ホンダ・オデッセイが、2021年12月に27年の歴史に幕を閉じ、新型ステップワゴンを代替車としたにも関わらず、中国製再版という迷走劇の実態。
オデッセイはダサいのか、失敗なのかを解説します。
ホンダ・オデッセイの歴史
初代(1994)
この分野においては、日産プレーリーや三菱シャリオが先駆者となりますが、スタイリング的を含む魅力も低く、ヒットには繋がりませんでした。
初代オデッセイは、アコードベースのシャーシを用いて、車高1675mmまで持ち上げたスタイリッシュな3列シートがウケて大ヒットに繋がりました。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4750×1770×1675mm
- ホイールベース:2830mm
- 車両重量:1510kg
- 10モード燃費:10.2km/?
- エンジン:F22B直列4気筒SOHC2.2L
- 最高出力:145ps/5600rpm
- 最大トルク:20.0kgm/ 4600rpm
2代目(1999)
ヒットした初代モデルのキープコンセプト。
高級感やスタイリッシュさにも磨きが掛かり、まさに正常進化となっています。
車高は45mmダウンしたものの、許せる乗降性を確保していました。
しかし、この車高ダウンした2代目でも成功した実績が、3代目以降のモデルを迷走に向かわせる結果となります。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4770×1795×1630mm
- ホイールベース:2830mm
- エンジン:F23A直列4気筒SOHC2.3L
- 最高出力:150ps/5800rpm
- 最大トルク:21.0kgm/ 4800rpm
3代目(2003)
車高は80mmダウンした1550mm。
車内室内高は、2代目以上という謳い文句です。立体駐車場に入る点を強調しています。
爆発的ヒットの1st/2ndオデッセイ、初代ストリームが1550mm超えである点を見れば、ユーザーが求める点は「そこじゃない(立体駐車場に入ることなど、どうでも良い)」のです。
スタイルもより流麗でスポーティーなものへと生まれ変わらせ、独自の強みであったスポーティーグレード「アブソルート」の走りも磨き上げた。持ち味の走りの良さだけでなく、都市部での使い勝手が高まったことで、オデッセイを指名買いするファンを増やした。
PRESIDENT ONLINE誌の論調ですが、全く正しくないでしょう。
2代目ユーザーのニーズを無視した、3代目の車高ダウンは、単に使い勝手の悪化を招きました。
企画書のプレゼン資料には、普通のドアによる、乗降性などがワンボックスカーに劣る点は書かれず、ホンダ車では毎度恒例のユーザー不在、プレゼン優先であることは言うまでもありません。
フィットの成功体験が裏目に
まさに、センタータンクのレイアウトによるフィットの成功体験は、ホンダ救世主なトレンドであり、「全車種展開することが正義」であるという唐突な企画で突っ走った結果、オデッセイ低迷・爆下げの結果となりました。
スポーティなハンドリング、立体駐車場に入ることなど「誰も求めておらず」、ローダウンへのコンセプト変更がオデッセイ最大の敗因となり、4代目で決定的になった失敗モデルの根本原因が3代目です。結果、ノア・ボク・セレナ・アルファードへの大量流出を招きました。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4765×1800×1550mm
- ホイールベース:2830mm
- エンジン:K24A直列4気筒DOHC2.4L
- 最高出力:160ps/5500rpm
- 最大トルク:22.2kgm/ 4500rpm
4代目(2008)
車高は10mmダウンした1540mm。フロントやリヤのアクの強さも無くなり、ボディサイドの抑揚感もあり、フロントマスクはカッコ良くなったものの、販売は全く回復しませんでした。
ローダウンミニバンが見向きもされないという明らかなマーケティング上の答えを無視し、センタータンクレイアウトが正義であるとの3代目コンセプトを強行した、当たり前の結果となりました。
エリシオン・プレステージの投入を学習できず
オデッセイの上位モデルとして、エリシオンが投入されましたが、非オラオラで人気が出ず、エリシオンプレステージが追加投入されました。
「エリシオンプレステージ」を追加投入した理由、市場の動向を分析すれば、4代目のオデッセイに対する答えは出ていたでしょう。しかし、3代目コンセプトを踏襲した失敗は決定的となりました。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4800×1800×1540mm
- ホイールベース:2830mm
- エンジン:K24A直列4気筒DOHC2.4L
- 最高出力:173ps/6000rpm
- 最大トルク:22.6kgm/ 4300rpm
5代目(2013)
車高1685mmと初代コンセプトに戻したものの、時すでに遅し。
エリシオンとエルグランドの低迷状況を見れば、ユーザーが好むマーケットの正解は「アルファード相当の車高」という答えが明確に出ていたにも関わらず、迷走っぷりが残念です。
センタータンクレイアウト成功体験の亡霊がここでも付きまとっています。
スライドドア採用して、ライバル競合車のマーケットジャンルに自ら入るなど、コンセプトの迷走が見て取れます。
後期モデルのオラオラマスクで、ユーザー嗜好に合致するものの、ステップワゴンが代替車であるとの迷走により、2021年に突如生産中止。2023年、中国生産モデル再開へ。
販売店のみならず、ユーザーの大ブーイングは、皆さんご存じの通りです。
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4800×1800×1540mm
- ホイールベース:2830mm
- エンジン:K24A直列4気筒DOHC2.4L
- 最高出力:173ps/6000rpm
- 最大トルク:22.6kgm/ 4300rpm
ホンダ・オデッセイの国内生産中止の理由
後期モデルは、販売実績も上向きであり、オラオラマスクへのマイナーチェンジは、大成功だったのです。
販売店・ユーザーニーズを無視した施策
狭山工場の閉鎖に伴い、他工場への移管もせずに、オデッセイの生産を中止しました。
当時の販売実績は、月販1000台を優に超えていたのです。
中国製再販後の目標1000台を超えていたことは言うまでも無いでしょう。
当時、トヨタアルファード、ヴェルファイアの注文停止しており、販売のチャンスだったにも関わらずです。販売店・ユーザー軽視した意味不明の施策は誰の目にも明らかです。
ステップワゴンの上位グレードへの移行も全く進展せず、これらの決定と判断が残念です。
ホンダシャトルの代替車として、フィットを掲げた点も同様です。
当時の判断は営業現場・ユーザー・メディアも呆れるレベル感です。
オデッセイ販売実績
3代目の失敗で4代目も回復せず、5代目で戻す結果が見て取れます。
年 | 販売台数 |
---|---|
2022年 | 5,212 |
2021年 | 21,148 5代目後期で回復基調 |
2020年 | 9,717 |
2019年 | 14,614 |
2018年 | 16,670 |
2017年 | 20,830 |
2016年 | 30,866 |
2015年 | 15,834 |
2014年 | 32,749 |
2013年 | 14,825 5代目登場 |
2012年 | 7,898 |
2011年 | 10,289 |
2010年 | 16,801 |
2009年 | 23,027 |
2008年 | 28,982 4代目登場 |
2007年 | 31,791 |
2006年 | 44,986 |
2005年 | 64,003 |
2004年 | 97,849 |
2003年 | 45,374 3代目登場 |
2002年 | 52,366 |
2001年 | 71,011 |
2000年 | 120,391 |
1999年 | 48,211 2代目登場 |
新型ステップワゴンが代替車なのか
全長100mmを拡大し、装備を充実した「新型ステップワゴンがオデッセイの代替車とする戦略」とされました。
しかし、旧オデッセイユーザーからは全く見向きもされず、営業現場では絶望感が漂う戦略となりました。まあ、当たり前の結果と言えます。
中国製オデッセイの国内投入
新型ステップワゴンが代替車であったにも関わらず、過去の移行宣言は何だったのでしょうか。
ステップワゴンは代替車とならず、ステップワゴンへの移行も失敗したせいか、オデッセイ復活の要望は、営業現場やユーザーニーズの高まりでしょう。
ステップワゴンを後継モデルとした誤った判断を認めたくない層が大反対した可能性もありますが、中国製オデッセイの導入決定が大幅に遅れました。
結果、後期モデルオデッセイ購入を検討していた層の離脱を招きました。
中国製の再投入に至る背景
- 起点:ステップワゴンをオデッセイ後継車に据えた決定
- 問題発生:なぜ、オデッセイを廃止したのか、販売現場やユーザーから意見が巻き起こる
- 対応:中国製投入という安易な対応を取る。しかし時間が掛かった結果、ユーザーの購入意欲は、以前のように戻らなかった
中国製の再投入後の結果
- 生産中止までは、1000台を超えていたが、中国製はコンスタントに1000台も売れず
- EXグレードで約40万を超える価格アップ
- モデル末期、中国製を考えれば価格も安くすべきなのですが、色々と迷走の戦略
中国製に500万超えに拒絶を示すネット意見や、デザイン面で2013年登場の古さは隠せないなど、ユーザーよりも、販売店サイドから怒りの声が聞こえてきそうです。
室内高を確保すれば良いのか
- アルファードの室内高:1400mm
- オデッセイの室内高:1325mm
- エルグランドの室内高:1300mm
上記の数値から車高の低いオデッセイは狭くないと感じることでしょう。
しかし、以下の解釈がトヨタミニバンに差を付けられた最大要因です。
(引用:プレジデントオンライン)
オデッセイは度重なる低床化を図ることで、独自の武器である低床・低全高ミニバンの魅力を最後まで守り抜いたのだ。
上記の本質を理解しないままでは、今後も成功に辿り着けないでしょう。
オデッセイはダサイのか、失敗は車高ダウンに始まった:まとめ
ホンダは、「ホンダシティ」で車高のローダウン化失敗の歴史を学んだはずです。
エリシオンやステップワゴンの後期型で、オラオラやハイトワゴンが売れる歴史を学んだはずです。
なぜ、過去を否定し、独りよがりのコンセプト車を登場させてしまうのは、なぜでしょうか。
マーケティング上、過去の良い点、他メーカーの売れ線デザイン、最新ユーザーが何を望んでいるのか?が判れば、売れ線車の答えは出ているはずです。フィットでは大成功となったセンタータンクレイアウトによる車高のローダウン化は、結果的にオデッセイでは大失敗だったと言えます。
中国製という点に引っかかりますが、ひとまずオデッセイ再販という点では、喜ぶべきでしょう。「後期型は、ダサくない」をまとめとします。
ただし、そこから次に学ぶべき点を反省し、次のモデルに繋げてほしいと思います。