eパワーの開発担当者はeパワーの決定的な弱点を100%認識していたが経営陣は「全く問題ない!」
というネット記事の誤りを指摘します。
日産がe-Powerを北米投入しなかった理由
そもそも、アメリカでスバルやマツダを見れば、ハイブリッド車がなければ売れない訳ではありません。スバル、マツダも決して燃費の良いとは言えない純内燃エンジン車が主力車として売れています。
投入しなかった理由は内燃で十分だったから
モデルラインナップとして、選択肢が狭い点ではマーケティングのミスとも言え、電動化の最新モデルを北米にも全投入すべきでしょう。その判断を行わなかった点に疑問が残ります。
世界市場のe-Power投入状況
- 中国市場では2021年9月に『シルフィ』に初めて搭載
- 現在は『エクストレイル』にも採用を拡大
- 欧州2022年9月:エクストレイル、『キャシュカイ』より採用を開始
- 2024年1月:e-POWER搭載車の販売台数が10万台を突破
- 日産は2026年度には北米市場にもe-POWERを投入予定
北米は電動化必須じゃない
テスラが思い浮かぶ方も多いのですが、カリフォルニア州などの一部地域を除き、北米全体では電動化規制がそれほど厳しくありません。また、欧州や日本のように燃費の良いディーゼル車も好まれません。広大な北米市場を移動するため、ガソリン車が好まれます。
ピックアップトラックなど、GMやフォード車も良く売れており、必ず燃費の良いハイブリッド車だけが、ユーザーに好まれる傾向ではないのです。
欧州向けX-TRAILを北米に投入しなかった理由
欧州市場は、CO2規制が厳しく電動化対応が進む
欧州の高速道路「アウトバーン」における速度無制限区間では、推奨巡航速度は時速130km/hとされています。
アウトバーンの速度域に見合うだけの性能を備えたe-Powerのエクストレイルやキャッシュカイが欧州市場に投入されています。すでにe-Power搭載車は、10万台を超える販売台数を達成し、実用性と人気の高さを表しています。
北米戦略を誤ったのか
一方、スバル、マツダ車を挙げるまでもなく、北米では規制が緩く、内燃エンジン車や大排気量エンジン車が、まだまだ売れる傾向です。
そこで北米市場において、日産は内燃エンジンのローグ販売を継続したということです。
ただし、内燃のみとした判断は、ラインナップとしてユーザーの選択が限られ、販売機会を逃し、遅すぎる(誤り)とも言えます。
では、e-Powerを投入すれば売れたのか、ローグは販売を維持できたのでしょうか?。これは推測のレベルに過ぎません。スバル、マツダを見れば、そこに原因を求めるのも無理があるでしょう。
日本のメディア記事通り、ハイブリッド車が売れるのか
北米低迷理由は、e-Powerの投入が遅れたとする記事は誤り
2024年第三期比較では以下の実績ですが、他メーカーに比べて突出して悪化している数字ではありません。この数字からローグの大量在庫とする記事は言いがかりに近いでしょう。
Nissan Group reports 2024 third-quarter U.S. sales
BRAND/YEAR | 2024 | 2023 |
---|---|---|
Nissan/Divisionsales | 197,528 | 200,334 |
INFINITI/sales* | 14,540 | 16,544 |
Calendar_year-to-date(units) | 701,524 | 697,049 |
Nissan_Division_sales | 658,957 | 648,219 |
アメリカの高速道路よりも欧州の方が速いが
制限速度75マイル(約120km/h)区間が多く、新東名のようなもの。この速度域になるとハイブリッド車の意味なし!
アウトバーンで、e-PowerのX-trailを販売している実績や、日本での高評価をふまえれば、120km区間燃費の悪化だけにフォーカスを充てる意味はないでしょう。
世界共通規格として、WLTP燃費値で語ればよく、低中速域での静音・パワーなどの評価が高いe-Powerが超高速域のデメリット面だけで、北米評価を下げるとは考えられません。
欧州版e-Powerの存在を知らない評論家
欧米規制では、EXTRA-HIGH(131km/h)というWLTP燃費モードが存在し、公開しています。
この数字を見る限り欧州版e-Powerエクストレイルの燃費は、RAV4ハイブリッドに比べて、劇的に悪い数字ではないでしょう。
北米版の2.5Lローグエンジンをe-Power化するとか、大手メディアに掲載する内容としては凄すぎますね。(その信憑性に疑問を抱かせる内容です)
欧州仕様WLTPのX-Trail主要諸元
世界規格のWLTP燃費
WLTP燃費計測は、低速、中速、高速、超高速の4つのフェーズに沿って走行します。各モードの燃費も表示されるため、車の使用環境に合わせて燃費の比較がしやすくなっています。複合燃費は4つのフェーズの平均値となり、超高速(Extra Highの約131km/h)の燃費計測値が含まれ、アウトバーンを含む高速走行の実測に近い数値となっています。
過去、JC08規格40km/Lのプリウスが「実測値がたったの20キロ台前半の燃費だった」ことを考えれば、WLTP値は日本のWLTC(超高速を除く)よりも実態に見合っていると言えるでしょう。
エクストレイルの欧州WLTP複合燃費
X-Trail 欧州仕様e-Power主要諸元 |
|||
座席数 |
5 |
7 |
|
駆動輪 |
2WD |
e-4ORCE 4WD |
|
最高出力(PS) |
204 |
213 |
213 |
最大トルク出力(Nm) |
330 |
F 330 |
F 330 |
WLTPのCO2排出量合計 (g/km) |
131 – 134 |
143 – 145 |
146 – 148 |
WLTP複合CO2燃料消費量 (l / 100 km) |
5,8 – 5,9 |
6,3 – 6,4 |
6,4 – 6,5 |
最高速度 (km/h) |
170 |
180 |
180 |
0-100 km/h (秒) |
8,0 |
7,0 |
7,2 |
トヨタRAV4 2.5ハイブリッド4WD欧州仕様WLTP複合
エンジン駆動直結のRAV4が良い数値をマークしていますが、超高速域の燃費悪化は内燃エンジン車でも悪くなることに変わりありません。
市街地も含めたWLTP複合燃費で判断すれば、欧州市場向けe-Powerが劇悪燃費で投入できないほどの状況にならないことが判断できます。
LOW | MID | HIGH | EXTRA HIGH |
WLTP複合 |
5.5 | 4.9 | 5 | 7.2 | 5.8 |
ホンダ・日産の会話は始まったばかり:まとめ
トヨタ・ホンダのHEV方式は、内燃エンジンが発電と駆動の両刀使いであり、広範囲なエンジン特性が求められます。
一方、e-Powerは、発電専用のためエンジンの燃焼領域・燃焼効率を発電に特化させることができます。(内燃の燃焼効率を求めるならシリーズハイブリッドが有利)
少なくとも欧州で販売している実績をふまえれば、北米で使えないとする評論家意見に対して、読者の多くが疑問を抱くのではないでしょうか。
低中速の速度圏ではe-Powerが合う
ホンダフィット、ステップワゴンより、日産ノート、セレナの「e-Power」が売れており、低中速域の速度圏では、日産車も一定支持されていると言えます。
システムがシンプルな点もCO2規制強化を見据えたPHEV化に向いています。
規制強化のPHEV化時点で、パラレル方式が淘汰される可能性
世界のCO2規制強化の数値が進展すれば、ストロングハイブリッドですらクリアが厳しい燃費規制です。よって、PHEV化でしかクリアできない数値なのです。
純BEV駆動領域が増えてくると内燃直接駆動方式は、超高速域のメリット以外、存在意義が無くなってくるのです。
この点を日本のメディアは一切報じませんが、ホンダも日産も、その先の規制強化を見据えた電動化施策なのです。
将来像はまだ未定
ホンダと日産について、営業利益を増やし、雇用を維持していくためには、少なくとも数年は、ブランド体系を維持した形での経営改善が必要でしょう。
また、世界のCO2規制強化による電動化に対して、HEV勝利宣言は全くの時期尚早であり、経営計画を失敗断定するメディアに誤りがあるでしょう。
BEV低迷により「CO2規制強化のちゃぶ台返し」が本当に実施された場合、電動化から内燃温存に大きくシフトします。
しかし、欧州や中国の状況を見る限り、日本のメディアの勝利宣言は長続きしない感が強いです。
- 将来的にHEV温存のCO2規制柔軟化が実施されるなら、e:HEV片寄せ
- 将来的にHEV淘汰のCO2規制強化継続なら、e-Power片寄せ
が方向感として効率的であるとする「まとめ」とします。