世界では、水素自動車や水素燃料電池車はオワコンとされています。
欧米ではバッテリーEVが先行し、トヨタ製MIRAIがプリウスのように売れている気配は一切ありません。水素オワコンにより普及しない理由を解説します。
EVの出遅れ理由はFCV
トヨタは、2014年に燃料電池車(FCV/FCEV)が、脱炭素社会を担う未来の主役であるとのロードマップを描きました。しかし、欧米中韓の主要自動車メーカーは電気自動車を選びました。
結果、高コストで普及しないとトヨタが見込んだ小型車EV、普通車EVが圧倒的なスピードで世界市場での普及が進んでいます。
その結果、EV開発と市販化に出遅れたことが理由となります。
トヨタが内燃エンジンをベースとした企業城下町の温存を優先した結果、トヨタ以外のメーカーも電動化に本腰をいれておらず、世界のEV化の流れから、周回遅れにされた感が拭えません。
ハイブリッド車成功体験がFCVを救世主に据えてしまった
日本製ハイブリッド車世界一の思想が形成
- 大型車は、FCV
- 中小型車は、HV
- 超小型車のみ、BEV
というトヨタ雇用体系に都合の良いシナリオが描かれ、そのロードマップが施行された。
欧米メーカーは、ダウンサイジングターボとPHEV/BEVの二本立てによる燃費効率化を進めた。
しかし、そのロードマップは見事に外れ、出遅れとなったのは皆さんご存じの通りです。
政府主導の施策が失敗
日本の経済産業省は50年までのネットゼロエミッション達成で水素が鍵を握るとの考え方から、トヨタによる水素燃料電池車の追求を支持している。政府は35年までに乗用車新車販売でハイブリッド車を含む電動車100%を実現するとの目標を掲げている。
経済合理性を無視した水素
以下、100km走行に必要な電力量(144kwh vs 714kwh)です。
グリーンエネルギーが発電元であり、将来の技術革新が入り込む余地は全くなく、FCVの優位性を語る価値すらないように思います。
- 水素製造時に大量の電力を使用する
(現在1Nm3の水素製造に最低でも5kWhの電力投入が必要であることから、
電力代だけで100円/Nm3を超える可能性も ) - 水素の超高圧圧縮(700気圧)の圧縮・膨張抑止の保管・充填に大量の電力を使用する
(38.7kwh~46.1kwh相当。その量は300キロのBEV走行に相当)
10年経って間違いを認めない直さない姿勢
水素スタンド数が200基以下(2022)の状況を見れば、明らかに失敗です。
軌道修正もしない、メーカー言いなりの政府に失望感が漂います。
日本は電気自動車で世界のトップレベルだった
- 2009年:三菱自動車i-MiEV(軽自動車EV)
- 2010年:日産リーフ
- 2012年:トヨタRAV4EVの市販化(テスラと共同開発)
日本は、2014年まで電気自動車の販売ランキングでは世界のベスト3に入っていました。
世界の充電プラグ規格シェア
2010年に日本の自動車メーカーが電気自動車における直流の急速充電方式として、EVコネクターの規格や充電方法、通信方法を「CHAdeMO」協議会で統一したものです。
2014年には電気自動車用急速充電規格の国際標準として承認されており、当時は「チャデモ」が世界のトップシェアだったのです。しかし、2018年には、シェア7%と世界における日本発規格のチャデモは、存在感の欠片も無くなってしまったのです。
2010年代前半、世界は電気自動車を始めたばかりだった
- 2008年:中国BYD F3DM(プラグインハイブリッドカー)
- 2010年:中国BYD電気バスのKシリーズ(リン酸鉄リチウムバッテリー)
- 2012年:テスラモデルS発売
- 2013年:BMW i3発売
2014年時点、日本車EVは、性能面で世界のトップクラスであったと言えます。
VWディーゼルゲート事件がEV車シフトの要因ではない
2015年9月のVWグループによるディーゼルゲート事件がキッカケとなり、ディーゼル車を止めてEV化にシフトしたような日本国内のメディアの論調が多いのですが、正しくありません。
前述の通り、欧州メーカーは、電動化を見据えた対応を早くから実施していました。
- 2000年代後半:欧州製HEV車をモーターショーで多数出品、市販化。欧州における高速域では日本型HEVは燃費悪化とパワー不足が判明。これにより、2010年代中半には内燃車のHEV車は全て生産中止。
- 2010年代前半:EV・PHEV化へシフト。2013~2018年で主要メーカーが全てEV車やPHEV車の市販化達成
- 2013年:トヨタとBMW提携に至るも、BMW側はトヨタ製THSを一切採用せず
- 2022年:ルノー製ストロングハイブリッドも市販化
上記が欧州事情となります。
2014年、燃料電池車MIRAIを救世主に据えた
トヨタが、電気自動車よりも燃料電池車が、未来を救う車とした理由とは
- 燃料の補充に3分程度
- 燃料代は、ガソリン程度
- 燃焼時にCO2を排出しない
- 電気自動車よりも自動車メーカーとしての優位性を確保できる
MIRAI(FCV)の販売台数は超低空飛行が続く
2025年、2030年の目標は全く達成できないと誰もが認識する販売台数となっています。
水素スタンド設置数(2023/12)
国内設置実績たったの161か所です。まさにインフラ軽視、クルマを売る事だけを目的化し、ユーザーの利便性や経済性を全く無視したFCV施策です。2025年の目標値が泣かせます。
2代目のMIRAIは、さらに低迷
2代目MIRAIは、初代MIRAIの欠点を解消したモデルです。それをベースとしたクラウンFCEVも全く売れない超低空飛行です。これが普通の市販車ならとっくに廃止モデルになりますが、失敗を認めたくない意地で売ってます。2025年の目標値20万台が泣かせます。
メーカーと国の思惑が外れ、机上の空論と化した水素
内燃エンジンの雇用体制維持しつつ、FCVへのスライドを意図したメーカー要望と省庁の思惑は、机上レベルの試算の段階で崩壊していたのです。それを推進し、さらに補助金を大量投入した結果が、この普及率です。FCV自動車技術だけが先行し、水素インフラが全く追いついていない点では、電気自動車を非難する段階にないレベルです。
EV普及が結果として遅れた
FCV推進は、国内の電気自動車普及の妨げになっているのです。
FCVはオワコンなのか
政府とメーカーが一体となったFCV施策の失敗
水素スタンドの設置は、5~6億かかると言われており、数千万のガソリンスタンドに比べてあまりにも高く、水素スタンド数は、国内200基以下に留まっています。
その間、BEV充電スタンド数は、国内2万基と100倍の差がついてしまいました。
車両価格、水素スタンド数も普及とは程遠い状況です。
2021年9月終了モデルのHonda「クラリティ FUEL CELL」が決定打
ホンダのFCVモデルが生産を中止したことで、国内メーカー製は、トヨタMIRAIのみとなってしまいました。2010年代に描いた、燃料電池車の未来予想図は、完全に絵にかいた餅となったようです。
海外のFCVは、カタチだけ
ヒュンダイのFCVは、欧州でトヨタMIRAIよりも売れている状況です。
また、欧州の自動車メーカーも日本のFCV技術をマルチソリューションとしてアピールしたいようです。BMW iX5などのトヨタ製水素スタックを搭載したFCV試験モデルも登場していますが、水素スタンドなどのインフラ未整備がネックとなり、本気で市販化に向けて取り組む勢いが感じられません。
政府と一体になったFCVの施策が裏目に
2014年の未来予想図として、EVは小型車専門であり、メインストリームをHEV/PHEV、上位をFCVとするロードマップを描いてしまったのです。
これ以降の、悲惨なEV出遅れの状況は、このFCV施策が理由になるのです。
FCVは大型車に特化する方向か
すでに乗用車での普及が、ほぼオワコンの状況です。
もはや、残された道は、大型車BEVとしてはデメリットが多いトラックやバスの領域でしょうか。
トラックやバスの大規模ステーションでの維持コストを下げ普及に繋げるのが先決でしょう。
CASEと電池でも出遅れ
自動車産業全体で進むのは「CASE」と略される「C(Connected = インターネットと車両の接続)A(Autonomous=自動運転)S(Shared Service=シェアリング)E(Electrification=電動化)」の取り組みです。
この分野でもGAFAなどのIT勢だけでなく、欧米中のメーカーによる先進的な事例が多く、日本メーカーの総合的な競争力の低下が目立つところです。
全固体電池は救世主でもない
既存のバッテリー高性能化、コストダウンのスピードに追い付けそうにありません。
HEVはオワコンが確定
HV(ハイブリットビークル)、HEV(ハイブリッドエレクトロニックビークル)車は日本の独壇場となっています。しかし、世界のCO2規制ルール(欧州、米国、中国、他)は、CO2排出量の規制強化を進めています。
2025年以降の規制値によっては、トヨタ製ハイブリッド車も未達のモデルも多く発生してくる状況となり、新車販売が出来なくなるのです。
日本には、HEVがあるから当分大丈夫、HEVの技術はすぐBEVに転用できるといった意見は脆くも崩れ去っているのが現実です。
BMWのFCV試作車への過度な期待
電動化を推進するBMWからFCV試作車のニュースが流れたことで、FCVに明るい兆しが見えたと判断する記事が散見されますが、トヨタが正しかったとの判断は全くの誤りです。
- 2006年:BMWハイドロジェン7で、水素エンジン車を試験走行するものの、早々に撤退
- 2013年:トヨタとBMWの提携により、水素燃料電池車の技術をBMWへ供与
- 2015年:BMWのBEVとのトヨタのFCVの技術協業により、BMWのFCV試験車両完成
上記から数年が経過していますが、BMWの市販化はまだ先の話です。
すでに、日本車や韓国車のFCVは、欧州で市販済にも関わらずです。
BMW製FCVは、信頼のトヨタ製がベースですから、市販化はすぐにでも可能にも関わらずです。
なぜ、BMWが一向に市販化に踏み切らないのでしょうか。FCV車の普及が一向に進まない欧州事情を見れば、環境対策向け広報活動と判断するのが妥当でしょうか。
日本車潰し陰謀論で、EV出遅れを正当化する日本メディア
- 欧州の日本車HV潰し陰謀論は、日本のハイブリッド車に追いつけないからだ
- VWのディーゼルゲート事件を隠すためのEV車シフトだ
トヨタ車HVを全て潰したところで、シェアは微々たるもの。何の脅威でもありません。トヨタPHEV車では全くシェアを取れておらず、既に周回遅れの様相です。
EV出遅れを正当化する日本メディアこそ、日本の周回遅れを後押しし、オワコン確定・日本自動車産業を衰退に導く疫病神なのです。
水素の販売価格値上げがオワコンの決定打
水素燃料電池車のコスト
- トヨタMIRAI:走行100kmあたりの水素使用量「0.9kg程度」
- 変更前:1650円 × 0.9 = 1485円(走行100kmあたりのコスト)
- 変更後:2200円 × 0.9 = 1980円(走行100kmあたりのコスト)
リッター9km(168.3円/Lとした場合)
- 100km ÷ 9km × 168.3円/L = 1980円(走行100kmあたりのコスト)
- ひと昔前の一桁燃費並みの高コストとなり、水素燃料電池車(MIRAI)の存在価値は無くなりました。
オワコン水素が普及しない理由:まとめ
日本でも、日産リーフでトップシェアを確保していた2014年。
2010年代、世界のEV化とFCV失敗の変遷
- 燃料電池(FCV)を内燃エンジンの次の主役に据えてしまった。
- スタンド整備に5億円のコストは国頼みのコスト度外視
- FCV車の補助金は、BEVの比ではない
- 政府もEV推進策が手薄になり、世界から出遅れの要因になったのはFCVが理由
- ハイブリッド車(HEV)が絶好調のトヨタにとって、BEVは小型車分野だけと認識。
- トヨタよりも先にBEVを市販化した日産に追従するのはプライドが許さなかった。
- プラグイン車を優先すると、ハイブリッド車が低迷するため積極的に売らなかった。
- 全世界が、これほど「急速にBEV化する未来を予想しなかった。軽視していた」
- 当然、BEVは将来予想から外れていたため、テスラとの提携を解消した。
- 2006年に水素エンジンを中止したBMWの経験を提携先のBMWから学ばなかった。
- 2013年、老舗自動車メーカーとして電動車を市販化したBMWから学ばなかった。
2010年代の流れの中で、すでに電動化が未来の本流となる流れが確定していたのです。
それを見誤り、燃料電池車(FCV)を将来の救世主に据えたシナリオを変えずに突き進んだ結果、EV出遅れが確定したと言えます。
それが、EV出遅れとFCVオワコンの理由になります。
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