HONDAの2ストNSRといえば、峠ユーザー羨望のマシンでしたが、2サイクルマシンのスタートは「MVX250F」から始まったのです。不運の伝説を作ったマシンの実情を解説します。
MVXイコール焼き付き伝説
「焼き付き」この代名詞は、MVX以外には見当たらないぐらい有名となった。このバイクは欠陥車なのだろうか?いやこれは名車なのである。 とりあえず、MVX250Fのスペックにふれておこう。
なお、「MVX 族車」で検索される方がいますが、MVXを族車に用いた例は無く、特攻服がオイルで真っ黒となるため、お勧めできない車種の筆頭になります。
MVX250Fのスペック
- エンジン:水冷2サイクル ピストンリードバルブ90度V型3気筒
- 排気量:249cc
- 最高出力:40PS/9,000rpm
- 最大トルク:3.2kgm/8,500rpm
- 車両重量:138kg
- 販売価格(発売当時):428,000円
- ボア・ストローク:47.0×48.0mm
- 圧縮比:8.0
- 燃料供給装置:キャブレターTA01
- 点火方式:フルトランジスタ
- 始動方式:キック
- 6段リターン変速比:1速2.562、2速1.850、3速1.478、4速1.240、5速1.074、6速0.965
- 一次減速比:3.050
- 二次減速比:2.666
- サイズ:全長2010mm、全幅735mm、全高1155mm、軸距1370mm
- シート高:780mm
- キャスター・トレール:26度30分、91mm
- タイヤ:(F)100/90-16、(R)110/80-18
- 燃料:タンク17L
- オイル:1.7L
セミカウル、フロント16インチ、インボードディスク、プロリンクサスと当時、先行してデビューしたVT250Fのパーツを一部流用しつつ、コストダウンと軽量化を図ったモデル。
ライバルRZ250のインパクト
当時、35psのRZ250が2ストブームを巻き起こし、ホンダがVT250Fで巻き返しを図った。
実際、4ストマシンでは圧倒的な売れ行きを見せたが、2ストマシンを持たないホンダにとっては、RZ250のシェアを奪うことが必須だったのだ。
人気のVT250FのスタイルとV型3気筒のレーサースペックの組み合わせは必勝体制だった。
MVX250Fが絶不調・不人気の原因
V型3気筒で前後のピストンバランスの設計ミス
GP500レースで、フレディスペンサーが圧倒的な勝利を勝ち取ったNS500のV型3気筒エンジンをイメージしたV型3気筒エンジンは、スペックでもRZ250を完全に凌駕していた。
しかし、ホンダ市販車初の2ストロードレーサーとして、やや開発途上?で、市販を急ぎ過ぎた未熟な設計?が招いた結果か。前2つのピストンと後1つのピストンの後者シリンダーの焼き付きという不具合が多発したようだ。焼き付きの原因としては、冷却不足と3気筒というアンバランスさを解消するための重量バランス取りが致命的な悪影響をもたらしたようだが、GPマシンのノウハウが活かれされていないことが不思議でもある。V型2気筒やV型4気筒と異なり、V型3気筒は振動が発生することにより、バランサーの追加が求められ、重量増となります。
軽量化のため、このバランサーの代わりに2気筒と1気筒の重量バランスで振動対策を行った結果、重量バランスの悪化によるオイル不足が発生したようです。
実際、どれだけの不具合が多発かは、不明であるが、後期モデルで改良を行い、焼き付き付き対策を実施したようだ。
焼き付き対策とはオイルの流量を増やしたという説があり、MVX250Fからは猛烈な白煙が上がり、後続を走るバイクやライダーの衣服を汚したという伝説もあります。
発売を急ぎ過ぎた、安易な2スト版VT250Fコンセプトが敗因
この「エンジン焼き付き」が原因で売れなかったのか・・・というと原因は他にあると分析します。
などなど、VT250Fに対する2ストマシンとしての優位性、後から登場するライバル達に対する商品力を維持するだけの魅力も無かった。
当時のバイクブームで2ストRZ250の対抗馬を早急に発売すべく、開発を急ぎ過ぎたのが原因のようです。VT250Fと全く変わり映えがせず、流用パーツの多さが敗因でしょう。
- 当時のエンジン焼き付きの噂が広まった
- ホンダ・トリコールカラーだが、VT250F似の外観と合わす
- 車重を軽くするためか、125と見間違うほど、コンパクトな車体。
- VT250Fと共用しすぎのメカニズム&外観。
- RZ250Rの43ps、RG-γの45psのライバルに劣るパワー
特に目立ちたがり屋の峠族のハートに訴える商品性が欠落していたのです。
ある意味、早期の市販化を急ぐあまり、販売面の売り上げ優先主義が招いた結果かと思う。
この後、RG250γやRZ-Rが登場し、VT250Fの後追いを狙った2スト版の販売はジリ貧になる。
MVX250Fの前期と後期の違い
変則なV型3気筒エンジンは、前方と後方のバランスに欠けていた。
整備性を考慮しシリンダーレイアウトを逆転させたため後方シリンダーピストン側圧に負荷が掛かり過ぎた結果、焼き付きなどの不具合が多発した。
製造途中からカラーを介してピストンピンを18mmから14mmに小径化を実施。
MVX400Fの市販化見送り
MVX400Fも市販化が予定されていました。当然、雑誌にはスクープ記事も載っていました。しかし、MVX250Fの不人気がたたり、市販中止となりました。よって市場にMVX400Fは試作車を含めて中古車は一切流通していません。
当時、ツーリングでも同行した記憶があるMVX250Fだが、オイル排出量が劇的の多いとか、オイルが飛び散りすぎ・・・などの事象はなかったように思う。
(焼き付き対策モデルなのかは、記憶にないが)
言い換えれば、オーナーの乗り方次第では、軽量コンパクトボディかつトルクも重視したエンジンを活かして峠道でも、後発のライバル勢に見劣りしない性能を発揮できたのではなかろうか。
ある意味、貧乏学生+峠マシンとしては最強の組み合わせだったとも言える。
MVX400Fの中止により、次期モデルのNS400Rにバトンタッチし、市販化されています。
後継のNF250F/Rの登場
その後、MVX250Fの落ち目を挽回すべく、ライバルを研究したNS250F/Rが発売される。
ヤマハのYPVSに刺激されてか、ATACなる排気デバイスを装備し、トルクアップを図る。
Rは、アルミフレーム+フルカウル、Fは、スチールフレーム+ネイキッドモデルとなる。
ライバルに対して、性能的なスペックは勝っていたが、フルカウルとアルミフレーム化で高くなってしまった価格とインパクトに欠ける地味なカラーリングで、あまり売れていた感じはしない。
その後、NS400Rの兄貴分も登場。トリコールカラーやロスマンズカラーの投入も行われました。RG400ガンマやRZV500Rに比べて、NS400Rの人気は低く、2スト400ccは万人受けはしなかったようです。MVX250Fの亡霊の影響かもしれないが、その後、登場するTZR250の爆発的な人気に隠れてしまっているのだ。
爆発的なヒットを記録したNSR250R
ホンダの2ストマシンが開花するのは、「NSR250R」を待たなければならない。このマシンはライバルTZR,ガンマやKRを完全に凌駕した。排ガス規制により消えた2ストマシン達は、やがて伝説となる。
中古車のタマは少なくなりました
旧車の2ストマシンは高値で取引されていますので、眠っているバイクは新しいオーナーへ。
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