ではありません。
欧州キャッシュカイe-PowerとRAV4-HEVの超高速域燃費比較
WLTP Extra-Highモード:約131km(欧州のアウトバーンを想定した燃費計測)
e-Powerの方が内燃効率とパワー不足を解消した新型エンジンですから、超高速領域において、エンジン直結のRAV4HEVよりも燃費が良いという結果です。
(l/100km:数字が大きいほどガソリン消費量が多い)
某評論家の発言とは全く異なることが分かります。よって、直結方式HEVが必須ではありません。
キャッシュカイ e-Power
引用:https://www.citymotors.ee/
RAV4 HEV
引用:https://www.wltpinfo.com/※CO2:Combined欄参照
過去のEV推進が失敗だったのか
日産リーフ登場時点、世界のトップスリーに位置していました。
このまま日本国内でもFCEVの水素燃料電池や、HEVに一極集中せず、未来の救世主はBEVであるという政府方針としていれば、ここまでEV出遅れになることなどありませんでした。
これは、「FCEV重視・BEV軽視」という非常に誤った日本の施策に日産が巻き込まれ、せっかくの先進技術を埋もれさせたと言えます。日産は、FCEV迷走策による一番の被害者なのです。
少なくとも韓国車は、FCEVを売りつつBEVにもHEVにも力を入れており、これが本来の全方位戦略と言えます。
自動運転は無駄なの投資なのか
スバルアイサイト、ホンダセンシングなど、各車の自動運転システムは、全メーカーが取り組むべき技術であり、日産プロパイロットは無駄な投資ではありません。
これは、電動化と並行して、次世代自動車を販売するために欠かせない技術と言えます。
ただし、今後はホンダ側と協業するなど、大胆なコストダウンは避けられないと思われます。
マーケット別に投入車種の選定ミス
日本向けデザインの方が、ブサイクだったり、海外向け専用モデルを導入すれば、売れるの確実と思われる車も多いでしょう。
一方、「隣の芝生は青い」ケースも多いようです。それは、ネットニュースが海外向けニューモデルをそのまま流すのが理由です。デザインがアメリカンテイストであったり、サイズが大きすぎたり、難しいケースも多いでしょう。
日本向けの選定ミス
バブル期以前のフルラインナップとして、トヨタと日産が張り合う時代は終わりました。過去の歴史を継承することには無理があるでしょう。
ただ、海外向けのモデルの中にも、日本向けにも通用しそうなモデルも多くあります。
限られた資源を有効活用し、グローバルモデルと日本向けモデルの選択もイマイチ感が漂います。
- 北米アルティマ
4.9m・1.85mのサイズ、12.3インチモニターなど、スカイラインよりもマシです - 北米セントラ
- 北米バーサ
- 北米QX50
特にSUVなら、過剰ラインアップで日本に投入しても良いでしょう - 北米QX30
- 欧州キャッシュカイ
- 欧州ジューク
デザインが失敗なのか
近年の日産において、ホンダのような失敗デザインは少ないように思われます。
万人受けかと言われれば難しいところですが、いかがでしょうか。
デザイン暴走による失敗事例は、むしろホンダの方が根が深いでしょう。
日産ノート・オーラ後期型は失敗ではない
この後期型を失敗とする一部評論家もいますが、販売実績的にベストテン圏外にずり落ちておらず、ホンダフィット(前期後期)の販売実績は比べ物にならない点がポイントです。
9000人削減策は有りなのか
微妙な経営施策の結果、とばっちりを受けた従業員にとっては、経営側のリストラが最優先されるべきでしょう。ただ、今までのツケはグループ全体でカバーしないと全体が傾くレベルなのでしょう。
ホンダや銀行、ファンドが手を差し伸べる段階に来ている可能性も高いです。
日産の9千人削減、赤字低迷の理由、復活の鍵:まとめ
意味不明な一部評論家のメディア論調をまとめると以下の通り
- e-Powerは高速域でパワー不足、HEVは直結方式が有利。→誤り
- 北米HEVの投入が遅れた。→誤り
低迷の真の理由は以下の通り
北米は、まだまだ内燃でも売れる市場なのです。単に日産の現行モデルが売れなくなっただけです。
未だに純内燃車主体のスバルやマツダが売れている状況と異なり、北米日産モデルの商品力低下が、その理由です。
e-Power導入で商品力のアップには繋がりますが、抜本的な改善に繋がるのかは未知数です。
近年、全くブサイクな日産車ではありませんが、デザイン面で最近の日産車がユーザーに支持されていない理由かもしれません。
また、北米に特化したアメリカンデザインも多少、見直しの余地があるかもしれません。
グローバルで好調なモデルを未投入地域へ展開すべき
欧州キャッシュカイなど、北米や日本でもすぐ売れるであろう車も多いのですが、グローバルカーとして、柔軟な生産・販売体制を敷かなかった責任が重いでしょう。
デザインだけで持っているようなマツダと違い、VCターボやe-Powerなど内燃・電動化として低燃費の技術力、商品力は十分ある日産です。
それを生かせていないマーケティング戦略・舵取りの失敗が、全でてしょう。
日産ファンとして、早期の復活を願いたいというまとめになります。