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ホンダのEV戦略、電動化は失敗なのか

査定君
査定君

ホンダは、早急にEV電動化戦略を舵を切っています。その戦略は成功するのか、失敗するのか、今後のホンダの動向を解説します。

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ホンダのEV、電動化戦略の概要

Honda「2030年ビジョン」

「すべての人に、『生活の可能性が拡がる喜び』を提供する」というステートメント。この実現に向けた大きな柱となるのが、二輪車・四輪車それぞれの電動化です。

電動化を実現するバッテリーの調達の多角化

北米ではGMとの計画が白紙に(2023/10)

ホンダの三部敏宏取締役代表執行役社長は、米国のゼネラルモーターズ(GM)と共同開発する量販価格帯の電気自動車(EV)の市場への投入計画を中止を発表。

プロローグなどの共同開発を先行実施した結果、メリットが無いと判断した結果でしょうか。今後は、多額の開発費がかかるプラットフォームもホンダ独自開発となります。

ただし、すでに進めている協業車は継続

GMのリチウムイオン2次電池(液系電池)「Ultium(アルティウム)」を搭載したプラットフォームをベースに、外観デザインも内装デザインもホンダが手掛けた。(2024登場予定)

  • ホンダ・プロローグ
  • アキュラZDX

中国ではCATL

(Contemporary Amperex Technology:車載電池で世界最大手)との連携

日本ではエンビジョンAESC

軽商用EV向けバッテリーをエンビジョンAESCから調達します。

ニデックの電動アクスル

旧日本電産では、モーターと減速機、インバーターを一体化したイーアクスル(EV用トラクションユニット)を市場に投入予定でしたが、現時点は赤字のようです。

自前での研究開発

 GSユアサとの協力会社で高容量・高出力なEV用リチウムイオンバッテリーを開発するほか、2024年に全固体電池の実証ラインを立ち上げ、2020年代後半に投入されるモデルへの採用を目指します。また、EV用バッテリー研究開発会社である米・SES社へ出資し、半固体電池(リチウム金属二次電池)を共同開発するなど、様々な手段で技術進化へのチャレンジを継続してまいります。

ホンダeの生産中止

約3年間の総販売台数は、日本で1800台弱、欧州で約1万2000台となり、2024/1に生産中止となりました。スモールコンパクトBEVとして、ホンダらしさはあったものの、商品力の魅力が足りなかったという結果です。(日々の近距離用途は十分ですが、航続距離の短さについて理解が得られなかったようです)

ホンダと韓国LG提携

ホンダが韓国LGと合弁、米国にEV電池工場|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

ホンダは韓国LGエナジーソリューションとの合弁による電気自動車(EV)用リチウムイオン電池工場を米国オハイオ州に建設する。約2200人の新規雇用を見込む。合弁会社の最終的な投資額は44億ドル(約6440億円)となる見通し。2023年初頭に着工し、24年末までに完成。25年に量産を始め、全量をホンダの北米工場に供給する。

LGESは、米GMとの合弁実績もあり、米国での生産についてはリスクが少ないのかもしれれません。
ただ、日本のユーザーにとって韓国のメーカーとの提携はショックが大きいと思われます。

提携比率のリスク

合弁会社の出資比率はホンダが49%、LGESが51%。電池は両社で共同開発し、全量をホンダの北米工場向けに出荷する。

この提携比率も過去に、痛い目にあったホンダの経験則・教訓が生かされていない。
過去、技術だけ持っていかれた経験から、韓国メーカーだけは除外するなどの社内ローカルルールは存在しないのでしょうか。生産国が米国内だけに、法的な権利も一定守られるとは思いますが。

今後の予定

ホンダは米国で24年に、GMが開発してLGESとの合弁で生産される電池「アルティウム」を搭載したEV2車種を発売する予定。今回のホンダとLGESとの合弁工場で生産する電池はこのEV2車種以降への搭載となる。

すでにGMとLGESでの生産分では足りず、ホンダとLGESで追加生産を行うイメージ。
その後、GMとのEVプラットフォーム計画が白紙撤回(2023/10)となり、バッテリー調達部分だけが、残るのかは、今後の動向に注目です。

地産地消

ホンダは26年には独自で開発するEV専用プラットフォーム(車台)によるモデルを発売する計画で、40年には世界で販売する全ての車両をEVと燃料電池車(FCV)にする方針を掲げている。

ホンダはリチウムイオン電池の調達において、現地国での生産・販売を前提する地産地消を進めているようです。

  • 日本:エンビジョンAESC(神奈川県座間市)
    日本の日産自動車とNECなどの合弁会社だったオートモーティブエナジーサプライは、中国の再生エネルギー大手の遠景科技集団(エンビジョングループ)の配下です。
  • 中国:寧徳時代新能源科技(CATL)
  • 米国:ホンダとLGESの新工場

ホンダeは、パナソニック製

ホンダeのリチウムイオンバッテリーは、これまでのホンダのEV開発の流れを踏襲するかたちで、容量型ではなく出力型の特別仕様としてパナソニックと共同開発をしたものです。

ホンダの電動化戦略の明暗

FCEVの生産中止

FCVクラリティの水素燃料電池車の売れ行き不振で、生産中止となり、後継モデルは登場していません。MIRAIの二世代目トヨタと異なり、ホンダクラリティの低迷から市場からは撤退しました。
2024年、性能向上を図った試作車FCEVが登場しています。
ホンダクラリティの販売実績を見れば、乗用車向けとしての販売は全く見込めません。
乗用車以外でも利用可能な汎用FCEVユニットでの展開を計画しており、そのプランが現実的でしょう。

CR-V:e:FCEVの投入(2023)

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既に出遅れたEV車(ホンダe)

欧州CAFE規制の対応目的が優先されたホンダeです。小さなボディと約35kwhの小さなバッテリーは、短距離移動を意図したもので、航続距離の長さが重視されるBEV市場において、理解は得らなかったようです。デザインなどで高評価なものの、発売時期や販売台数にホンダの勢いは見られません。

無謀なホンダのEV販売シェア未来予想図

日本の電力環境だけでなく、世界的にもかなり厳しいと予想されるでしょう。
今のEV車への買替状況や充電インフラ、使い勝手の悪さなどとても内燃エンジン車から気軽に乗り換えるレベルに達していません。
特に2030年の到達率は、最近のエネルギー不足も重なり、絵に描いた餅になりつつあります。

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ホンダEV・電動化戦略は失敗か

日本の自動車メーカーとしては、BEV投資の動きが目立っているようにも見えます。
単にBEV関連の要となる投資や協業を行っただけで、世界市場におけるホンダ製BEVの出遅れ感は、トヨタと変わらず老舗自動車メーカーとしては「EV出遅れ」感が拭えません。
BEV開発の弱さが全面に出てしまっており、EV戦略として「ホンダの個性が発揮できない」ことは、結果的にホンダEV戦略の失敗に繋がる恐れもあります。

米GM社とのBEVプラットフォームの協業化は白紙に(2023)

以下の計画は、全て中止となり、ホンダ自社開発となります。

  • ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)は、量販価格帯の電気自動車(EV)を共同開発し、2027年以降に世界で発売する計画。BEVプラットフォームの共通化も実施。
  • 新開発するEVの価格は300万円台からとなる見通し。
  • ホンダはこれまで北米限定だったGMとの提携関係を世界に広げ、電動車シフトを加速する。

韓国LGエナジーソリューションとEV用電池を生産する合弁会社を設立

米国オハイオ州へ建設。投資額は44億ドル(約5900億円)は無駄になるのか、今後のEV化に無くてはならない存在なのか。

ジーエス・ユアサコーポレーションと合弁でEV用電池工場を建設

滋賀県への工場建設。投資額約4300億円(うち約1600億円は補助金)、今後のEV化に無くてはならない存在なのか。

半導体の安定的確保に向けての協業

世界最大の半導体ファウンドリー(受託製造会社)、台湾積体電路製造(TSMC)と協業

まとめ:ホンダEV戦略は失敗か

バッテリー調達では、出遅れ

GMとLGESの合弁企業が背景にあり、すでに米国の自動車生産に深く入り込んでいる流れの延長線にあります。(米国内の生産が必須)
すでに日本の電池メーカーで、実車に即応できるのは、パナソニック(テスラ・トヨタグループ向け)ぐらいであり、生産能力も限界のようです。
ユアサなど他の電池メーカーもEV搭載用バッテリーとしての能力は無く、もはや他の国内電池メーカーが韓国や中国に立ち向かえる状況ではないようです。

現時点で、ホンダ社内製での製造は厳しく、他のサプライヤーとの協業体制を構築中となっており、コスト面での優位性を出すには時間が掛かるという現実を理解する必要があるでしょう。

ホンダオリジナルの欠如

やなり、巨額のBEV開発費をホンダ単独では補えない事情もあります。トヨタのハイブリッド一本化主義、FCV(水素燃料電池車)の失敗により、BEVが後回しになってしまっていたツケが、他社協業というホンダとしては屈辱的な状況に追い込まれているのです。
中国市場や欧州市場でも存在感が無くなりつつあり、残る米国市場でGMとのBEV協業車に活路があるのか、BEV戦略として失敗かどうかの正念場となっています。

まだ失敗と言える段階ではない

FCEVやハイブリッド車に傾注してしまったため、現時点では、BEVに出遅れた感が漂います。
あと数年は、最新ハイブリッド車としての魅力を保持できますが、今度の電動化路線、BEV車は、厳しい戦いを強いらそうです。
近年、電動化の施策の発表内容は、現実味がないものが多かったのですが、上記コンセプトカーも登場してきており、今後の展開が期待できそうです。
まだまだ、失敗と言える段階ではないという、まとめとします。