VWのDSGやアウディSトロニックは、日本で故障や不具合トラブルが多発しているようです。故障修理は、ミッション全交換となり、費用は、なんと100万円オーバーとも言われています。そのリスク対策としての耐久性や乗り方のコツを整理しました。オーナーに向けてのメッセージになります。
Sトロニック・DSGの特徴
別名ツインクラッチとも呼ばれますが、一般的にはデュアルクラッチトランスミッション(Dual Clutch Transmission)で略称DCTを指します。トルクコンバータを搭載した従来のオートマチック(AT)と異なり、DSGは、量産車として世界初となるフォルクスワーゲン(アウディも)の技術です。メーカーにより、呼び方が異なりますが、VWアウディポルシェのグループは下記になります。
- VW:DSG
- アウディ:Sトロニック
- ポルシェ:PDK
故障の事例数でいえば、DSGの故障率がケタ違いに多いようです。
DSGのシェフラー製は、VW・アウディグループ、供給を受けたホンダが採用。
DCTのゲトラグ製は、BMW、ランエボが採用、GTRがボルグワーナー製です。
シェフラー製DSG湿式6速と乾式7速の違い
シェフラー製DSG湿式6速は、オイルを6.5Lも入れており、大トルクや摩耗に対応しています。
一方、乾式7速は、オイルの量が1.5Lと劇的に減った結果、トラブルの原因ともいえる摩耗や冷却機能が十分発揮できないようです。よって、半クラッチ多用によるトラブルや変速スピ―ドの自動化に伴う負担により、ノロノロ走行ではトラブル発生(ジャダーなど)は避けられないのがDSGとも言えます。
では、最新のアウディA4等に採用されている湿式7速DSGの不具合は回避できているのか?という点では、まだトラブル発生事例がある様子。やはり湿式となると約7Lものオイルが必要となるのは6速同様。湿式でも避けられないのは、オイル冷却による負担軽減の機能が根本的に不足していると思われます。
レースシーンで鍛えられたツインクラッチですが、渋滞ノロノロ走行とは無縁の使われ方です。一般車に多用したVWグループは、致命的ミスと判断するのは早計でしょうか。欧州と中国でシェアの高いDSGですが、それは単にVWのシェアが高い結果に過ぎません。全世界的に見ればマイナーな変速機になるのです。
SトロニックとDSGのメリット
湿式Sトロニック・DSGのメリット
・6.5Lものオイルで冷却すると共に大トルクに対応する。
・渋滞でAT並みの徐行運転に対する耐久性がある。
・細かい振動やジャダーが最小限に抑えられる。
・リコールの事例が少ない。
乾式Sトロニック・DSGのメリット
・オイルを消費しないことでのコストダウン、オイルが介在しないことで燃料効率が向上。
・オイルメンテナンスコストの削減。
Sトロニック・DSGのデメリット
湿式Sトロニック・DSGのデメリット
・デュアルクラッチの欠点として常時稼動によるオイルの劣化とクラッチ磨耗の純物が混入する。
・オイルの交換サイクルが短く、オイルの交換費用も高い。(約5万円)
乾式Sトロニック・DSGデメリット
・クラッチ枚数小は低トルクまでしか対応できない。
・オイルによる冷却が行われないため、ジャダーが発生。
・渋滞使用による高温、磨耗などの故障が発生。リコール多発。
SトロニックやDSG不具合多発に耐えるユーザー
欧州でMT車が好まれるために評価が高い反面、AT車のスムーズな発進と変速を好む米国と日本では絶対的な評価がかなり低いようです。
本来MTでは1つのクラッチ操作していましたが、DSG では2つに分けて組み合わせることでギヤが切り替わるときの違和感がなく、どこまでも切れ目のない加速が得られます・・・という仕組みです。基本的な仕組みはMTで、クラッチ操作を自動化しているイメージなので、半クラッチ操作の機械化に限界があることは仕組みからも明らかです。実際、走り出してしまえば、AT並にスムーズなのですが、問題は、発信時や駐車時、坂道発信時の繋がり具合です。DSGデビュー当初は違和感がかなりありましたが、ユーザーの不満の声からか、最近はかなりAT的の味付けになっています。
AT的な味付けとは、滑らかな発進を意味しており、MTベースの半クラッチ発進をプロドライバーが行ってもギクシャク感は発生します。これを機械が自動化することには、そもそも無理があるのです。そしてAT並みの滑らかさを得ようとすればするほど、半クラッチの負担が増えることは素人でも想像できるでしょう。MTベースの仕組みを理解し休日のスポーツ走行を行う方と毎日ノロノロ渋滞走行を行う方では、DSGクラッチへの負担が圧倒的に異なるのです。
本来、画期的な装備として売りであったDSGもVWやアウディのサイトでは、そのリコール頻度の多さから「売り」のアピール捨て「消極的」なものに大きく変化しているようです。それはアウディのサイトで車両重量の項目を削ってしまったように「ネガティブな要素を極力隠す傾向」に似ています。(2016/12では記載有)
故障を危惧するユーザーの皆様
このページを訪れる検索キーワードを見るとアウディもA3~A8、VWもゴルフ、ポロ、シャラン、ジェッタ、パサート、ホンダフィットHVなどです。DSGを搭載車種のそうそうたる顔ぶれになります。それだけ、シェフラー製をベースとしたDSGの問題点に潜むユーザーの懸念、危惧の度合いが広範囲であるところが分かります。
リコール多発と故障の発生状況
中国では38万台のリコールを実施(2013年)
2013年3月に中国で38万台を超えるリコールとなり、大きな波紋を呼びました。?
日本でも10万台のリコールを実施(2013年)
国土交通省の発表によると市場からの不具合指摘件数は既にVW車が338件、Audi車が55件に達しています。
リコールの原因はコンピュータ基盤にあり、基盤交換は実施されるようですが、DSG本体の不具合は無いのでしょうか。消耗品のクラッチなどDSG本体は、ノータッチで良いのでしょうか。中国では、7速乾式DSGの欠陥を認め、ユーザーに10年16万キロ保証の延長を実施しました。日本では、3年保証のままです。これは何故でしょうか。
実際にトラブル多発に重い腰を上げたのかリコール扱いになりました。
http://www.mlit.go.jp/common/000997051.pdf
自動変速機制御コンピュータの基盤材質に原因があったようですが、ネット上に溢れるジャダー発生などとは要因の結果が異なる感じもします。
http://www.volkswagen.co.jp/service/recall/pdf/recall2013/2013_05_08_1924.pdf
https://www.audi.co.jp/content/dam/nemo/jp/service_accessory/info_top/recall/2013/2013_05_08_recall.pdf
VWもアウディのサイトにも詳細が乗っていたのでチェックしました。
このリコールでの注目部分は下記の点です。
不具合件数:338件
発見の動機:市場技術情報および国土交通省の指摘による
問題なのは、メーカー自らの自己申告ではなく、国からの指摘である点です。
DSGの修理代も高額だったらしくリコール扱いとなるまでは、ユーザー自ら負担していたのかと思うと「ぞっと」します。
いずれにしてもトルクコンバーターのATと異なり、MTのクラッチベースでスムーズな発進と変速を行えば半クラッチ多用になることには変わりなく、渋滞走行の多い日本ではクラッチは消耗品となります。寿命が短くなることでDSGはマメなメンテナンスが必要となります。
ホンダのDSGもトラブル多発でリコールの大問題
ホンダ車も量販車の2015年当時のハイブリッド車へ、燃費優先でDSG採用を採用しています。しかし、本質を見極めない欧州車の真似(特にVW)は自爆する結果となりました。
日本独自に発展を遂げたCVTよりもDSGの方が伝達効率が良く、モーターとの組み合わせでもコンパクト化が可能と判断されたのが採用理由です。確かにCVTの動力伝達効率は80%で、DSGの90%には劣ります。しかし、CVTの利点は、その滑らかな走行フィールであり、日本メーカーを中心に発展を遂げた理由でもあります。
よって、DSGはストップアンドゴーの多いアジア・北米圏ではシステムの根本が不向きだったのです。話題がホンダのDCT(DSG)になってしまいましたが、燃費よりも滑らかな走行フィールは自動車にとっても重要な項目ではないでしょうか。
特に従来ATやCVTユーザーで渋滞を多用する方にとって、違和感はかなり感じるのでしょう。アジア・北米圏の渋滞多発地域や高温多湿の風土的にも不向きなのです。ハイブリッド燃費をライバル視するあまり、効率優先のDSG採用かと思いますが、裏目に出てしまったようです。不満を持ったユーザーは二度とDSGを選ばなくなる可能性もあります。(最新モデルはDSGの採用を止めました)
燃費効率だけを追い求めるのではなく、総合性能では従来からのトルクコンバータ式のATやCVTで十分なのです。ATは多段化とロックアップによる直結の仕組みにより、AT本来のなめらかさと伝達効率の向上を果たし、ATの進化度合は一般用においてDSGを不要とするレベルに到達しています。
機械式クラッチの発熱により、いろは坂で立ち往生
2016年の故障発生状況
VWの乾式7速DSGのジャダーの件、1000台に3件発生とのこと。
最新モデルでも2速アップ時に発生との報告もあり。
2017年の故障発生状況
故障発生の話ですが、youtubeやネットでDSG故障を検索するとまだまだ最近のモデルでも発生しているようです。そもそも根本的な仕組みの問題なのでしょう。オイルやコンピュータについて、ソフトウエアのセッティング直すような小手先の手法は無理であり、そもそも根本的な問題を抱えていると思われます。ハードウエアの欠陥だとしたら、焼石に水であり対策部品への交換以外は直らないのかもしれません。それでも購入したいユーザーは、どうすれば良いのでしょうか。
DSGという仕組みを知らずに普通のATと思って買ってしまったユーザーはどうすれば良いのでしょうか?
ユーザーの防御策としては、新車の保証付きモデル、または認定中古車で走行距離の長いものを選びましょう。
近年、日本の輸入車トップを独走していたVWが、販売台数でメルセデスに抜かれてしまいました。アウディもBMWミニに抜かれています。これは、海外のディーゼル不正問題による評判の低下が起因していると思う方も多いことでしょう。しかし、日本ではディーゼルなどの不正対象車は該当無しなのです。販売不振の理由は、VWやアウディのブランド力に見合わない超強気の価格設定や過剰CM戦略でしょうか。最も大きな理由はDSGが日本の環境に合わない事にユーザーが気づき離れていった結果とすれば、販売不振の理由も納得感があるように思われるのです。
2018年の故障発生状況
DSG(自動変速機)のサービスキャンペーンを済ませた車で、メカトロニクスが破裂してオイルが飛び散り、走行不能になった。
走行不能になったという文言が気になります。
そもそも根本的、致命的な欠陥をコンピュータ設定だけではカバーできない表れでしょう。
2019年の故障発生状況
『ゴルフ』など30車種について、7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)のアッパーハウジングねじ切り加工が不適切なため、耐久性不足による亀裂発生。不具合は1648件発生ということです。最悪の場合、駆動力が伝達されず走行不能になるという、とんでもない不具合です。対象期間が、2008年4月28日から2016年3月14日と非常に長く、対象は17万6068台という台数の凄さに驚かされます。
2020年の故障発生状況
4月2日、自動変速機「7速DSG」に不具合があるとして「ポロ」「ゴルフ」など21車種、計5万1024台のリコールを国土交通省に届け出た。対象車両の輸入期間は2008年5月16日~2014年4月11日。これまでに発生した不具合の件数は599件は、氷山の一角の可能性も。対象プログラム書き換えなどの安易な対応で済ませることなく、対策部品への全交換を実施すべきです。
DSG 故障前兆 とは
中古車試乗時、スタート発信時に今まで体感したことないショックの大きさを感じた。今までトルコンATに乗られていた方で、DSGが大きなショックと感じられるようであれば、間違いなくストレスの元になります。VW/アウディ車全般を避けた方が良いでしょう。
購入後の故障前兆
- 発信時、大きなショックを感じるケースが多くなった。
- Nから、DやRレンジに入れたとき、車外でも大きな異音を感じる。指摘されたことがある。
- ギヤから「ドン」「ゴキ」「グキ」「グググ」という大きな異音がする
- ギヤ抜け、ギヤ固定のような不具合、違和感があった。今は直っている。
基本的にDSGとSトロニックは同じ不具合
構造的にはマニュアル車のクラッチがベース。日本人が好むスルスル、ヌルヌルの発進を多用すると半クラッチ状態となり、クラッチがすぐ摩耗します。
早くて5~8万キロで無くなるため走行距離には注意が必要でしょう。
5万キロ以内では、明らかな不具合が発生した場合は、保証期間中に持ち込むことをお勧めします。
DCTの製造メーカーと採用メーカーの状況
故障の事例数でいえば、DSGの故障率がケタ違いに多いようです。
シェフラー製
DSGとSトロニックのシェフラー製は、VW・アウディグループ、供給を受けたホンダが採用。
ゲトラグ製
DCTのゲトラグ製は、BMW、ランエボが採用
ボルグワーナー製
日産GTRは、ボルグワーナー製です。
BMWのM-DCTとポルシェPDKとの比較
どちらもMTベースのデュアルクラッチですが、メーカーにより呼び方が異なります。
ZF製のM-DCT(7速 M DCT Drivelogic)がマニュアル感強い傾向です。挙動にギクシャク感が伴い、ある意味、洗練さに欠けて乗りずらいと感じることでしょう。
これは、半クラッチ状態や発進時のクリープが僅かであり、クラッチ負荷が小さい事を示しています。
その一方で、ポルシェ製のPDK(Porsche Doppelkupplung)は、M-DCTに比べて圧倒的にスムーズです。一見、ポルシェユーザーが見れば、PDKが優れているような印象となりますが、クリープや変速ショックの軽減のために、半クラッチの多用することで実現しているのです。本来のポルシェは、快適な実用性よりもスポーツ性を売りとしているならば、このセッティングは誤りなのかもしれません。
DCTとPDKの比較としては、上記の内容となりますが、従来型のトルクコンバータATに比べれば、所詮デュアルクラッチの違和感は隠せません。デュアルクラッチは、スポーツ走行向きで乗り手を選ぶ、走り方を選ぶというMTベースの在り方こそが、トラブルの発生(ZF製)が少ない理由なのでしょう。
2017年7月のポルシェは対前年比の売り上げが50%を切り、小型SUVのマカンなどの売れ筋をラインアップに追加する中で、VWグループとしての悪影響がポルシェにも及んでいることが伺えます。
VW・Audiと異なる他メーカーのスタンス
VWグループは、DSGを推し進める一方、BMWやメルセデスはDCTをスポーツモデルに留め、マニュアルとしての用途に留めているところがポイントです。
- BMWは、M-DCT
- メルセデスは、AMGスピードシフトDCT-7
やはり、一般用途には無理があると判断しているのでしょう。スポーツ用途であれば、クラッチの寿命に対してもユーザーに一定の理解が得られる・・・とメーカーは割り切っているとも言えます。それは、DSGやDCTがマニュアルベースのツインクラッチだからです。一般車が採用するトルクコンバーターのATを置き換えるのは、本来無理があったのです。
Sトロニック・DSGが故障、乗り方が原因ですか?
Q : 故障は乗り方が原因ですか?乗り方で故障回避可能ですか?
A : 他欧州車トルコンATとは比べ物にならないリコール発生の頻度から、ミッションの機構・仕組みに問題がありそうです。特に渋滞頻度の多い国で多発するようですので、ノロノロ走行を避けることで一定の効果はありそうです。
Q : ミッションから異音が聞こえます。調子が悪いのは故障ですか?
A : ディーラーで診断を受けたところ、修理代数十万のASSY交換という宣告を受けるケースが多いようです。
Q : クレーム、リコールの対象となりますか?
A : 対象外です。修理代数十万のASSY交換という宣告を受けるケースが多いです。
Q : 湿式、乾式、VW、Audiの車種に関係なく故障しますか?
A : DSG搭載車種に関わらず、故障事例があるようです。
ディーラーで診断を受けたところ、修理代数十万のASSY交換という宣告を受けるケースが多いようです。
Q : 一般修理工場でディーラーより安く修理可能ですが?
A : 日本国内でDSGノウハウを持っている整備工場は、非常に限られています。
当然、ディーラー以外の整備ですが、ネットで検索してみましょう。結果、ディーラーでASSY交換か、車を降りるかの選択をユーザーは迫られます。
DSGとSトロニックの今後の見通し
スポーツ車でもSトロニックを捨てるアウディ(S5/2017)
2010年にアウディS5は6速ティプトロニックAT(トルコンタイプ)から7速Sトロニック(DSG)へ変更しました。ハイパワースポーツグレードのS5として、今後も8速、9速DSGが搭載されていくと予想されました。しかし、2017年のアウディS5では、7速Sトロニック(DSG)から8速ティプトロニックAT(トルコンタイプ)へ変更しました。
これは、DSGを推進するアウディVWグループがスポーツ車ですら搭載を見送った事を意味しており、下級クラスのDSG搭載車がティプトロニックに置き換わる可能性もあります。今後のニューモデルに注目しましょう。(DSG搭載車の中古車暴落の恐れ)
BMWでは、MモデルのみDCT(DSG)を設定している理由としては、スポーツ走行には適しているという理解です。もしかすると、他メーカーにもDSGを捨てる流れが波及するかもしれません。
10速DSGの開発を止めたVWアウディグループ
すでに10速ATは市販化、量産化が進み、10速の多段ギヤはワイドレシオによる圧倒的な低燃費と加速効率のアップに貢献しています。DSG一番の利点とされた変速スピードについてはもATの性能向上により、劣勢を強いられる状況となりました。
もはや、DSGの存在価値は米国、日本市場では無いともいえます。
そしてスポーツ走行に適していたとされるDCTも強大なパワーとトルクをコントロールするトルクコンバータと変速スピードの向上は、BMWのMモデルでさえもDCTを捨てて、ATを採用したことからも明らかです。そのような状況もあり、大排気量向けのトランスミッションとして10速ATの開発を止める判断に至ったのかもしれません。
ホンダは、10速AT採用でDSGは捨てられる運命
北米向けのアキュラ・TLX(日本名レジェンド・2014年)ではトルクコンバーターを採用したDSGを登場させています。本来のツインクラッチのDSGのデメリットを補う仕組みでしょうが、DSGにトルコンを搭載する意味はなく本末転倒な仕組みと言えます。そして、ホンダは上級車向けに10速AT採用のニュースが流れました。
そもそもレジェンドクラスにDSGを採用していますが、国内外の評判は最悪のようです。
一見、先進技術で進んでいる感もありますが、高級車が求めるフィールとは全くマッチしなかった先見性の無さが招いた結果と言えます。やはり、マニュアルチックなギクシャク感、変速フィールが原因であり、高級車には合わないと判断されているようです。
それはアウディのA7、S8などの上級サルーンではDSGを採用せずATを採用しているのが理由です。VWグループでも高級車にDSGは不向きであることを熟知しているのです。それではA6以下の車にはなぜDSGを採用しているのでしょうか?
欧州のように渋滞頻度が低く、MT人気の風土であればなんの問題もありません。しかし、北米や日本のスムーズさ優先の風土には合わないのです。結果、レジェンドに搭載されたDSGは短命に終わる運命です。この流れからも、高級車でのDSG採用は、VWやアウディの低価格車へ搭載される可能性が高いです。
アコードハイブリッド(2018)は7速DSGから10速ATへ
7速DSGにトルクコンバーターを組み合わせるという本末転倒なレジェンドをデビューさせたホンダ。ようやくDSGを捨てることが問題の最善策であると理解したようです。2018アコードハイブリッドからは10速ATへ移行しました。(写真はレジェンド10AT)
10速ATは7速DSGのスリップロス軽減や伝達効率よりも多段化による低回転化の維持が効果的という燃費効率の当たり前の本質にやっと気がついたようです。
DCT搭載車を減らすBMW
かつて、ハイパワーターボ車に7速DCT車を設定していたが、現在ではM3やZ4など専用モデルだけになっています。
クーペモデルでもDCTは不評だったということになります。理由はZF製8ATの性能が良かったからなのです。
MT車も一部に設定されるものの拡大の傾向はありません。スポーツイメージが強く、ユーザーもMT志向が強いと思いがちですが、欧州のハイパワースポーツ車の実際は異なるのです。結局、スポーツ性とは名ばかりで、実際の市販車ユーザーは快適性を重視するということなのです。勿論、最新のATが多段化とMTよりも早い変速スピードにより、スポーツ性をカバーしていることが、その理由です。
BMWは1.5Lエンジンなど廉価版に絞った搭載へ
BMW335iなど、一般上級モデルにも採用していたDCTですが、最新モデルではZ4のスポーツモデルを除きDCTの搭載車は、BMW車ではなくMモデル限定となりました。DCTが一般タウンユースには不向きであり、335iという3シリーズのトップモデルに相応しい高級感が得られないのが原因と思われます。
Mモデルは走りに特化したモデルであり、ユーザーの使用用途なども割り切った仕様であり、クラッチの摩耗や低速時のギクシャク感にも許容できると判断されたのでしょう。一部Mモデルは、そのまま8速ATが採用されているものもあります。MモデルとしてもATを使えるほど高性能化してきたとも言えます。レクサスのFモデルでもATが採用されているように多段化とロックアップ付きATは、DCTの得意分野とされているスポーツ領域をもカバーしていきているようです。
中古車購入時の注意点
VWでいえばポロやゴルフ、アウディではA3、A4は、ほぼDSGやSトロニック搭載モデルといって良いでしょう。下手をすると100万円越えの修理代やリコールしても不具合が直らないような話もあります。
しかし、巷で販売されている中古車の全てが不具合になることもないでしょう。
そこで、いくつかの対応に注意して購入しましょう。
購入OKの車両
- ディーラー系列の認定中古車である。(保証期間6か月以上)
- リコール対策済みの履歴を確認した。
購入NGの車両
- リコール対策がまだ未実施。一般中古車店では多い。(対策して販売すべき。当然パス)
- 既にDSGやSトロニックに関連する部品を交換した。(再発の可能性あり。当然パス)
確認項目
- DSGオイル(ギヤオイル)とフィルター交換は定期交換済の履歴が確認できるか。(未交換車両はパス)
- DSGのキャリブレーション(クラッチ調整)は定期調整済の履歴が確認できるか。(未実施車両はパス)
MT車と基本同じ仕組みですのでクラッチ調整は当然実施すべきですが、ほとんど放置車両が多いのも事実です。
新VWの乾式DSGは早期乗換を推奨?
- ゴルフ(1.0eTSI , 1.5eTSIともに):乾式7速DSG
- ティグアン (1.5L TSI) :湿式7速DSG
- ティグアン R (2.0L TSI):湿式7速DSG(高トルク型)
- パサート TSI:乾式7速DSG
- パサート TDI:湿式7速DSG
- パサートバリアント TSI:乾式7速DSG
- パサートバリアント TDI:湿式7速DSG
- パサート4WD :湿式7速DSG
- アルテオン:湿式7速DSG
- アルテオンシューティングブレイク:湿式7速DSG
上記によると乾式7速の耐久性に疑問が残るとのことです。保証期間内に手放すのが良さそうと判断できます。
トルコンレスATの危機感
マツダのトルコンレス8速AT
マツダCX-60など、従来トルクコンバータを使用していた部分をメカニカル湿式クラッチに置き換えた点が注目されます。
時代遅れの6ATから、CX-60に搭載するマツダの高級路線ラージとして、せっかく8AT化へ多段化したものの、トルコンレスAT化という、理解不能な流れが見られます。
マツダの場合、燃費規制が厳しい欧州市場を意図しているため、燃費効率面でトルコンレスを採用したのかもしれません。
ただし、世界的な潮流である高級車はトルコンATの流れです。
高級車路線、6気筒というコンセプトに対して、トルコンレスATの採用が、全くマッチしていないことが、理解に苦しむところでしょう。
トヨタのトルコンレス6速AT
レクサスでは、8速10速を採用した、トルコンATもあるのですが、2速削って6速化は、時代に逆行しています。さらに、このトルコンレス6速ATをレクサスRX/NXやクラウンという高級車に搭載しているところが驚きです。
少なくとも、世界展開する高級車群に採用するものではないでしょう。
まとめ
DSGやSトロニック車は、新車保証期間中に売るのが吉
まだまだ、DSGの不具合発生が報告されている実情をふまえると、新車保証期間中に売却するのが、ユーザーに残された最善の策と言えます。
中古車業者も多走行の7速DSG、Sトロニック搭載車について、下取りや買取額を安くして、危険な在庫リスクを減らす対策をしているそうです。リコール以外の不具合が多発している、お客とのトラブルを避ける事が理由のようです。
当然、新車保証の切れた車の査定額は下がる一方です。VWやアウディの不人気に拍車をかける結果となり、当然下取り価格にも影響が出ているようです。
そのため、鮮度の高い新車保証期間中に手放すことが、DSGやSトロニックオーナーに向けた最善の策なのかもしれません。少なくとも故障が発生し、30万から100万の修理代が発生してからでは、遅いのです。この選択を選ぶか選ばないか、信じるか信じないかは、オーナー次第です。