
2022年5月、ホンダ社のリモートワーク廃止が話題になりました。
テスラ社同様に製造業としては妥当、反対なら辞めれば良いという意見がある一方、時代の潮流に逆行する経営に危機感を抱く意見も多いようです。その真相に迫ります。
テレワークとリモートワークの用語解説
テレワークとは、tele(離れた)とwork(働く)を組み合わせた造語、一方のリモートワークとは、remote(遠隔・遠い)とwork(働く)なので、どちらもオフィスから離れた(遠い)場所で働くという意味です。
社長のひと声が発端

ホンダの三部敏宏社長が昨年末、開発の現場に来たところ、出社メンバーが少なかったのでGW明けからリモートワーク主体の仕事を止め、原則的に毎日出社することにしたからだ。
社長の一声でリモートワーク中止!? 事実なら前時代的なイメージだが、例えば社内的なアンケートなどが実施され、従業員の意思として中止となったのであれば、その意思は尊重されるべきだ
こんな社長のひと言で、働き方を一変するとは、呆れて物が言えないくらいである。そこまで、社長の周りにヒラメ(=上しか見ない)しかいなくなったのか?
これは、OBの意見のようですが、危機感が伝わってきますね。
製造業であり、現場主義というのも理解できますが、部門毎に出社の必要性は異なるでしょう。
最新モデル大ゴケの理由はリモートワークが要因ではない
ホンダ車の屋台骨モデルの最新フィットやステップワゴンが、販売台数低迷しています。
これは、リモートワークが要因ではありません。初期モデルの失敗について、後期モデルでのデザイン変更により、販売回復したホンダ車の黒歴史を学習しないのでしょうか。
トップダウン方式なのに対面重視とか
むしろ、「開発責任者やデザイナーの失敗要因、ゴーサインを出した経営責任が全て」であり、対面意見を重視したり、ボトムアップの社風ではないようです。
新しいコンセプトが正義だ!上に従え!
営業現場やお客様の声、マーケティングを無視し「新しいコンセプトが正義」と言わんばかりの施策です。このような完全トップダウン方式は、メールや掲示板で十分です。コミュニケーションという名の完全一方通行です。
いかにも「コミュニケーションが出来ていないからだ!」と言い出しそうな「昭和的」「体育会系的」なオーラを感じてしまいます。
リモートワーク廃止の理由とは
代表的には、2パターンに集約される感じでしょうか。
コロナ終息による大義名分が消失
対面第一主義の方が、一斉に発言を強める機会を与えてしまったようです。
特に、「感染症の予防措置」としての大義名分が消失してしまった関係で「コミュニケーション優先」という意味不明なオッサン発言が復活しやすい環境になってしまったのが、最大の理由と考えられます。
上手くチームとして機能しない
社員同士のコミュニケーションが少なくなり、上手くチームとして機能しなくなってしまったのです。 常にテレワークで働いていると、雇用形態は正社員でも、フリーランスのような働き方になってしまうのかもしれませんね。 特に大手企業は、案件の規模も大きいはず。
理由としては、下記のパターンが多いです。
- 単に管理職の力量不足
- サボりを危惧して、必要以上にチェックが厳し過ぎるケース
- 進捗管理を全く行わず、サボりが蔓延し、業務が回っていないケース
- リモート環境が未整備で、快適さに劣り、セキュリティ面なども問題があるケース
- そもそも、経営者の理解不足
進捗管理を行う便利ツールが沢山あり、チャットやメール、掲示板だけでなく、統合的な管理ツールに加えて、TV会議を併用するだけでも十分でしょう。むしろ、従来型対面会議よりも密度もスピードも進化しています。
行使の区別をつけにくい
テレワークの廃止に動いてしまう理由として、公私の区別をつけにくいことが挙げられます。 特に、自宅で仕事をする社員が感じる問題のひとつです。 プライベートな環境に仕事を持ち込んだことで、仕事中に本やTVなどが視界に入ることで、仕事に集中できないというケースが挙げられます。
どちらかと言えば、コチラの方が説得力がありそうで、実態をリアルに表しているように思います。
出社後も、タバコで長時間の離席やスマホ操作、「作業しているフリ」「ボーっとしている」など、時間内密度として、実労働時間はリモートと変わらないでしょう。
肝心なのは、出社することでなく、成果を上げることです。
ただ、今もリモートワークを推進し、従来より、より良い効果を残せている業界にとっては「ナニコレ?」ではないでしょうか。デメリットよりもメリットが勝るのではないでしょうか。
具体的なメリット・デメリットや事例を事項で解説します。
働き方が一変
リモートワーク化が進み、メリット・デメリットが見えてきた中で、各職場の状況や必要に応じた出社体制とすれば良いでしょう。原則的に毎日出社など、交通費、光熱費、事務所の維持費など、ムリムダ以外の何物でもありません。
対面でのコミュニケーションが必要場合のみ、出社を強いれば良く、平時フル出社を強いる必要性など、全く無いのです。
テレワークの経営者側メリット
- 在宅勤務者の交通費削減
- 会議だけのための無駄な出張費の削減
- Web会議システムなどの活用による効率的な時間管理
- 会議室不足という物理的なインフラ不足も解消
- オフィス維持にかかるイニシャル・ランニングコスト、家賃や電気代の削減
- ペーパーレス化による印刷費などの削減
- テレワーク化により、紙から電子化統一に伴う、各種事務効率化
- テレワークという、すでに当たり前の環境を求めている求人が可能となる
通勤時間の削減というメリットは、その手間と時間、労力を考えれば、労働者にとって何物にも代え難く、在宅時の通信費・光熱費・電気代の労働者側負担など、微々たるものです。
テスラとホンダでは背景が異なる
電気自動車(EV)最大手のイーロン・マスク米テスラ最高経営責任者(CEO)が、5月末に幹部宛ての電子メールでそう通告した。
「在宅勤務を希望する人は週に最低40時間オフィスで勤務しなければならない。さもなくばテスラを退社してもらう」
と激しい言葉で「オフィス復帰」を命じている。
テスラのようにカリスマの経営者イーロンマスク氏が、ここまで会社を急成長させたのだから、企業の方針には従うべきという考え方もあるでしょう。「従う気がないなら、どうぞ辞めてください」というスタンスです。サボっている、生産性が低下したという判断でしょうか。テスラ社の急成長と実績から見れば、説得力もあります。
コロナ禍の影響もあり、世の中の働き方が変化してリモートワークが活用され、職場での仕事が変化していった。もちろん、リモートワークそのものに対する是非はあると思うが、それを改良して新しい働き方を進めていってこそ、世界をリードしていくホンダであると思う。
むしろ、HONDAのASIMOなど、ロボットは人間の作業を肩代わりすることが究極の目的でしょう。
人間出社最優先、通勤電車、対面会議最優先、日本企業として、イメージリーダーだった栄光は過去のもの、今回のリモート廃止のお達しには、昭和な香りが漂います。
ツイッター社の事例は、納得感もある。
一方、イーロンマスク氏によるツイッター社の買収によりリストラが強硬されました。リモート廃止も入っていると思われますが、投稿内容の操作を行った部門担当の解雇などは、一定の理解の声も見られるようです。
東洋経済誌:ホンダがテレワークやめ原則出社に踏み切る真意
「三現主義」重視する社内文書、疑問の声も
別のホンダの中堅社員は「在宅による日々の効率化と対面の合わせ技なら理解できるが、経営陣は現場を理解していない。優秀な学生の中からホンダを希望リストから外す人が増えてしまう」と嘆く。
新卒、中途に関わらず、テスラのような急成長企業から没落したホンダに対しては、マイナスイメージになるでしょう。
同じ業界の日産自動車は「在宅勤務や時差出勤などを活用して感染対策をとっている」と回答。トヨタ自動車も「コロナ禍では在宅勤務が可能な職場でのより一層の在宅勤務を推進している」といい、東京や名古屋での4月末時点での出社率は4割以下にとどまるという。こうして見ても、ライバルたちと比べてホンダの選択は異質ともいえる。
製造業、ライバル社と比較しても異質に映りますね。
フィット、ステップワゴンなど、屋台骨の不振理由は、リモートワーク・在宅勤務が理由ではなく、むしろ経営責任でしょ!の声が聞えてきそうです。
リモート廃止、三現主義よりも、もっと先にやるべきことあるでしょ!の声が聞えてきそうです。
テスラ社のマネ?そんなカリスマ性も勢いも、今のホンダにないでしょ!の声が聞えてきそうです。
テレワークのデメリットとは?
労働者観点
- インターネット環境に依存してしまう
- 同じ空間で働く仲間がいないため、孤独を感じるメンバーも
- 自己管理ができないと生産性が下がる
- サボりのリスク
- 労働時間が長くなる可能性(自己管理、管理者管理不足)
逆に今までテレワーク実施済環境下で、テレワーク禁止となれば、離職率増加や求人率低下に繋がる結果となることは言うまでもありません。
経営者観点
- インターネット環境に依存する
- 同じ空間で働く仲間がいないため、孤独を感じるメンバーも
- チーム作業の連携不足
- 自己管理ができないと生産性が下がる
環境整備、セキュリティ対策、労務管理、人事評価管理
環境整備、セキュリティ対策
インターネットから社内のデータにアクセスし、不正なアクセスに対するセキュリティ対策は必須です。いまとなっては、外部サービスや手法は、確立しています。
コロナから数年経過し、課題や問題点に対する対応策やサービスが充実し、企業側が懸念点としてリモートを避ける理由など全くないと言って良いでしょう。
労務管理、人事評価
企業規模や組織形態に関わらず、管理や評価手法が確立してきました。これも正しく評価できないから、テレワークを避ける理由にはならないでしょう。
テレワーク失敗企業の特徴
当たり前ですが、失敗企業は、労働環境や働き方が未構築のケースが多いようです。
テレワークの環境を整備していない
- オンライン環境の未整備
- ツールの支給をしない
- セキュリティシステムの導入未整備
- 紙の書類、申請書類を電子化が、進んでいない
特に印鑑の申請書が必須で、出社を強いるケースがあります。
社員のモチベーションを下げる仕組み
管理者の能力不足を背景として、業務状況の管理強化を図る監視ツールを導入はNGです。
特に「常時画面ON」などは厳禁です。社員の離職に直結します!
- 働きづらい
- ストレスに直結する
- 裁量権の侵害
働き過ぎ、労働時間増への防止策
テレワークで、労働時間が増えてしまうという問題を挙げるケースもあります。
基本的にテレワーク化により、労働者の自由時間が増えることは、言うまでもありません。
出社時もタバコや離席によるリフレッシュ中の管理はブラックボックスであり、テレワーク中の休憩時間も似たようなものと考えるべきです。
出社時と比較し、与えている作業量が同じであれば、生産性は向上します。
デメリット解消方法
- テレワークのルールを決める(当たり前ですね)
- 評価基準を明確にする(成果物、結果を確認する流れ)
- 社内SNS・チャットツールを導入する(導入済でしょう)
労働生産性とコミュニケーションの維持
職種や労働環境によっては、在宅勤務でも生産性を引き上げることは十分に可能です。
オフィス賃料コストの引き下げや支給する通勤費の節約、在宅勤務を希望する人材の確保といったメリットを総合的に考えれば、コロナ収束後も活用の余地があります。
また、ムダな通勤時間に費やしていたコストや時間を労働時間にシフトできるのです。
- 対面会議でも会議室の確保やスケジュール調整などの手間は、出社も在宅も何ら変わりありません。
- 電話や直接出向いて聞くなど、仕事のジャマをするよりも、チャットやメールでも十分な場合もあり、これも出社と在宅の差はありません。
- ホワイトカラーにとって、ペーパーレス化が進めば、出社必要なんて業務は、ほぼ駆逐されているでしょう。
- 出社しようが、タバコと離籍してサボる、仕事外の考え事も多い。結局は上司の管理能力不足と自己満足、IT不慣れな老害のもたらした昭和的な価値観の押し付け
むしろ、Web会議中心になり、会議室不足という物理的な制約が無くなり、空きスケジュールの調整だけに専念出来るメリットが大きいでしょう。
企業にもノウハウが蓄積しているだけに、このまま在宅勤務を「一過性」のもので終わらせるのはもったいないです。
まとめ
テレワーク化実施率の高い企業でも「コロナが解消し、出社して対面で会話するのが良いことだ!」をぶち上げる昭和なオッサンが必ず出現します。
「点数稼ぎのお決まりのワード」が登場する前に、社内のテレワーク化を徹底的に推進し、オフィスを物理的に削減し、コスト削減効果の可視化が、テレワーク推進部門の責務です。
- オフィススペースの削減や食堂廃止による、コスト削減効果
- 交通費の全額カットによる削減効果
- 対面からリモート化による、出張旅費の削減効果
- Web会議による、物理的な会議室スペースの削減効果
- 会議室不足により、会議できなかった時代よりも時間内密度の向上
テレワーク化は、新卒者や優秀社員の辞退率&離職率の回避効果は絶大です。リクルートと人事関連の情報収集と理論武装が効果的でしょう。
- テスラの真似る必要あるの?:ない
- 全員出社の必要性あるの?:ない
- 製造・営業現場以外、出社の必要性あるの?:ない
- いやなら辞めれば?:採用厳しくなるけど、優秀な人ほど辞めちゃうかも。
- なぜ、トップダウンなの?:労働者の意見全無視
- 出社していい仕事できるの?:不明
- 企業理念なんだから勝手でしょ:関連企業、その他への影響考えてないでしょ。
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